第12話もとをとる
「お店の人に怒られるんです」
「だからお店には内緒にしとくから」
「いえ、本当に怒られますんで。警察に捕まっちゃうって言われてるんです」
「いやいや、バレなけばいいじゃん。言わないからさあ」
とにかくしつこいが頑なに断る彼女。子汚い中年のおやじの態度が急変する。
「じゃあいいよ。しゃぶれ」
そして乱暴なプレイ。激しい指入れ。
「気持ちいいだろ。もっと声出せよ」
全然気持ちよくないし、痛いだけ。でも店長から『痛い』はよっぽどNGな時にしか言ってはいけないと教えられている。この業界で『痛い』の言葉は『それ以上するな』を意味する。我慢する彼女。何とか演技する。
「あ…、あ…」
「へへ」
さらに激しくなる子汚い中年のおやじの欲求。舌どころか唾を。口を閉じて抵抗する彼女。早くコールの電話が鳴らないかとだけ考える。ローションをつけて子汚い中年のおやじの上に跨る。
「俺が上になる」
そしてどさくさに紛れて本番仕様とする子汚い中年のおやじ。それも上手にかわす。手で防ぐ。最悪だ。それでも何とか発射させる。
「あーあ。他の〇〇ちゃんや〇〇ちゃんはやらせてくれたのになあ」
タバコを吸いながらそんなことを言う子汚い中年のおやじ。
この乞食客が!〇〇ちゃんと〇〇ちゃんは本番してる?ああ、早く帰りたい。
そしてお店からのコールが鳴る。空気も雰囲気も最悪である。それでも作り笑顔で本音は絶対に見せない。言わない。プロだから。
最悪の客だった。それでも切り替えてまた頑張ろうと思う彼女。プロだから。店長に愚痴はこぼす。
「乞食客ほどもとをとろうとするんですよ。すいませんね。あの客はNGにしますんで。嫌なことをお願いして本当にすいません」
一番安く短いコースで。しかもホテルも安いボロボロのラブホテル。乞食が!早く帰って韓流ドラマ見よう。
子汚い中年のおやじは底辺だった。風俗遊びだけが楽しみだった。月の収入はとても低い。住んでいるのもボロアパート。風俗遊びは金がかかる。でも貧しい。でも遊びたい。一生懸命働いたお金をつぎ込んで遊ぶ。ロングコースは高いから無理。でもショートコースなら何とかお金を貯めれば利用できる。本番確率は高い。やらせてくれる子は多い。やらせてくれれば他は手抜きでもいい。でも料金分のサービスはしてもらって当然。どれだけ自分が働いて貯めたと思っているんだ。そんな金を一時間にも満たない時間で失う。もとは絶対にとりたい。自分でやればタダだ。でも相手がいないと。だから貴重な金を使ってお店を利用する。
あの女。やらせもしなかったし。もとがとれなかった。ムカつく。あの女が一時間で稼ぐ金を俺はどれだけ働いて稼いだと思っているんだ。くそが!くそが!くそが!子汚い中年のおやじの自分の中のひねくれた正義が暴走する。
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