第6話アムロ行きます
「ところで姉上殿。このゲームの車は他の車にぶつかると爆発するじゃないですか?」
「そうですわね。ご主人様」
「でも、なんですぐにその場で新車に復活して走り始めることが出来るですかね?」
「それはゲームだからですよ。ご主人様」
ここでキャラ紹介。
ご主人様と呼ばれる男の本名は『安室行人』。読み方は『あむろゆきと』。学生時代のあだ名は『アムロ行きます』。そう、知ってる人なら知っているあの人。大人になりました。
姉上殿と呼ばれる女の本名は『姉上聡子』。読み方は『あねがみさとこ』。学生時代のあだ名は『はじこ』。『恥ずかしい』の『恥』と『聡』が似ているからである。
会話は続く。
「赤い亀投げます。えーい」
「え?ご主人様は赤い亀も出せるんですか?やめてくださいよ」
「いえ、やめません。これからです」
赤い亀が姉上殿の操作する車を追跡し、直撃。クルクルスピン。
「でも『人ログ』は未成年とかどうなんでしょう?」
「そうですねえ。ご主人様。『人ログ』サイトは登録するのに身分証は必須です。本人確認をしっかりしてますので。十八歳未満でも親や保護者の同意がありましたら利用可能ですからね。そこは『スマホ』を子供に持たせる親のように保護者の自己判断にお任せするしかありませんわね。でも、貴重な貴重な『人ログ』サイト登録権を子供に持たせるかは慎重になっているのが現状でございますわ。羽使いますね」
「え?羽はずるいですよ。無敵じゃないですか?」
「でも『ガチ』と言ったのはご主人様ですよ」
「ですね。でも負けません。でも、評価される側は未成年も関係ないですよ。小学生も評価されてますよ。それはどうなんでしょう?」
「虚偽の評価・書き込みは即アウトですよ。ご主人様。それに極悪非道な犯罪者も今までは『少年A』でしたが『人ログ』にはそんなのありませんし通用しませんので。少年法の改正を延々と待つより被害者の方やその身内の方も喜んで利用していただいておりますよ。それに少年法を利用する大人の悪者も減りましたので。『立派な正義』なのではないでしょうか」
「そうですかねえ。あ、負けそうなので忍者出します」
「えええええええ。忍者も出せるんですか?ご主人様はターボスタートは五回に一回しか成功出来ないのに。ちょっと待ってくださいですわ」
「待ちませーん。えい」
リードしていた姉上殿の車と大きく差をつけられていたご主人様の車が入れ替わる。
「僕の勝ちですね。ゴールしまーす」
「その前に私も忍者出します。ご主人様。えい」
「あ」
「はい、私の勝ちです。もう一回やります?」
「やりたいですけどゲームは一日一時間のルールがありますので」
「あら。もう一時間経ちました?ホントですね。ご主人様」
「姉上殿。僕はコタツを出たくないのでゲームの電源を切ってもらえませんか?」
「はい。ご主人様」
さっきと同じ姿勢で見えそうにゲームのアダプターをコンセントから抜く姉上殿。コタツの上のミカンに手を伸ばすご主人様。ミカンを掴みながらチラ見。
「ミカン食べます?」
「はい。いただきますわ。ご主人様。ミカンもいいですがまた見てましたよね?」
「いえ。見てないですよ」
「では何故、顔の方向をさりげなく変えたんですか?ご主人様」
「いや、手を伸ばすと自然とそうなるじゃないですか」
「本当にそうなんですか?ご主人様」
「ほらほら」
ミカンに手を伸ばして顔の方向が自然と変わるのをアピールするご主人様。
「でもさっきは右手を伸ばしながら右側の私の方を見ていたじゃないですか。それは意図的としか言いようがないのではないでしょうか?ご主人様」
「いや、僕は右でも伸びるんですよ。本当ですよ。信じてくださいよ」
「じゃあ信じます。ご主人様」
「それにしても」
座椅子にもたれかかりながら、ミカンの皮を手元で向きながら後ろを振り返るご主人様。
「それにしても?ですかご主人様」
「はい。なんかすごく広いワンルームですよね。その隅っこに畳を六枚引いて。僕らは何をしてるんでしょうか?」
「お金持ちになっても質素に暮らすの精神ですわよ。ご主人様」
「あの評価はやっぱり姉上殿ですよね」
「そうですよ。ご主人様。ご主人様は素晴らしいですからね」
安室行人 二十四歳。男性。☆4・80(38929件)
(お金に余裕があるのに贅沢をせず、六畳のワンルームで質素に生活)
☆五つの評価。姉上殿からの評価である。『人ログ』サイト運営代表もガチで評価される。本当に『ガチ』なのかは分からないけれど、人の評価はそうなのである。当然☆1の評価もある。けれど総合評価は☆4・80。限りなく満点に近い人間と評価されている。
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