第3話☆1☆2☆5
人は見ている。そして見られている。
『人ログ』サイトは倫理的なものは別として本当によく出来た仕組みだ。まず他の飲食店などのサイトと違ってエリアが本当に細かい。『関東版』だとかそんなレベルではない。都道府県から市町村まで細かく指定して書くことが出来る。そして書かれる。
「個人情報じゃないか!?」
その声に運営はこう答えた。
「個人情報じゃありません。情報や評価は皆さんがするわけですので。私どもが好き勝手に情報提供するサービスではありません」
「芸能人や著名人の住居を特定出来るのでは?」
「そういう方は本名を使われてる方やそうでない方もいらっしゃいます。同姓同名の方も多いと思いますし。あくまで私どもが提供するのは情報提供する『場』です。それにご近所様のお名前やちょっとした情報などは昔から普通にありましたし、それで混乱を招くことはなかったのも事実です。既存の類似したサービスとなんら変わりはございません。ただ、評価する対象を『人』としたのは当社が初であります。某巨大掲示板には『匿名』で個人情報が書きこめます。貶めるようなことも晒すようなことも可能です。そういったものを逆に私どもはしっかりと『管理』致します。皆さんのこれまでの様々な類似サービスでの評価はとても適正なものだったと思っています。『人』も同じだと思っています。『信じている』ではなくそうなるのが『当然』と思っています。当社の『人ログ』サイトを利用するには『ご登録』が必要となります。某巨大掲示板との大きな違いはそこです。しっかりと管理致します。皆さんが悪用しなければ健全でとても信用性の高い情報が手軽に入手することが可能となります。もちろん悪用された方には重いペナルティーが科せられます。後ろめたいことがなければ何を怯えることがあるのでしょうか。逆にこの『人ログ』サイトによってこの国の治安がより一層よくなることへ繋がることを想定しております」
『人ログ』は開設してすぐに大ブレークした。そして最初の大きな効果として犯罪の解決に大きく貢献した。
「逃亡中の犯人はあの〇〇さん?☆1」
「さっき、〇〇の△△で買い物してた。特徴は〇〇の服装で☆1」
「ひき逃げ犯の〇〇と同じ車で同じナンバーの車がいま〇〇に停まっている☆1」
「〇〇さんの家から尋常じゃない怒鳴り声と悲鳴が聞こえてます☆2」
その速さは『匿名』での110番の比ではない。
「高齢者の〇〇さんがいつもは毎日決まった時間に散歩するのに最近まったく家から出てこなくなりました。心配ですね☆5」
孤独死の早期発見にも『人ログ』は大きな力を発揮した。
当然、悪用しようとするものも多数いたが『オオカミ少年』扱いで終わった。
「あの人はそんなことしないです☆5」
「そうですね。〇〇さんや7さんが書かれているように〇〇さんは真面目な方です☆5」
何しろ『人ログ』運営のサイト規約には『虚偽の書き込み』をしたものは今後一切の同サイトへの登録を禁ずるとした。『人ログ』へ書きこめる権利は誰だって大事にしたい。
「『人ログ』いいねえ」
そんな声が多くでるようになった。
『どんどん書き込んでもらえばいいんですよ。皆さんのお仕事は立派な正義です。お金は二の次ですよ』
『人ログ』サイトを作り出した民間企業のバックについた大物政治家はそう言いながら笑顔で金を受け取る。
『人ログ』は『正義』という大義名分を早々と手に入れた。
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