たろうさんとようかいのくに

文野志暢

たろうさんとようかいのくに

 昔々のことだった。

 太郎さんは目が覚めたら、知らない場所にいた。


「ここはどこだ?見たことのないところだ。」


 周りには天より高い建物がたくさん並んでいる。

 地面も土ではなく黒くて硬いものでできており、木や畑がどこにもない。

 歩いている人のような者も太郎さんは見たことのない服や髪の色だった。


「あれは鬼か?天狗か?何やら板のようなものを持っているぞ。」


 太郎さんはそっとそっと歩いていく。

 周りには鬼や天狗や化け物しかいません。


「もしかしてここは妖怪の国なのか!?」


 太郎さんは慌てて走ってしまう。

 と、何やらいいにおいがする店があった。


「なんだ、このにおいは。こんなにおいはかいだことがないぞ」


 店の中では鬼や天狗がニコニコと食べているのが見えた。


「おいしそうだな。わしも食べてみたい。……いかん!もし食べてしまったらわしはもう村に戻れないかもしれん。さすがは鬼の食べ物だ」


 太郎さんは鼻と口を押さえて急いでその場所から離れることにした。

 広い通り行くと今度は大きな動く絵を見つけた。


「何だこの絵は!?しゃべるし動くぞ!?」

 太郎さんはじっくりと絵を見ていると、どこからかカンカンカンカンと音が聞こえてきた。


「もしかして火事か? 川はどこだ?」


 とキョロキョロと周りを見ると、大きい口を持っている化け物が順番に並んでいるのが見えた。

 そこへ大きな大きな蛇がガタンゴトンガタンゴトンと通って行く。


「へ、へびだ!丸呑みにされてしまう!」


 太郎さんは慌てて逃げようとする。

 しかし、走った先には目の前には大きな口を持つ化け物が向かってきた。


「助けてくれー」


「あっ太郎さん!」

「良かった!目が覚めたぞ」


 太郎さんの目の前には村の仲間がいた。


「もどったのか!?」

「戻ったって、太郎さん。アンタ荷物運んでいるときに、転んで近くにあった石に頭ぶつけたんだよ」

「もしかして三途の川でも行ったのかい?」


 村の仲間の笑い声に対して、太郎さんはホッとして言った。

「わしは妖怪の国に連れてかれてたんだ。鬼や天狗が大きい口を持つ化け物や大きな大きな蛇と暮らしとった。無事戻ってこれた。あぁ助かった」

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