定期券

荼八 十吾

定期券

季節外れ蜩の声

秋の匂いも過ぎ去った今

私は夏に居ました


北風と共にレールから弾き出された音が聞こえてくる


自分の為 明日の為 はたまた誰かの為にモノをつくり 吐き出してゆく


その行為が誰の為でも無くなってしまった今 私は空っぽなんだと呟くも虚しく人々の喧騒の水の泡として消えてゆく


果たすべき屈辱や後悔と

日々の歩み方を同じと捉えた時に私はきっと何かを諦める


虚勢を貼り続けてきた人生の杭に穿かれて身動きも取れないそんな辛さを誰理解して貰おうかなんて考えていても 何時ものように化粧をしてしまう


そんな私には飽き飽きする程 悩まされてきたその悔いを楔を抜く時が今なのだとそう心しまい込んで 途方にも暮れる旅に出ます


探さないで下さい と口にはしたいが 何時か思い出して下さいとそう願って別れの挨拶とすることにします


それではまた何処かで

ごきげんよう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

定期券 荼八 十吾 @toya_jugo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る