夢現
2月3日。
民間の教育業界で小学生を相手に仕事している人にとっては、どうしても意識する日の一つである。中学受験における最難関クラスの発表が重なる、とても大きな日だ。
それが終わって、僕はいま大きな達成感、開放感を覚えているのと同時に、懐かしい思い出に浸っている。
何年前だったか。
そうだ、4年前の、2月3日。その数年前から交際していた先輩との、最後の電話だった。その数ヶ月後に自然消滅するのだが、それまでは毎年、この日は「お互いの戦績発表会」でもあった。
数ヶ月休みがなくて身体がぼろぼろ。会えても仕事の合間だったり帰り道だったりだ。互いの状況は良くわかっているからこそ、不用意に電話もしない。入試の早朝応援や会議で同じ会場だったりしたときは会えるし話すし、自然と隣に座って寝こけてたけれど……とまあ、そんな状態が解禁されるのが、この日だった。
眠い眠い疲れたと言いながら、終業後、5時間くらい話し込む。会えなかった時期のこと、愚痴、生徒のこと、反省、ついでに将来の話。で、始発で帰ってまた仕事。
翌週からは高校入試ラッシュで、ものすごく忙しくなるのはわかっているけれど、1日くらいは会いたいね、と。そうこうしてるうちにバレンタインが来て、「いかに生徒保護者同僚に見られず互いのスケジュールが過密なのにチョコを渡すかミッション」が発生するのだけれど。スパイかなんかか。
今思うと、それがとても楽しくて幸せな時間だったなぁ、なんてことを思い出した。ああ、恋愛感情なんてとうになくなっている。講師としての尊敬は残っているけれど。
だから、いま、僕が打ち立てた結果を先輩に見せたいなと思ったんだ。今年の僕の戦績は、なかなかのもんだぜ、どうよ先輩? と。あなたを抜くのはまだまだ先になりそうだけど、そろそろ並べたんじゃない?
もしかしたら毎年、この日だけは思い出すのかもしれない。少なくとも、あなたにいずれ勝てるかなってのは、僕の原動力になっているから。
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