第3話昼休み

キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン


 午前中最後の物理の授業が終わり、昼休みが始まった。静寂に包まれた授業中とは違い、教室内は一気に賑やかになった。


「ん〜疲れた〜!やっと昼休みだ〜!」


 白井さんは、大きく伸びをして呟いき、田中さんに向かって


「ゆかっち〜、お昼一緒に食べよ〜!今日のお昼はセブンで買ったタルタル唐揚げ弁当だよ。唐揚げにタルタルソースがかかっているんだよ、100パー美味しいでしょこれ。」


と賑やかな教室内でもひときわ大きな声で言った。


「だべよ〜。もう腹ペコだよ〜。うちはいつも通りお弁当。たまには、美帆みたいに買ってこよっかな。」


 白井さんは、いつもお弁当を買ってくる。白井さんが手作りのお弁当を持ってきたのを見たことがない。そして、白井さんは毎日ヘビーなものを食べてるが、それなのになんであんなにスタイルが良いのだろうか。身長は僕と同じくらいだから170cm近くある。身体は細いのに胸は大きい。僕の予想だと白井さんのおっぱいはDカップ以上はある。隣の席なだけあって、良くおっぱいを見てしまうし、机に乗っかってる時さえある。僕は、少し顔がにやついてしまった。あ〜何を考えているんだ僕は。首を横に振り、煩悩を振りはらおうとした。僕も1人の男であり、思春期真っ只中の高校生である。それは、性欲だって湧いてくる。健全な証拠だ。


 僕は、いつもお母さんがお弁当を作ってくれる。今日のお弁当は、ハンバーグがメインにあり、黒豆、揚げ出し豆腐、サラダ、白米とバナナだ。大豆や豆腐にはレシチンが含まれていて食べると記憶力が良くなると聞いたことがある。僕のお母さんは、僕が勉強を頑張っていることを知っているから食べ物にも気を使ってくれる。僕のことを思ってお弁当を作ってくれる。そんなお母さんの期待に応えたいなぁ〜。


「いただきます。」


 両手を合わせて、小さくつぶやいた。今日のご飯は、大好きなハンバーグなだけあってすごく美味しく、あっという間に食べ終わってしまった。


「ごちそうさまでした。」


 米粒ひとつ残ってない弁当を鞄にしまい、朝の問題の解説を見ることにした。


 「ん〜、よくわからない。」


 「ん〜」


 頭を掻き考え込むが解説を読んでもよくわからない。これを初見で解くのは無理に決まっている。こういう時、塾に行っている人は羨ましい。わからないところがあれば、先生に聞けるからこんなにモヤモヤすることはないはずだ。でも、うちはそんなにお金に余裕がないからなぁ。今の塾は結構高額だと聞くし。


 「ん~、区分級積分法を使うのかぁ。それを使うとわかっても計算が複雑すぎる。なんでこの計算式が出てくるんだよ。」


 念仏のようにぶつぶつ呟きながら解説を読む。勉強をするときの癖で呟きながら勉強をしてしまう。


 「てなわけで〜麻美はオーケー出したらしいよ。大学生だって。なんか、大学生って大人な感じがあるよね。大人な恋愛ができそう。うらやましいなぁ。美帆は可愛いくて絶対モテるのになんで彼氏作らないの。」


「え~モテないよ~。大学生かぁ。ゆかっちは彼氏とは順調なの。」


「ん~、最近うまくいってないんだよね。ギクシャクしているって感じ。」


「そうなの?結構上手くいっていると思ってたんだけど。」


「まぁいろいろとあるんだよ。」


キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン


 結局解説を読んでも理解することができず、諦めることにした。こんなにも難しい問題に出会ったのは今までで初めてかもしれない。きっと世の中の高校生はこんな難しい問題を解くことはできないだろう。これは捨て問だな。僕は自分にそう言い聞かせて、この問題を諦めることにした。


 昼休みが終わり、午後の授業が始まる。午後も気合を入れて頑張ろう。


 白井さんも僕の隣へと戻ってきて座った。少しだけ僕の方を見たような気がしたが、きっと勘違いだろう。

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