第2話区分求積法
教室に入ると、まだ誰も登校してきていなかった。僕は、毎日始業1時間前に学校に行く。早くに学校に行き、授業が始まるまでの間、勉強をするのが日課なのだ。僕にとって、勉強は一種の精神安定剤みたいなものであり、勉強している時こそが本当の自分であるような気がする。僕は勉強が好きだ。スポーツは、体格やセンスなど才能がものを言うのに対して、勉強はやればやるほど身につくし、成績にもつながる。だから、僕は努力こそが勉強において最も必要なものだと思っている。しかし、今は少し自信がない。まさか、白井さんが僕より頭が良いなんて。
今日の朝の時間は数学の微分・積分の勉強をすることにした。朝の時間帯は、頭がよく働くため、理数系の勉強をしようと決めている。僕は問題集を開き、少し難しそうな問題に取りかかった。
「ん〜、難しい、、全然わからない、」
今日の問題は難しい。僕は、理数系の大学を志望しているため、数学は得意なのだが。この問題は、そんな僕でも苦戦するほどの問題だ。
「これがこうだから、ここでxに代入して、、、、ん〜、計算が複雑だ〜、わからない。」
既に30分ほど格闘しているが、全く答えの糸口が掴めない。この僕でもできない問題なのだから、きっと世の中の高校生のほとんどは解くことができないだろう。白井さんは、この問題も解くことができるのだろうか。
「いや、あんなに遊んでるのに無理に決まってる!」
少しずつ、生徒が登校し始めて、教室がガヤガヤしてきたが、白井さんはまだ学校に来てないようだ。白井さんはいつもギリギリで学校に来るし、遅刻だってする。彼女が勉強できるはずがない。これで、僕より頭が良いとしたら、、
「いや、そんなはずはない!」
昨日のは、おそらく先生の冗談な気だ。
「昨日の映画マジで最高!田村雄二イケメンすぎ!私もあんなイケメンな彼氏が欲しいよ〜」
「マジそれ!美帆、映画の後、目がハートになってたよ。まじ惚れじゃん。」
「あんなイケメン好きにならない方がおかしいよ。てか、ヒロインの女優の人、田村雄二とキスするとか前世でどんな徳を積んだんだよ」
「なにそれ、美帆ほんと面白い!」
始業ギリギリになって、田中さんと白井さんが昨日の映画であろう話をしながら登校してきた。
なんて気楽な人達なんだ。期末試験が近いと言うのに遊んでばかりいて。
白井さんは、僕の隣の席に着くとチラリと僕の方を見て席に座った。
「区分級積分法の応用かぁ〜」
「えっ?」
僕は、ふと白井さんの方を見たが白井さんは僕の方など見向きもせずに携帯電話をいじっていた。
白井さんが小さな声でつぶやいたような気がしたのだが。
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。
「おはよ〜!朝礼を始めるぞ!日直の人挨拶よろしくな。」
始業のチャイムと同時に、担任の山口先生が教室に入ってきた。今日も一日が始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます