これからへの楽しみ

私の家庭は、引っ越しが多かった、そのため、度々転校しなきゃいけない為、友達を作ることもなかった。

だけど、一度だけ友達を作った事がある、小学校に上がりたての頃だったか、すぐ転校するとは知らなくて、その子とはすぐに離れ離れになった。

しばらくは手紙でやり取りをしていたけど、一向に返事が来なくなった時から、あぁ、私は忘れられたんだと感じてしまった。

そんな出来事があって、私は友達を作るのをやめた、転校しても、長くて一ヶ月位しかいないのだし、当然といえば当然なのだが…。

私には趣味がある、それは日記を書く事だ、最初はただの興味だったのが転校が多くなってから、少しでも思い出を残したいと、私だけでも忘れないようにしたいという思いが重なり、気づいたら一つの楽しみとなっていた。

「…気づいたら、もう半分か…」

あの時の出来事から、もう三年くらいたった、覚えている限りでは一年に2,3回転校していた気がする、もう数えるのはやめたけど…。

転校するたびに、そのクラスの人とか、思い出とかを書き溜めていたら、気づいたら分厚い日記帳も半分埋まっていた。

「未菜、大事な話があるからこっちへ来なさい」

「はーい」

思いにふけっていたところを母親に呼び出された、もしかしてまた引っ越しするのだろうか、ここに来てからまだ一週間もたっていないというのに…。

「…お母さん?それにお父さんも…二人してどうしたの?」

「…未菜にいい知らせがあるんだ」

「いい知らせ?」

「ここしばらく、ずっと引っ越し続きだったけど…しばらく滞在することになったの」

「…どういうこと?」

「しばらく引っ越しがないということだ」

「本当?」

これは願ってもないことだ、もしかしたら、また友達を作ることができるかもしれない。

でも…もしかしたら今までよりちょっと長いだけかもしれない…

そう思いながら私は新しい学校に行く準備をした…


◇ ◇ ◇


「今日からこのクラスの一員になる香白未菜かしろみなです、皆と仲良くできたらと思っています、よろしくお願いします」

今日から、柏木小学校の4年B組になる、いつまでこのクラスに入れるのかわからないけど…楽しそうなクラスだ。

うまくやっていけるかなぁ…。

「ねぇ、未菜ちゃんってどこから来たの?」

「え?…えっと、詳しくは知らないんだけど、北のほうかな…」

「へぇ~!」

「えっと…あなたは誰?」

「あっ!ごめん、名前を言ってなかったね、私は虹倉花奈にじくらはな!よろしくね未菜ちゃん!」

「…うん、よろしく、花奈ちゃん」

花奈ちゃんは底抜けに明るい性格で、人見知りな私もすぐ仲良くなった、花奈ちゃんには人を引き付ける何かがある。

休み時間になると人に囲まれ質問攻めにあった、…まぁ、行く先々で何回もあったから慣れているけど…それでも人見知りなのも相まってまだ慣れない…。

ふと時間を見ると、そろそろ休み時間が終わるころだ、それに合わせ、人が離れていく。ふと、扉を見たら、一人の男の子と目が合った。

「あ、来斗君戻ってきたんだ」

「来斗君って…あの男の子?」

「そう、白日来斗はくびらいと君、少し体が弱くて、よく保健室にいるんだ」

「そう…」

「そういえば未菜ちゃんはどこら辺に住んでいるの?」

「えっと…郵便局の近く」

「へぇ~!私もそこらへんに住んでいるんだ!今度一緒に遊ぼうね!」

「うん…いいよ」

話もさながら、チャイムが鳴り、授業が始まる、幸い、追いつかないなんてことはなかった、にしても…先生私ばっか当ててくるのはやめてほしい…。


◇ ◇ ◇


授業が終わり、放課後になった。

花奈ちゃんは今日は用事があるらしく、今日は一緒に帰れないらしい…なので、今日は私一人で帰ることになる。

「今日は…なんか疲れたな…」

もちろん、転校するたびに同じことはあったけど…ここまで質問が長引いたことはない。

でも…なんだか楽しいな、こういうのも。

お父さんたちからはしばらく転校しないって話だったけど…できればずっとここに居たいなぁ…まぁ、そうなるかは分からないけど…。

「ただいまー」

「おかえりなさい」

「あれ?お母さん今日は早いね}

「あら?言ってなかったかしら?お母さんは今日仕事休みよ}

「そうなの?」

「そうよ、これから買い物に行ってくるけど何か欲しいものある?」

「うーん…無いかな?」

「わかった、じゃあいい子にしてるのよ」

「はーい」

そういってお母さんは買い物に行ってしまった…そうだ、今のうちに宿題と日記書かなきゃ…。

私は自分の部屋に行き、いつものように日記帳を取り出した。

『5月18日

私は今日柏木小学校の4年B組に転校してきた。

他の学校に比べてクラス全体の仲が良く、すごく楽しそうだった。

家族からしばらく転校しないと聞かされているので、このクラスでしばらく楽しもうと思う、それに、虹倉花奈ちゃんという友達ができた。

唯一の心配は、教師がしばらく私に当ててきそうだなと思うくらいだ。

でも…なぜかわくわくしている自分もいる、こんなのも悪くはないとは思う。

こんな気持ちはいつぶりだろうか…これからの生活が楽しみだ』












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空白の日記 ユニーグ @2004724

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