~BEFORE 死を迎えるゆうしゃ~

「やっべ、このままだとゆうしゃのやつが逝ってしまう!」

「ど、どどどどうするんですか、主様!」

「どうしようもないが……チっ、見誤ったか!プリちゃんの中に居るあの子……こんなに強いとは思いもしなかったよ。」

「た、大変ですよ、主様!ゆうしゃさんが、ゆうしゃさんが!」

「あぁわかってる!ここで死なすわけにはいかない。だが、どうすれば?これ以上の力をやると、さすがにあいつの体は受け入れられない。どうすれば、どうすれば……!」

「あああ!!ゆうしゃさんが!ぶっ飛ばされてしまった!」

「くっ!仕方ない……あいつに頼んでみるか。」


「ほう?やっと俺に会いに来たのか……イカレ野郎よ。」

「おいおい、そりゃあないだろう?ユウシャ。」

「ない?よく言うぜ。アンタのせいで、俺が壊していたものが、また戻ってきてしまったじゃねぇか。」

「ははっ、そりゃあすまなかったね。だが、今はそれどころじゃないんだ。」

「それどころじゃない?」

「アンタと喧嘩をしに来たわけじゃないんだ。頼む、力を貸してくれ。」

「ほう?俺に、力を貸してくれってな?それは人様にものを乞う態度なのか?」

「頼む!この通りだ!」

「ちょっ!おまっ、プライドとかないのかよ。起きろ起きろ!まったく……」

「力を、貸してくれるのか?」

「ことによるな。まぁ、お前がそんな態度を取るのは何かの理由があるだろう。申してみろ。」

「ありがとう。もうすぐ、お前の名を継ぐものが死を迎える。」

「俺の名を継ぐもの?なんだそれ、初耳だぞ。」

「まぁ、いうなれば、アンタの子孫、ですかね。」

「はぁ!?俺、誰かも孕ませてたのか!?」

「相手は誰なのかは、自分で考えてみろ。まぁ、とにかくお前の子孫がもうすぐ死ぬから、彼を助けてくれ。」

「お前じゃあどうにもできないのか?イカレ野郎。」

「はい……私が手を出すと、いろいろと不都合でな。」

「はっ!俺の悪の意識にも、都合があるものか!自力で頑張りな。」

「アンタの悪の意識?何のこと?」

「は?お前は、俺の中に居た俺、もう一人の俺だったんだろ?」

「……」

「何を呆けた顔をしている!これはアオから聞いた話だぞ、間違う訳ねぇだろう!」

「あのな……まぁいいや、説明するのも面倒くさい。」

「お前、なんのつもりだ?手なんか招きやがって。」

「記憶を分けてやるから、ちょっとこっち来い。」

「は!?記憶を分ける!?」

「いいから来い!出ないとこっちから行くぞ!」

「あーはいはい、わかったわかった。行けばいいんだろ?ったく……」


「お、俺が……お前が初めて作った……ドール、だと!?」

「そうだよ、お前は始まりのドール、いうなればオリジナルドールだな。」

「嘘だろ、じゃ、じゃあ、俺は一体……!?」

「どうだ、これでわかったか。だからさっさと力を貸してくれ、アンタの子孫を助けろ!」

「……あいつは、なんて名前だ。」

「名前?まぁ、今はどうでもいいけど……そうだな、お前と同じく、ユウシャというところでしょうか。」

「アイツも、俺と同じ……?」

「だからさっきも言っただろ?お前の名を継ぐもの。その名前を付けられたものこそが、お前の子孫である。」

「そ、そんなの……!誰でもつけられるだろうが!」

「それが違うんだな。お前の子孫にだけ、その名前を付けられる権利があるって、この世界を作った時に打ち込んだルールがある。」

「じゃ、じゃあ……!」

「あーもう!話が長い!さっさと力貸せ、ユウシャ!」

「……分かった。で?どうすればいいんだ?」

「お、やっとその気になってくれたか。それはうれしいね。じゃあ、やってほしいことを脳内に打ち込むから、覚えたらちゃんとやるんだぞ。」

「あ、あぁ、わかった……主……」

「ちぇ、アンタに主って呼ばれる筋合いはねぇよ、まったく。最初から私の命令を無視しやがって……」

「じゃ、じゃあ、なんとお呼びすれば?」

「いつも通りでイカレ野郎、もしくはそうだな……アマドリ、でもいいぞ。」

「アマドリって、お前、まさか!?」

「あーまた長くなる。さっさと行ってきなよ、まったく。」


(終わり)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る