~BEFORE 馬車奪取~

  「主様、ご報告です。」

  「はい、なんだ?」

  「プリスティン、ラルフ、ゆうしゃの三人が国境を越えたとのことです。」

  「そうか……ところで、もう一つの存在が隣にあるけど、アレは?」

  「……分かりません。だが、アレからは昔のスカイランドの匂いが……」

  「そうか。昔のスカイランド、ねぇ……どんな匂いだったっけなぁ。」

  「どんな匂い、ですか……甘たるくて、若干酸っぱい匂いでしたと記憶しています。」

  「ふむふむ……しかし、昔のスカイランドの匂いで、今は外に居るとなると……ドールな可能性はないし、他の可能性は……」

  「主様のお力で、何とか分かりませんか?」

  「あぁ、そうだよ。私はね、一応とはいえ、ちゃんとスカイランドの住民のみんなのプライバシーを守ってますよ。」

  「プライ、バシ……?」

  「なんだ、その顔は。信じていなさそうだな。」

  「もちろんじゃないですか、主様は私たちのことを……」

  「おっと?君たちドールと違って、私の愛おしい娘たちは違うんですよ。」

  「はぁ……」

  「私の愛娘たちは皆、皆繊細で、可憐で、美しくて、それからそれから……」

  「はいはい、そこまでで結構です。つまりどうしようもないってことですね。」

  「はい、そうだ。どうしようもないんだ!」

  「胸を張って言うようなことじゃないと思いますが……」

  「まぁ、それは置いておいて……例の物を奪取される予定の馬車に乗せたよね。」

  「はい、確かに。」

  「そうか、それでよかった。では、これからはしばらく見守るしかないだね。」

  「はっ、わかりました。」


(終わり)

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