~BEFORE 8年前の思い出~

  「さぁ、おいで?プリスティン。」

  「……」

  「あら、この子ったら……」

  「その子がこの前仰っていた子、でしょうか。」

  「はい、その通りです、王様。」

  「王様って、俺のことはハイムと呼んでくれってあれほど……」

  「そういうわけにはいきませんわ、王様。私は所詮平民で、貴方様は王ですもの。」

  「……それなのに、俺を振ってまで、アイツに……?」

  「いいえ?最初はその気ではなかったのよ。」

  「だとしたら!」

  「お母さまに、乱暴、ダメ!」

  「あらあら、かわいらしい守り手ですこと。」

  「……すまんな、プリスティン。ところで、エリス、お前はこれからどうするのだ。」

  「そうね、しばらくはダーリンとこの大陸を離れて、どこか知らない場所を巡ろうかなと思っております。」

  「それならば、あそこならどうですか?ほら、隣の大陸……名前はなんだったっけ……」

  「もしかして、レーベル大陸のことですか?」

  「あぁ、確かにその名前だった。あそこならどうだ?たぶん二人のことを知っている人はいないかと。」

  「せっかくですが、断らせていただきますね。」

  「お前な……じゃあ、どこに行くのかは決めてあるんだな。」

  「はい、この大陸を離れる。それだけは決めてありますけど、具体的に……」

  「じゃあやはりレーベルに……!」

  「すみません、遠慮させていただきます。」

  「やはり俺か?俺に行き先を知られたくないのか!?」

  「そうじゃないの、ただ……」

  「……?」

  「ただ?」

  「私たちは、この大陸を離れるだけでなく、この世界から離れるんです。」

  「この……世界から!?お前、消えるのか……?」

  「いいえ、消えませんよ。ただ、ただですね。」


  「神様の力を借りて、他の世界に旅をしようと思いましただけですので。」

  「神とな……しかし、その目は確かだ。本当にそうするんだな。」

  「ええ、すでに決まってありますので。」

  「おーーい、エリス、まだ終わらないのか?」

  「あら、ダーリン。迎えに来てくれたの?」

  「あぁ、心配で、待っていられなかったんだ。で?どうだ、爺さん。俺の娘、引き受けてもらえるんだよな。」

  「相変わらず……まぁ、わかったからわかったから、俺の目の前でイチャイチャするな。それと、俺はまだ爺さんじゃねぇんだよ、まだまだ53歳だぞ?」

  「十分爺さんだろうが。まぁ、引き受けてくれるなら、それでいい。じゃあ、いこっか。」

  「ええ。では、失礼しますね、王様。」

  「……あぁ、いってらっしゃい。」

  「え?お母さま、お父さま!どこへ行くのですか!?」

  「こら、貴女は俺と一緒に来るんだよ。」

  「いやだ!放しておじいさん!お母さま!お父さま!」

  「いてっ!くっ!やはり、年かな……こら、ちゃんと話聞かんか!プリスティン!」

  「お母さま、お父さま!!待って、待って!!プリスティンを置いて、どこへ行くんですか!?」

  「おかあさま!!おとうさま!!」



  「はぁ……はぁ……」

  「どうした、プリちゃん。」

  「……何でアンタがまた、俺の部屋に居るんだよ。」

  「いやだね、もうヤッチャッタ仲でしょ?」

  「何をだよ!この逝かれ野郎が!とっとと俺の部屋から出ていけ!」

  「いやー冷たいねぇ。」

  「アンタがいると……いつも、いつも変な夢を見てしまうんだよ……とっとと部屋から出てっけ!」

  「はいはい、まったく……年頃の女の子だというのによぉ。」

  「だからこそてめぇは部屋に入っちゃいけねぇだろうが!ぶっ潰すぞ!?」

  「はいはい、怖い怖い。」


  「どうやらまだのようだね、これは先が面倒くさそうだ。」


(終わり)

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