4__羨斗

つまらない授業が終わり、だらけた雰囲気の終礼が終わる。そして退屈を待つためだけの苦痛に満ちた時間を過ごす。

教室の後ろの掲示物は逆さに見え、自分がどれだけ怠けた座り方をしているかを教えてくれているようだった。

「なんで委員会とかあるんだろうな。」

特に意味もなく呟いたその言葉は赤木 あかぎ しょうに届いたらしく彼は僕もよくわからないな、と返事しつつ頭をしっかり自分で支えるように手で下から頭をすくい上げてきた。

「起立。」

委員長がかけた号令で委員会が始まる。内容はいつもと大して違いのない先月の反省、今月の目標決め。そして締めくくりに諸連絡だった。終わってみれば結構すぐで案外そんなに面倒くさくなかったかもしれない。どうせこの考えも次の委員会までには行きたくない、に変わっているだろう。つくづくこんな簡単なことさえこなせない自分が好きになれない。

「以上です。2年生には書記を決めてほしいと思ってます。決まったら報告して解散で大丈夫です。1年生、3年生はお疲れ様でした」

訂正、ここに来たくないと思ってしまうのは俺じゃなくて周りが悪い。

解散した生徒のざわめかしい音に閉じ込められ、濃度を増した重い空気の中、

「書記やりたい人?」

誰かが発したその意味も、意志もない音の集まりは空気を伝い瞬く間に周りに吸収された。もちろん、誰一人として手を上げようとしない。それどころか書記決めに参加しているのかどうかすらわからない。そのまま時は流れ時計の針は委員会開始の10分後を指していた。

帰り支度をし早く決めろと言わんばかりの冷たい目線を投げかける委員長、我関せずとただ適当に喋っている人々。時計とにらめっこをしていた俺は制限時間を待つことすら出来ずに我慢することを投げ出した。めんどくさ。誰かにやらせて帰るか。チート級の能力だからこそ代償は結構大きい。そして、その代償を小さくするためには、なるべく自分の考えがなくて心身が弱い人が都合がいい。俺は先程から見ていた2年生の中からずっと口ごもって笑い方が引きつっている人を見つけた。

『あいつでいいや』

集中しつつ空虚を見つめてこれからのその人の行動を頭に描いていく。

「それはちょっと困る」

不意に頭上からかけられたその言葉。俺の頭はたちまち色んな疑問で満たされた。

「なんで?」

そう答えながら覗き込むと彼女は困惑と義務感の入り交じった淀んだ目をしていた。彼女が言葉を選んでいる隙に俺は考える。いきなり現れた彼女の存在や俺の能力。だがいくら考えても答えがでる気配はない。なら、まず目の前の面倒事を片付ける。彼女の事はその後だ。目を瞑り静かに息を吸う。そしてゆっくりとまぶたを開けて静かに言い放つ。

「とりあえず終わらせる」

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