3__夕弦
つまらない授業を終えてさあ帰ろうとカバンを背負って扉に向かおうとするとちょっと!と手を掴まれる。
振り向くと慌てた様子の奏。
「え、何」
「なにじゃないでしょ!今日委員会だから!」
ああ、そんなのもあったか。
同じ委員会の奏に半ば引きずられる形で委員会に向かう。
それぞれのクラスの席に着くとちょうど委員会が始まる。
「委員長、進行をお願いします」
「はい、図書委員長を努めさせていただく〜」
前期委員長を務める3年生の自己紹介を聞き流しながら窓の外を眺める。
外にはサッカー部や野球部がパラパラと部活動を始めている。
私は、というとテニス部に所属していたが1年の時に腰を痛めてそのまま退部した。
テニスをしたいとは思うしまだ試合はしたかったけど、あの息苦しい人間関係から逃れられたのだから文句ばかり言ってられない。
「以上です。2年生には書記を決めてほしいと思ってます。決まったら報告して解散で大丈夫です。1年生、3年生はお疲れ様でした」
顔を黒板に向けると書記の欄が空欄になっていた。
2年から書記を出さなきゃいけないらしい。
つまり、決まるまで帰れない。
盛大なため息と共に空欄を睨みつける。
今日はしばらく帰れなさそうだ。
なんだかんだで10分後。
結論から言うと、全然決まらない。
みんなやりたくないのオンパレード。
譲り合いという名の押し付け合い。
「決まらないねぇ」
「なら奏やってよ」
それはまた別だから、と首を振る奏。
そしてそのまま他クラスの同じ部活の人のところへ引越しして行った。
暇になった私は意識を集中させて目を閉じる。
たくさんの心の声。
_『早く終わりてぇ』
_『誰かやってよ』
そんな声で溢れかえっている。
そんな中に1つ、異質な声が混じる。
_『めんどくさ。誰かにやらせて帰るか』
思わず目を開ける。
中学生の『やらせる』なんて言葉はたかが知れている。
だけど、この声だけはどこまでも異質で、どこまでも本気だった。
誰だ、誰の声だ。
その時、子供っぽい同級生の中に1人だけ違うオーラを放つ男子と目が合った。
_『あいつでいいや』
あの人だ。
そのまま彼の元へ向かう。
ただの直感でしかない、根拠のない確信。
彼の目が何かに集中し始める。
「それはちょっと困る」
え、と戸惑いの色を映した彼の目。
声をかけてから思い出す私の能力。
「なんで?」
どうして分かったんだと言わんばかりの目。
えっと…と声に詰まると君は口を開く。
「とりあえず終わらせる」
そう言って彼は意識を集中させた。
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