2__羨斗
皆より少し早く学校に着き、荷物を置く。そして、誰もいない廊下を学生靴で鳴らしつつ何の考えもなしに渡り歩く。いつもは生徒の騒々しい声で満ちている校舎がひっそりと息を潜めているともう2年もこの中学校にいるのか、となんとも言えぬ感情にしてくれる。自分でも結構変だとは思うが、俺は俺の特性上人間に向いてないから一人の時間は嫌いじゃない。そうしてしばらくしていると社会科の田中先生と鉢合わせしてしまった。彼はバスケ部の顧問をしているだけあって身長も高いし、その独特のルックスのせいで持っているものが全て凶器に見える。怖い。
挨拶をされたので俺は挨拶を返し踵を返す。
「おい、お前。先々週提出の課題まだ出てないぞ。」
「あ、はい。もうすぐ出します。」
俺がそうしてこの場しのぎの台詞を言うと先生は眉間にシワを寄せ腰に手を当て天に向かって細く長いため息を吐いたあと再び俺に向き直り言葉の矢を射始めた。
「昨日もそう言ってただろ?このままだと進路にヒビ入るぞ?高校はマジで」
しかもご丁寧に毒まで塗ってある。あぁ〜うぜぇ。
「そんなんだから前の試合でもあんなとこで」
更なる追撃が始まった所で俺は苛立ちの限界を感じ田中先生の頭の中、骨に覆われている脳へと意識を向ける。そうすると彼は後ろへと向き直り、足早に去っていった。俺は去っていく先生を見送りつつ俺も歩を進める。
俺_石動
そこそこ便利だけど別にいらないんだよな〜こんな能力。医者とか親に相談しても笑われるだけだろうし、一生変な力と付き合っていくのかと考えると気が滅入る。でもいくら嘆いたって非情な現実は逃げちゃくれないから大人しくこっちが現実から逃げるのが最も賢い選択だろう。
一限目の教材を取りに出た生徒で埋まる廊下を進んでいると先程の苛立ちが再燃し段々と速くなっていった。だか、案の定ロッカー側からでてくる人影に気付かずぶつかってしまった。
「ごめんなさい」
「こっちこそ」
そう言いながら落としてしまった相手の教材を渡し、逃げるように去っていく。
当て逃げみたいになってないかなと反省しつつ教室の座席に座る。
「石動、今日の委員会一緒に行こうな。」
「いいよ。」
あ〜なんで貴重な放課後の時間を削っちゃう委員会なんかに入っちゃったんだろ。
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