第48話 闘争
「……はぁ……はぁ……待ちなさいよ」
その人物は屈んで息を切らしながらも、部屋の奥に鋭い視線を投げていた。
「ふふ、遅かったね……」
「
「しょうがないでしょ!
辺りを見渡す
「私は……兄貴に捨てられた女……だけど、そんな女にだって意地があるの。私も混ぜてもらうわよ」
その言葉はマノリアに向けられていた。しかし、彼女は
「あはははっ! 最初からあなたも呼んでたでしょ、
「何が可笑しいっ!」
「……何がって、あと3時間で
「どういうことよ、説明しなさいよ!」
「はいはい、わかりました。じゃあ、ゲームの説明をするね。このゲームの名前は……シスターウォーズ!」
「そんなことは聴いていない!
挑発を繰り返す
「まあまあ、落ち着いて。ルールは簡単、これからみんなにVR空間のダンジョンを探索してもらうんだけど、目的はただひとつ。ゲームの中の
余裕綽々で語る
「あんた、本気でそんなこと言ってるの? どこの誰がそいつを操ってるのか知らないけど、大人しく兄貴を返しなさいよ。さもないと……」
「なるほど、
僕の目の前にある、空中のスクリーンの映像が切り替わる。そこに映し出されていたのは――椅子に縛り付けられ、沢山の配線が繋がったヘルメットを被った僕だった。その直後、いくつかの息を呑むような音が聴こえる。きっと、先程の部屋で見ている彼女たちのものであろう。しかし、僕はここに立っている。では、この、映し出されている僕は何者だ?
「どう、信じて貰えたかな? 今ね、
「コピーって、何をする気なの?」
問いかける
「
「その人がお兄様であるという証拠は?」
「ふーん、信じられないか。じゃあ、こちらの映像を見てねっ」
それは、タクシーに防犯用に設置されているカメラの映像であった。
「車内に細工させてもらってね。このタクシーは私が乗っ取らせてもらったんだ。自動運転のシステムって、人の命を預かってるのに意外と素直でさ」
タクシーはそのまま走り続け、信号での停車、ウインカーを出して右折、左折を繰り返し、地下駐車場へと入る。そして、僕は何者かに連れ去られてしまう。カメラは切り替わり、僕が先程の椅子に拘束され、頭にヘルメットを被せられる。映像は暗く、後ろに立つものが何者であるかを伺い知ることはできない。
「ちょっと待ってよ。この映像を解析すれば、おにいの居場所が分かるってことでしょ? 簡単に助けられるじゃん」
このみが半笑いで提案する。考えてみればその通りだ。だが、それに対する
「そうかもしれないね。でも、正直私にとっては
「それは、お兄ちゃんを今すぐ殺せるってことですか?」
「うん、そうだよ。私が命令を出せば、一発で
「呪縛……? 人を殺すのが呪縛からの解放だと言うのかい?」
「だってそうでしょ? 人間が苦しむのは自分の肉体に限界があるからだよ。そこから解き放って、情報だけの存在になることは自由を手に入れることと同義……」
「キミは一体何者なんだ……」
「あれ? 聡明な
「意思? 情報の集合体ごときが意思を持ったですって? バッカじゃないの?」
「……
「それで、その情報の集合体とやらが私たち人間に、ゲームで勝負を挑んできたというわけですか」
「っと、そのとーり!
「そうでなければ、今すぐにお兄様を殺せると……」
「うんうん! さあさ、早くそこの椅子に座って……」
「全く、ふざけてますわね」
「こやつの言いなりになるのは癪じゃが……やるしかないのう」
マノリアが諦めたようにこぼす。そうして、それぞれがその部屋に設置された椅子に腰かけようしたとき。
「……でも、それっておかしくない?」
「もう、みんな乗り気になってくれたのに……どうしたの?
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