第4章 SISTER SISTER
第19話 捨てられないノート
「
「……そうだ、思い出したよ……
絞り出すようにそう呟いた僕に、
「
「そうだ……」
「兄貴……本当にそんなことがあると思ってるの?」
「わからない……」
その時、
「……なるほど、専用ゴーグルでまるで映画の中にいるような体験ができるとは書いてありますが、映画の中の世界で動けるなんてどこにも書いておりませんね」
「そりゃそうでしょ。映画なんだから……」
「僕は……どうかしてるのかもしれない」
「……兄貴」
「こんなものがあるから
そう言って僕の創作ノートを拾い上げる
「兄貴……私にできることがあれば、なんでもするからさ……その……元気出しなさいよね」
「ごめん……
「し、心配なんてしてないわよ……えっと、これは……あんたが
左手で右腕の肘を支え、右手の人差し指を立て、目を閉じて少し上を向き、すました振りをしながら、彼女は強がって見せる。
「……ありがとう」
「……ひっ……ゴホンッ! お、お礼なんていらないわ。まあ、
顔を赤くしながらも、精一杯言葉を紡ぐ
「
「え、何言ってるの? 僕は何もしてないけど」
「全く、これがそんなに大事なのですか?……」
呆れた表情を見せる
「とにかく、これはもう捨てる。いいですね?」
「ああ、勿論だよ」
「ふむ……もう絶対取り出さないでくださいね」
しかし、次の日も――
「だから、
再び
「ただいま帰りました」
「
「え?」
部屋の隅には確かにそのノートが舞い戻ってきていた。それを手に取りペラペラとめくると、相変わらずページの中の実羽が笑っている。
「いや、僕は一日WEB授業に参加していて……」
僕は
「……
珍しく強い口調の
「なんですか? その目は。
「……うーん、確かに、僕がやったのかもしれない……ごめん、今度は僕に分からない所に捨ててきてよ」
「わかりました。仰せの通りにいたします」
しかし、その後も
「
「そんなの僕が聴きたいよ……朝起きて部屋を見回すと必ずこのノートが落ちている。そんなの恐怖でしかないよ」
僕も
「あら、
「
「だーからっ、その喋り方止めなさいって言ってるでしょ? もう、友達が落ち込んでるのに放って置けるわけないじゃない」
「ありがとうございます……」
「ふんっ、で、兄貴はいる?」
「あ、はい」
「あんた、本当にそのノート、自分で拾って来たんじゃないのよね?」
「そ、そうだよ」
「じゃあ、そこに仕掛けた監視カメラをまた動かしてみましょ。あんたがやったんじゃなければ、あんた以外の何かが映っているはずよ」
そう、それは
「うーん、届かないわね。あんた、ちょっと手伝ってよ」
「えー……」
「早くしないさいよ」
「と言われてもどうすれば……」
「私を肩車すればいいでしょ」
僕は
「しかし、最初仕掛けた時はどうやってスイッチ入れたの?」
「そんなの、うちの社員がやったに決まってるじゃない」
「女子高生が大の大人をこき使うなんて……」
「何よ、何か文句あるの?」
「ま、まだ終わらないの……?」
「待ってよ……これ、小さいからスイッチ入れるの難しいのよ……ちょっ! 動かないでよ! 危ないじゃない!」
「うう、ごめん……」
その時の僕は、必要以上にもじもじと体を動かしていたことだろう。
「よし、できた! これでノートを捨てて明日を待つだけね」
「ふぅ……」
僕は
「……くくっ」
「何よ
「……いいえ……ぷっ……何も……では、このノート、また捨ててきますね」
「わかったわ。私は兄貴が
「そんなっ、一度もそんなことしてないよ」
「本当に? あんたはこの件の一番の容疑者なんだからね」
「まあ、それもそうか……でも、なんでこんなことを?」
「ん? どういうこと? あんたを見張るのがおかしいっていうの?」
「いや、
「そ、そんなことないわよ……将来の兄貴が変な妄想に取り憑かれてたら嫌じゃない」
「いや、だから兄貴にはならないって言ってるじゃないか……」
「もうっ、そろそろ観念しなさいよね。全く、往生際が悪いんだから」
「ねえ、さっき私を肩車した時、なんで震えてたの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます