第16話

「取り敢えず、この街の発電は火力を主流でいく。」


「それは良いけどそれなら今も使っているのを継続させるのはダメなの?」


 シルクとサーモはトロのエネルギー事情について話し合っていた。

 シルクの案はダムが出来たとしてもこれから発展していくトロを支えていくだけの電力は賄えない上、細かに分けている方が問題があっても他で補う事ができる為、今ある火力発電をアップグレードするのが無難だというものだった。

 サーモとしてはそれなら火力発電はそのまま運用していって他の発電システムを導入するのがいいのではないのかと思ったのである。


「勿論、ゆくゆくは風力から魔力まで使うつもりだが、今トロにある火力発電は排気も悪い上に発電効率も悪い。後、後を考えたらこっちの方がコスパがいいんだ。」


 シルクが言うならとサーモは頷いて承認した。

 サーモは領地経営の知識はあるが、このような専門知識についてそれなりにしか知らないため、シルクの意見を素直に聞きながら質問して疑問点を解消していたのだ。


「それに国際化を進める中で排気量の基準値が超えている。遅かれ早かれリフォームしないといけないんだ。」


 グッテンでは内乱が終わり、発展途上国として他国に追いつくため急激な国際化を推し進めているのだ。

 今は首都にしか及んでいないその波はいずれトロにもやってくる。

 そんな波が来てから慌ててやってしまった必ず不具合が起こり大きな事故に関わってしまうのは明白だった。

 シルクはそんな将来の事故と今の問題解決を照らし合わせて建設順を決めていた。


「それにグッテン近海では石油がまだまだ眠っている。火力発電はグッテンの主力発電として最適だ。」


「・・・・・・石油をここでも掘るのか?」


「サーモの危惧していることは分かっている環境汚染による漁業崩壊だろう。」


 内戦中、漁業をメイン産業にしていたトロとは別の港街で戦火によって発生した石油採掘事故の影響で魚が汚染された上に大量死による更なる水質汚染が重なった。

 不運は更に降りかかり人による水質汚染に怒った近海の主が街に襲来して破壊し尽くしたのだ。

 その港街は滅んだまま放置されているのが現状である。

 サーモもトロの領海内にも石油が採れることは知っていた。

 内戦による財政悪化もあるが、その事故例がある為、建設計画すら建てることはなかったのである。


「安心しろ。石油採掘事故の殆どは人によるミスから来るものだ。」


 石油採掘事故と聞いたら大概の人は魔物による衝突事故だと思われているが、昔はそんな事故があったと言われているが、現代では石油が危険だと魔物達も学習した為、近づくことはないのである。

 魔物による事故が起きるのは建設当初である。危険な石油を出してなるものかと襲いかかってくるのである。


「だから、人為ミスを防ぐために石油採掘管理にはAIと魔法陣による自動化を進める。」


「AI?」


 サーモはシルクが何を言っているのか分かっていなかった。

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道の商人 栗頭羆の海豹さん @killerwhale

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