第15話
「これが最新の鎧か。」
「確かに以前の私たちには扱えませんでした。」
ようやく、最低ラインまで魔力操作技術から魔力量まで様々なものに達した為、最新の鎧を試してみることになったのである。
「良い。この腕輪に魔力を流すことによって鎧が自動的に身体に纏う事が出来る。これによって移動中も軽装で速やかな移動が可能だ。勿論、鎧自体の性能もお前達が使っていた物とは一線を画する代物だ。」
「出し入れも簡単ね。それに早い。」
マシルが鎧の展開と解除を繰り返して動作確認をしていた。
鎧が身体を纏う瞬間に発光することによって一瞬だとしても鎧の展開による隙を補っていた。
この光は腕輪を持っている者には効果がない為、こちらは冷静に相手を見逃すことなく着ることが出来るのだ。
「でも、これって?奇襲された時はどうするんですか?軽装なら矢も防げないですよね?」
サンマイが気がついたこの腕輪の弱点を言った。
確かに常に鎧を纏って移動する従来の移動方法なら魔力で覆われた矢でも傷がつく事はないが、軽装ならかなりの急所を晒すことになっていた。
ダラクは呆れる様にため息をついて答えた。
「そんな奇襲が来ると感じた瞬間、展開したら済む話よ。」
「いやいや、無理ですよ。魔力流している間にグサッ!ですよ。」
ダラクはまためんどくさそうにため息を吐くと他でトロの隊員に鎧に説明していた部下に対してナイフを投げた。
そのすぐ後にカッンという音と共に鎧に覆われた部下がそこにいた。
「お!おい!大丈夫なのか?!」
「大丈夫だ。この程度、抜き打ち奇襲の訓練に比べたらそよ風みたいなもんだ。それより、分かったか。こんな風に殺気を僅かに感じた瞬間に展開を完了すればそんな弱点なんて存在しない。」
どうやら、あちらでもサンマイと同じ質問をされていたようだ。
他のトロの隊員達も信じられないという風に見ていながら説明を聞いていた。
「これで分かっただろう。慣れたら息をするように展開ができる。この鎧の展開を超えるスピードで奇襲が出来る手練れなど鎧があってもなくてもお前らは死ぬ。気にするな。」
「気にするわよ。」
潔く死ねというダラクにマシルは無理に決まっているだろうとツッコんだ。
「なら、腕を上げろ。強くなれ。弱者は死ぬ。それが世の常だ。」
「はい!」
サンマイの元気の良い返事にうんざりするようにダラクは露骨に嫌がっていた。
あれから良く稽古をつけているが、この陽のオーラに未だ慣れずにいた。
「それからシルク様から指令だ。明日、私達はこのトロを経つ。」
「任務ですか?」
「あぁ、この国の治安向上の為各地に蔓延っている族を討伐する。」
「族だけ?魔物は討伐しないの?」
治安向上の為なら魔物も積極的に討伐した方が良いのではないのかとマシルは意見した。
「魔物は最低限だ。魔物の自然一部だ。狩り過ぎると後々悪影響を残す結果になる。その点、族は癌だ。討伐しまくって問題ない。」
「大変なんですね。」
へぇ〜というサンマイに何言ってんだコイツとダラクは見ていた。
「お前達も一緒に来るんだぞ。」
「は?」
それを聞いて真っ先に反応したのはマシルだった。
呆気に取られた表情から一瞬にして鬼の形相を浮かべてダラクに詰め寄った。
「どういう事だ!!」
「どうもこうも、今回の任務は族の討伐による実践経験と鎧の運用に慣れさせるのも目的だ。お前達の訓練は任務中も行う。より一層厳しくなるから覚悟しておけ。」
「そんな〜」
今より厳しい訓練と任務と聞いて流石のサンマイも涙目で嘆いていた。
そんなサンマイをよそにマシルの頭の中は混乱していた。
「だ、だれがそんな許可を・・・それに私達がいなければこの街の治安は・・・」
「?シルク様がサーモ様に提案したのだ。元々、私達だけで行う任務だったが、街の治安維持と防衛は明日来る別の隊が務めてくれる。」
そんな事を心配していたのかとダラクは生真面目だなと思ってこれからの概要を話した。
「まぁ、一年程の任務だ。この島国をぐるっと廻る。」
「えぇ、一年も地元に帰れないんですか?」
「文句を言うな。私達なんて年単位で帰れないなんてザラにある。入院クラスの大怪我でもしたら帰ることになるだろうが、わざとしてみろよ。入院どころか意識不明レベルで送り返すからな。」
「しませんよ〜そんなこと〜」
あはははというサンマイを横にマシルは険しい顔のままダラクの話を聞いていた。
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