第14話
「息子の事は良いの?」
「あぁ、信頼できる奴に任せている。損害も思ったより低いし・・・」
「どうかした?」
「いや、何でもない、まだ確定情報でもないしな。」
シルクとサーモは山を登っていた。
サーモはシルクが息子に裏切られた事で傷ついているのではないかと思っていた。
そんな思いとは違ってシルクは何でもない様にしていた。
想像していた損害より軽微に済んだ事をホッとしていた。
それにカーボンの事はシルクが最も信頼する者に任せていた。
だから、安心して里の復興に取り掛かれると判断した。
「・・・マーブル。終わったか?」
「これは!これはシルク様!僕が出演するには安い舞台だったよ!!」
劇をしている風に回りながら血を浴びているマーブルと呼ばれる男装令嬢はシルクに文句を言いながら悦に慕っていた。
「あれって?!ドラゴン???!それもかなり高位の!」
「おや?君はサーモだね。シルク様の幼馴染。」
「私の事を知っているのね。」
自分を知っていて自分が知らない人という事はシルクの直属護衛の一人だろうと予想した。
船の中には立ち入り禁止区域があり、その一つが直属護衛の区域だった。
だから、興味深そうに自分を見る女性は直属護衛の一人。実力者揃いと聞いている直属護衛なら高位のドラゴンを無傷で倒したのも頷けた。
「あぁ、シルク様を独占している阿婆擦れだって言っているよ。」
「・・・ああ?!なんですって!」
マーブルが可笑しそうに言った発言にサーモは怒りを示していた。
「マーブル。あまり俺の幼馴染を揶揄うな。」
「もーう、冗談だよ。そんな怒らなくてもいいじゃないか。少なくても僕は君の事を阿婆擦れなんて思っていないよ。」
「僕は・・ね・・・」
つまり、自分の事を阿婆擦れと思っている奴がいるという事である。
「でも、あまりシルク様を独占していたらダメだよ。それに対しては僕も不満に思っているんだから。」
「っ!」
マーブルの表情はさっきから変わらない笑みを浮かべているが、目は一切笑っていなかった。
明らかな警告である。
敬愛するシルクをこれ以上独占しようとするなら容赦はしないと言うものである。
「独占も何も俺が一緒にいるんだ。マーブルは俺の行動を縛ろうというのか?」
「まさか!僕ごときが、シルク様を縛るなんて畏れ多いよ!でもね、あまり構ってくれないと拗ねる子もいるんだよ。僕とかね。」
「はぁ・・・分かった。皆と交流する時間を作ろう。確かにここ最近あまり話せていないからな。」
ふふ、楽しみにしているよ。とマーブルが言うと先に下山して行った。
「さて、回収班に連絡済みだから。後は此処にダムを作るだけだ。」
「本当に必要なの?」
グッテンでは内戦時にダム崩壊が起こり甚大な被害が出てしまったのである。
その災害からダムに対して忌避感が根付いてしまっていたのである。
だから、シルク事を信頼していてもサーモの心に棲みつく恐怖心がダム建設を恐れていた。
「安心しろ。例え、また戦争が起きても壊れない強度と安心設計になっている。」
「シルク・・・」
「近隣の村々にも説明と納得をしてもらう。お前はこのダム建設に対する雇用、そこから起こる経済効果を考えていたら良いんだ。」
任せろと胸を張るシルクに無償の信頼を寄せたサーモは安心してダム建設をシルクに任せる事にした。
抗議されても丁寧に説得して分かってもらう。分かってもらえる。シルクと一緒ならとサーモは信じていた。
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