第13話
「大変です!!!」
「どうしたんだ?ピエール?」
サーモと話していると通信士のピエールが焦った様子で扉を開けた。
若くもシルクの信頼する乗員が冷静さを忘れて入室してきた事からシルクは本国で何かあったのかと考えていた。
「お伝えします!!プロタゴニスト大陸に留学しているカーボン様が!謀反を起こしました!!」
「・・・・何?あの子がか?」
ホーフェンで言う謀反とは多額の損害を与える事であり、裏切りや背信行為もこれに該当する。
カーボンとはシルクの義理息子である。
「プロタゴニスト大陸、私の娘も留学している大陸だな。」
「あぁ、それに同じ学園だ。元々、戦闘能力が高いから、魔剣士学園の方が伸びると思ったから。外に出していた。ついでにお前の娘の様子を見る様も報告してもらっていた。」
カーボンは剣の才に優れ魔法にも精通していた。俗称で言う魔剣士だった。
フィクサー大陸には多種多様の魔族に合わせて多種多様の学園があるが、戦闘系学園は殆どが実践訓練な為肌に合わずついていけない子もいるのだ。
カーボンの肌にも合わないと考えたシンクは魔剣士と言う職業が正式にあるプロタゴニスト大陸に送ったのである。
その大陸にサーモの娘でオオの妹であるチュンが在籍する学園があると知ったシルクは親友の娘と自分の息子も自分達と同じ様に仲良くしてほしいと同じ学園に入学させた。
そんな息子が謀反とあって怒りや嘆きより先に疑問が浮かんだ。
「それで・・・」
「どうした?まだ何かあるのか?」
一度、本国に戻ることやプロタゴニスト大陸に直接確認に行く事も考えていたのだが、ピエールはまた言いにくそうに話し始めた。
そんなピエールに早く言えとシルクは促した。
「その・・・カシミア様が報告を受けた際近くで本国のお友達と話していまして・・・・」
「聞かれてしまったと・・・」
はい・・・と頷くピエールに天を仰ぎ顔に手を被せてアチャーと言う風にしていた。
サーモだけがなんの事か分かっていなかった。
「何がダメなんだ?もしかして親しい兄が父を裏切って悲しんでいるのか?」
この1ヶ月、大半の時間をシルクと過ごすサーモは当然、娘であるカシミアとも関わっていた。
そして、その印象はファザコンである。
世の中、全てのものが父シルクにとって必要か、そうでないかで判断している。その中には自分の入っている為、シルクの必要な者であり続ける努力を惜しまない子だと感心していた。
少し過激な面もあるが、親の為に頑張る姿は昔の自分とも被ってカシミアの事を気に入っていた。
「悲しむだけならまだ良い。あの子はもう行ったんだろう。」
「はい、ついさっき水上バイクで御海原に旅立つ姿を私も含めて複数人が確認しています。」
サーモのカシミアに対する評価は間違っていない。
ただ、サーモが思っているよりシルクへの想いは過激なのである。
「あの子は嬉しいことに俺の事を慕っている。」
「そんなのは見てたら分かる。それと水上バイク?で船から飛び出すのが何と関係あるんだ?兄が制裁されない様に無罪の証拠を集めに行ったのか?」
水上バイクの事を知らないサーモは何を指しているのか分からなかったが、二人の話から船みたいなものだろうと考えていた。
ホーフェンでの謀反がどれほどの罪になるか知らないが、まぁ、まず極刑だろうと推測していた。
だから、兄が殺されない様に無罪の証拠を自ら探しに行ったのかとサーモは自分の知るカシミアの性格から考察した。
「いや、違う。と言うよりその逆だ。」
「ぎゃ、逆?逆ということは・・・」
「あぁ、自分で始末しに行ったんだ。俺を裏切った兄を。」
サーモはカシミアの気持ちを、いや、シルクに絶大な忠誠を誓う者達の忠誠を過小評価をしていた。
アイツらはシルクへの想いは異常である。
例え、身内だろうが、恋人だろうが、親友だろうが、シルクに
その証拠に何人かは実践したのである。
シルクの忠誠を示す為、何より自分の身内の汚点を消す為に行ってきた。
「そんな馬鹿な!」
自身の身内を己の手でなど相当の覚悟を必要である。
それを聞いた瞬間躊躇いなく飛び出せるなどあり得ないとサーモは戦慄していた。
「あの子は兄を愛している。ただあの子には確固とした優先順位がある。それだけだ。」
「それでも・・・」
カシミアの優先順位トップはシルクでありそれ以外はゴミでしかないのである。
シルクに損害を与えた時点で自身の愛する兄でも殺害対象でしかなかった。
「それであの子は何をしたんだ?」
「はい、ジュエル派の商人を殺害、そしてプロタゴニスト大陸でのホーフェン商会の印象と信頼を態と低迷させた疑いです。」
信頼、それは商人にとって金より大切なものである。
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