第2話
「あははは!!そりゃ!君の顔が怖い上にいかにも黒幕みたいな格好なのが悪いよ!」
「うるせぇよ。お前も噂の一つなんだよ。どうにかしろ。王様だろうが。」
シルクの愚痴を聞くのはサンバター王国、国王コサッス王である。
国王と茶会をしているシルクは最近巷に流れる都市伝説級の噂を消すために一つ一つ国の国王に噂を消す様に直談判をついでにしているのである。
「あははは!でも、そんな事をしたらまた噂が広まるよ。国王を使って真実を揉み消したって。特に他の大陸でも君の噂は人気みたいだからね。」
「おかしいだろう・・・・」
世界一の商会と言っても等しく世界中に力を持っているわけがなく、本店から離れた他の大陸の国となるとこう易々と国王と話すなんて出来ないのである。
それに大きい商会となると内部にも派閥が分かれている為、あまり他派閥のエリアを荒らす行為は慎む事になっている。
「はぁ・・・・まぁいい。この話はまたするとして、これが今回の手紙だ。」
「へぇ、今回は魔王からも来ているんだね。」
シルクが度々大国の国王と茶会をするのはこんな風に他人に知られるわけにいかない王同士の手紙を密かに渡す為である。
「でも、間違っていないと思うけどね。」
「コサッスもそんな事を言うのか・・・・・」
シルクから渡された手紙を読みながら別に噂も間違っていないだろうとコサッスは言っていた。
「僕が王座に着けたのは君のおかげだろう。」
「何度も言うが、俺がやったのは他の王位継承者を蹴落としてお前と俺の株を上げるために武器と情報を渡したに過ぎない。それを上手く使ったのはお前だ。だから、今の地位に着けたのはお前自身の努力の結果だ。」
この二人の付き合いはシルクが商会で見習い商人してた時からである。
そんな見習い商人が王位継承権が低かったとはいえ一王族に出会う機会があるわけがないのだが、現会長、当時支店長がシルクとコサッスの才能を高く買っていた。
だから、若き二人が出会える場を少し無理矢理に用意してくれたのである。
そんなわけで二人は親友同士になり、互いに互いの利益を生み出すために協力してきた背景があった。
これも噂が広まった一因なのだが、そんな事をシルク達が知るわけがなかった。
「そんな事ないって言っても君は頑固だから。認めないだろうね。」
シルクの性格を良く知っているコサッスは無駄な問答をやめてシルクの機嫌が戻る情報を渡す事にした。
「じゃあ、そんな不機嫌な君にこの情報を渡す事にしよう。」
「なんだよ。勿体ぶって。俺より早く手に入る情報と言う事は国関係だろう。新しい事業でも起こす気か?」
商人にとって情報は信用と同じくらい金以上の価値を持つ代物である。
世界一の商会副会長となると自分が知ろうとしていない事も勝手に入ってくるものであり、自分がまだ知らない重要な情報となるとまだ確定していない国の事業であり、自分の商会に資材や人材などを手配させようとしているのだと予想した。
「違うよ。正解はある国と国交を回復させる流れになっている。」
「っ!」
シルクはそれを聞くとつまらなそうに聞いていたのに自分の予想する国だと思うとテーブルに置いてあった茶器やケーキがこぼれるのを気にする事なく勢いよく立ち上がった。
「それは本当か?」
「あぁ、もったいなぁ。」
「そんな事はどうでもいい!!本当かって聞いているんだ!!!」
食事をこよなく愛するシルクが食べ物を無駄にする行為をそんな事呼ばわりしてコサッスを怒鳴った。
それは嘘だったらお前でもタダじゃおかないという意味をしていた。
「僕がこんなしょうもない冗談を言うわけないだろう。本当だよ。グッテン連合王国と国交を回復させる議題が世界で起こっている。」
「やっとか・・・!」
グッテン連合王国とはシルクの母国であり、近年の内乱から国が乱れに乱れていて世界から見放されていたのである。
その為、正規方法で渡航する術がなく、裏から手を回して行く方法もあったが、その頃には現会長を会長にするためにシルクも方々に掛け合って実績をとにかく作っていていた忙しい時期だった。
その後も副会長として忙しい日々であり時間がとにかくかかる裏ルートでの渡航をする事が出来ずにいたのである。
それがやっと里に、友に会えるとなって歓喜に打ち震えていた。
「こうしたらいられない!!」
「ちょっと!どこに行くんだ?!これから食事会だろ?!」
「悪いがキャンセルしてくれ!内乱が終わって数年といってもまだアイツの領地は荒れている筈だ。親友として!今から領地再開発のための準備を行なわないといけない!!!」
シルクはそう言うと急いで魔動馬車に乗ると本店に目掛けて全速で向かった。
「全く・・・忙しない奴だよ。悪いけど予約していたレストランはキャンセルで頼むよ。」
「お忘れですか。シルク様がこうなると予想してコサッス王は予めキャンセルしていたじゃないですか。」
「あぁ、そう言えばそうだったね。」
メイドに食事会に使うつもりで貸切にしていたレストランをキャンセルする様に言うと既にしていたではないかとツッコまれた。
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