一一、珈琲

 クゥィングォを囲むむくつけき者たち。右頬に三つ編みを垂らすルォゥミュの姿もある。よく見るとクゥィングォ以外、みな右頬に三つ編みを垂らす赤鬼クル族青鬼ロム族だ。少ないが女性もいる。


 ルォゥミュと目が合う。俺は手を上げて合図を送る。彼も躊躇って右手を上げる。はぁ?、『長寿と繁栄を』ってか? あれっ、それなんだっけ。

 ルォゥミュがクゥィングォに耳打ちする。そのクゥィングォの眼が俺たちを見て頷く。



 暫く打ち合わせが続くようなので、空いている卓にキュハァスと座ることにする。そうするとすぐに、温かい焙煎豆茶が運ばれてくる。給仕する男に黙礼する。



「まだまだ、続きそうだな」と、焙煎豆茶珈琲の器に手を伸ばす。

「そうですね。東の街にも盗賊が出たようですね。それを話している様です」と、キュハァスも器を口に運ぶ。そんな彼女の様子窺っていると、俺に微笑み返してくる。



「うまいか?」

「ええ、この香ばしい香りが新鮮ですわ」と、また彼女が器を口に運ぶ。



 漸く合議がまとまる様だ。クゥィングォが囲む者たちひとりひとりに指示を出している。

 一様に指示が終わると、赤鬼クル族は胸を拳で打ち鳴らす。青鬼ロム族は浅く顎を引く。

 そして、それぞれの持ち場に戻ってゆく。合議が散会し、クゥィングォとルォゥミュが俺たちの卓の席に腰を下ろす。



「シト殿、待たせたな。急を要することが起きてな。まぁ、手は打った」と、クゥィングォ。

「シトとは俺のことか?」

「アァマの使徒なのだろう? その力確かめさせてもらうぞ」

「アァマの使徒ねぇ」と、俺は空を仰ぐ。



 そこへ新たに二つの器が運ばれる。焙煎豆茶珈琲だ。俺たちの器にも鉄瓶から熱い珈琲が注がれる。器から立ち上る香りを味わいながら、俺は確認する。



「場所は見つかったのか?」

「ああ、用意を進めてある。話が済んだらそこへ向かう」と、クゥィングォ。

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