第5章 - 灯方高校1


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〜Iクラス 2時限目・歴史〜

先生「教科書74ページの下の史料は二条河原の落書らくしょだ。建武2年に建武の新政での......」


 二条河原の落書。鎌倉時代が終わり後醍醐天皇が天皇中心の国家を目指し建武の新政を始めた。建武年間記はその官僚が当時の社会を風刺している。


『此頃都ニハヤル物 夜討 強盗 にせ綸旨りんじ 召人 早馬 虚騒動そらさわぎ 生頸 還俗 自由まま出家 俄大名 迷者 安堵 恩賞 虚軍そらいくさ


 最初の文だけ見るとかなり物騒な単語ばかりだが、実は建武の新政が始まり混沌とした人たちの新しい生活や文化がリズム良く読まれている。


蓬 「夜討とか強盗とか物騒だな...。

   それに比べここではあまり強盗とか

   現れな................い?」

零也「何だ今の悲鳴は?」

蓬 「渡り廊下の向こう側から聞こえて来たよ!」

放送『校内放送。2階玄関から荷物が届きました。

   先生方よろしくお願いします。』


 あ。不審者だ。校内がざわめいている。さっき悲鳴が鳴っていたが凶器を持っているのだろうか。あの子の安否が心配だ。


零也「どうした蓬?」

蓬 「ん...実は柏原さんから着信があってね...

   さっきの悲鳴も柏原さんの声となんとなく似てたからもしかして...とか...」

零也「......行ってみよう。」

蓬 「えっ大丈夫...?」

零也「高校には警備員も派遣されているし、大丈夫かって言ったら五分五分なんだけど」

蓬 「私たちってだいたいバッドエンドの方行かない?」

零也「.........。」



〜灯方高校 カフェテリア横〜

??「...離して......」

 必死に藻掻くが男の力が強過ぎて何も出来ない。

  「はぁ...はぁ...はぁ...どこが良いか...。」


  「第2倉庫なら使われる頻度も少ないし良いな」


 第2倉庫へ行く気だ。誰かに連絡しないと...。


  「うわっ!?お前何をしてる!!」

??「私のスマホを返して!!!」


 やばい。これでは誰にも連絡出来ない...。もう力も出ない......。



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蓬 「あ!よく見たら柏原さんから何か来てた!」


蓬 「『大学にへ着て』?」

零也「変換ミスじゃないか?焦っているだろうから」

蓬 「んーじゃあどこかへ行けば良いのかな?」

零也「大学はここから少し離れたところにある。

   車とか使われなかったらそう遠くまで走れないな。からここの近くで「だ」が付くものを探そう。」

蓬 「だ....だ....台所?食堂?」

零也「まだ午前だし従業員がいるから可能性は低いな」

蓬 「じゃあ倉庫?第1〜って「だ」が付くよ」

零也「仮にそれだとしたら第1〜7まであるぞ...」

蓬 「第2倉庫じゃないの?」

零也「なぜ?」

蓬 「大学の後に「に」ってあるから...」

零也「じゃあ『第2倉庫へ来て』という事か。早速行こう」



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  「もっと人質らしくしてよ!」

柏原「な...なぜですか...?」

  「良いからするんだよ!!雰囲気が出るだろ!」

柏原「雰囲気....?

  (何言ってるの?え?どういうこと?)」

  「俺は...俺はなぁ...ただ漫画にある様なそんな

   世界観をこの体で実感してみたいんだ...!」

  「2次元のアニメや漫画でのシチュをこの体で試してみたいと思ったことあるだろ?」

柏原「......。」

  「俺が悪役と同じ事をすれば、その展開が間近で見られるし、何にせよこの俺が動くのだから当然俺の方が有利だ。堪能したい!色んな!展開を!見てみたい!感じたい!」

柏原「............。」


 この人、やばい。私は悟った。今すぐにでも逃げ出さなきゃ危うい。でもどうやって?苦しさの中考えるが答えが出て来ない...。


 その時、ドアが開く。差し込んだ真っ白な光に黒い陰が浮かび上がってきた。



零也「━━悪役は負けるのがオチなんだ。知ってる?」

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