第14話 最近の猫は猫を被るらしい
僕たちはリザードマン討伐の証である牙や武具数点を持参して、ギルドの受付に来ている。
「はい、確かに確認が取れました。クエスト達成おめでとうございます」
受付のお姉さんは営業スマイルを振りまきながら、応対してくれる。
僕たちは生憎、女性だけのパーティーだったりするから、あまり意味ないと思うんだ。
お姉さんの好みが女性もいける、とでもいうのなら、話は別だけどさ。
「それでね。この子の冒険者登録もお願いしたいんです」
エリーが僕たちの後ろに控えていたクラシカルメイド服に身を包んだ黒髪の少女の肩を掴み、グッと前面に押し出す。
僕よりもちょっとだけ、背が低い。
意志の強さが垣間見える吊り気味の目に金色の瞳が光の加減でキラキラと輝いて見えて、まるで猫の目のようだ。
髪は濡れ羽色のショートボブでこぎれいにまとめられていて、小柄な背丈と相まって、彼女の魅力を引き立てているように見える。
とか、言ってやると満足するんだろうか?
僕の不満を込めた視線に気付いたのか、少女がくすっと笑みを浮かべていた。
「それではこちらの用紙に記入してください」
「パリュとは名乗らないんだ? シャノワで通すの?」
「エエ。パリュでは勘のいい
この世界に来る時にさっくり呪われて、大暴れしていたやつが慎重と言い張るんだから、信じられないよね。
「じゃあ、シャノワちゃんも加わって、三人のパーティーね」
エリーのこの前向きすぎる考え方は見習うべきなんだろうか。
いや、見習うのは無理かな。
聖女はこれくらいのメンタリティがないと駄目なんだろう。
勝手に納得しておき、もっと重大かつ気になっていることをパリュに問い質そうと思う。
「あのさ。あれって、
不自然だとは思っていたが冒険者ギルドが
それが元々、存在しなかったものが存在したせいで起きた事象だとすれば、説明がつくはずだ。
魔物は大量に発生したから、暴走し始めたんじゃない。
圧倒的な力と殺意を秘めた獣が出現した恐怖により、恐慌状態に陥っただけなんだろう。
「だとしたら、ドウシマス? 私も好き好んでここに来たんじゃアリマセン」
「どうもしないよ。気になっただけ」
本当に気になっただけなのだ。
パリュが原因であの惨事が起きて、多くの命が失われた。
エリーも危ない目に遭った。
だけど、エリーは無事にこうして生きているし、僕は持っている力に気付くことが出来た。
パリュのお陰というのは言い過ぎかもしれないが、恨むことはない。
どこから、来たのか分からない異分子という意味では僕もパリュと同じようなものだろう。
「アナタ、本当に変わってマスヨネ」
「割と良く言われる」
人のことを変わったやつというパリュ改めシャノワも変なやつだ。
目立たないように子猫の姿を取ってくれるだけでも変わってる。
『この方が目立たないでしょ』と人の姿に化けて、溶け込んでいるんだから、これが変わり者でなくて、何が変わり者か。
「ねぇねぇ、二人ともー。このクエストはどう?」
エリーは空気を読まない。
いや、読めないのかもしれない。
それでも彼女は多くの人々から、愛されている。
邪気がなくって、純粋で自分のことよりも他人の心配をしてしまう誰よりもお人好しで腕っぷしの強い彼女のことを。
この何を考えているか、腹の底が読めない黒い獣もエリーのことを気に入ってるんだろう。
エリーを見つめる金色の瞳に敵意や害意といった悪意が込められているとは見えないからだ。
「エリー、それはランク高くて、無理だから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます