第7話 スタンピードなんてなかった?
「知らないんデスカ? 知らざあ言って聞かせヤショウ」
「いいや、別に知りたくないけど?」
「えー? そこは聞きましょうヨ。お約束デスヨ!」
「えー」
目を丸くして、あからさまに驚く二足歩行型黒猫。
派手に両手を上げる仕草をする辺り、パリュは結構、面倒なやつで間違いない。
決定事項として、心に深く刻んでおこう。
「そこを何とか、聞いてクダサイヨ。私ね。あんなチンケな迷宮にいるような身分じゃないんデスヨ」
「どういうこと? 十階層が住処ではないのにいたってことかい?」
「イエス! イエス! イエース! 私ね、突然開いた転移の門に巻き込マレチャッタんですよ」
そう言って
スタンピードが発生しているという話ではなかったか?
もしや、そうではなかったということなのか。
「おまけに門を潜った際に変な呪いをカケラレタようでして。聖女さまに呪いを解いてもらえなかったらと思うとイヤハヤ」
両手で身体を抱き締めながら、ブルブルと震えている。
では、あの凶悪な獣としての姿は呪いだったということなのか。
「パリュのあの姿は単なる呪いでなっていただけなのか?」
「そうデスヨ。私、何でも食べますが人を食べたりはシマセン。それなのに勝手に周りの生き物手当たり次第に襲うノデ辛カッタデスヨ」
そうなるとエリーが回復魔法で治してやらなかったら、目覚めの悪いことになっていたかもしれない。
我を失ったパリュの牙にかかった犠牲者たちには申し訳ないところだが……。
「ソレデあなた、何者デスカ? 私が理性失っていたといえ、アナタの力、おかしいデス」
「それね。僕が聞きたいくらいなんだ。僕にも良く分からない」
考えても答えが出そうにない。
僕は武器も使えなくて、防具を着ても駄目なんだと思っていた。
ところが本当は武器を使わないで防具も着ない方が強い。
一体、どういうことなんだ? 訳が分からない。
正直、自分でも異常な身体能力だと思う。
僕が全力で駆け始めると周りは止まって見える。
単なる錯覚にしたって、おかしいだろう。
「ま、細かいこと気にシタラ、いけません」
「そういうものかい?」
「そういうモノデスヨ」
会話が途切れると妙な静けさが部屋を支配する。
いわゆる気まずいというやつだ。
空気を読んでどうにかする。
それが出来れば、苦労しないだろう。
僕がもっとも苦手とすることだ。
エリーがいたら、明るく吹き飛ばしてくれるんだがまだ、寝ているんだろう。
「ファールコー、お腹すいたぁ」
僕の心の声が聞こえたんだろうか。
エリーが扉をバタンッと勢いよく開けて、出てきた。
顔色はまだ、あまり良くないようだ。
頬もちょっとこけた気がする。
だが、声の調子からすると吐き気はなくなったんだろう。
「
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