到達

 鳥は舞い降りた。

 俺は密かに背中を降りる。遊園の中のようだった。

 鳥から速やかに離れ、そばをうろついていると侍女らしい女の人が二人いた。

 花を摘んでいるようだった。


「この土地は何というところですか。お嬢さん方、あなた方は何者ですか」


「人の子!?」


 二人は驚いたようだった。


「ここは黄金城という、半神族の住むところです。半神の娘の【月光】がいます。私たちは庭師で、彼女のために花を集めていたのです」


「私がここのご主人に会えるようにはしていただけますか」


 タダで承諾はされないだろう、と思いながら聞いてみる。二人は顔を合わせて、目で何か通じあったようになり、真剣な顔で向き直った。


「構いません」「ご主人様もそれをお望みでしょう」


 意外にも通してくれるようだった。

 しかし、何か事情があるようにも思えた。


 その宮殿は支柱が宝石で、壁に金が散りばめられ、非常に豪勢でありながら陳腐な感を与えないのであった。

 間違いなく、ここが黄金城なのだと確信を強めた。


「この扉の先に【月光】様がいらっしゃいます。失礼のないように」


 侍従らが荘厳な扉を開ける。


 目の前から女の人が飛び出して、抱きついてきた。


「何だ!?」


「会いたかったよ! 愛しき人!」


 知らない顔だ。会いたかったと言われても、誰だかわからない。


「【月光】様! 離れてあげてください!」


 侍従に引き剥がされた貴人らしい女の人が、咳払いをし話し出す。


「幸ある人よ。君はどうやってここに来たのかな。この、人の子には到達し難い土地へ」


 俺は出自と経緯を語った。


「うん。間違いないね。私を君の妻としてくれ」


 何故そうなる!? 

 俺の血筋に特別なものはない。やや貧乏な占い師の家系だ。


「先ほど申し上げましたように、心に決めた人がおりまして」


 フラれたけど。次は必ずいける。


「ああ、その件なら問題なしというか……何から話そうかな」


 彼女は右手をそっと挙げる。


「見えるかな?」


 右手が、という訳ではなさそうだった。少しすると、彼女を取り巻くように水が現れて浮かんだ。


「え!? 水が……」


「ああ、これが私の明呪ヴィディヤーだ。わかりやすく言うと」


「超能力だね」

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