幕間

「なあ娘よ、【黄金の月】姫よ、結婚せずにいるというのは外聞がよろしくない。なんとかならないのか」


 【施しの王】は困ったように娘に言う。


「本当は黄金城なんてでまかせで、結婚したくないだけなのではないのか」


「それは違いますわ」


 【黄金の月】姫はきっぱりと答えた。


「黄金城を見る人は、います」


 街では今日も家来たちが太鼓を叩き触れ回る。

 黄金城を見たという者は、誰もいない。




 ところかわって、【立ち上がりの島】の漁夫たちは大騒ぎだった。


「なんだお前たち、何か珍しいもんでも獲れたのか」


「あっ【真戒王】様! 実はでかい魚がかかりまして」


「でかい魚でこんなに騒ぐもんかい」


「見てもらえればわかるんですが」


 大きな魚が獲れたというのだ。大きな魚が獲れるぐらいなんということはない、よくある話だ。この場合は大きさが桁外れだった。


「うーん。これは大ごとだな、確かにな」


 人の一人や二人丸呑みにできそうな大魚だ。頭領は魚を捌くよう命じた。一番の名人が、一番の包丁を持ってきて解体したが、それでも手こずっていた。なんとかして解体を進めていくと、さらに驚くべきものが出てきた。


「なんだ、これ……人じゃないのか。生きているか?」


 人が魚に呑まれて、生きて出てきたのだ。

 話を聞けば彼は黄金城という都城を探していて、その手がかりを求め【真戒王】という王のもとへ向かっていたというのだ。


「それは俺のことだが、黄金城は見てねえなあ」


 青年はそれを聞くと呆然とし、思いつめた様子で何やら呟きだした。

 これはまずい。


「ああ、海の果てにあるって聞いたことはあるぜ。落ち込むなよ。宿は紹介する泊まっていけよ。明日何か考えてやるから」


 聞いたことがあるのは本当だ。これが少しでも彼にとっていい情報であればいいが。

 青年はしょぼしょぼと歩いて宿に向かったが、途中で誰か知り合いと出くわしたようで、話し込み、抱擁を交わしていた。


「なんだ、ありゃ」


「しばらく会っていない従兄弟らしいです」


「まあ、じゃあ任せるかね」


 顔も思い出せないような者でも、旅先で親類に会うというのは嬉しいものだ。

 少しでも慰めになればいい。

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