第4章 激突 ⑥
勧められて適当なテーブルに腰を下ろすと、面白がるように蛇が言った。
「で、何の用だよ」
「用って言うのかな――時間停止なんてトンデモ能力持ってるっていうじゃねえか、どんな奴か気になってよ」
「オレもてめえのことは気になるぜ――賭場荒らしが露呈してほんの数時間でウチの本体潰しやがったな? そりゃあかの《
「抗議を受け付けるつもりはないぜ。先に仕掛けてきたのはそっちだ」
「にしても全滅は殺しすぎだろ」
「知るか。
「ま、そりゃそうだな――坂場の奴も殺ったな?」
蛇の言葉に頷く。
「ああ――しまった、買い出しだったんだよな。奴が持ってたもの、持ってきてやれば良かったか?」
「――気が利かねえなぁ、《
「……デート気分で敵地に乗り込んで戦争仕掛けるとか頭湧いてんのか?」
「誰が恋人だ。暇潰しだよ、朝までのな――どうせてめえらも夜型だろ? 寝入りばなを襲ってやろうと思ったんだけどな」
「てめえらが賭場荒らしに失敗しても引き上げねえのは狙いをスカムから俺に変えたからだろ? こうして出向いて襲撃の手間を省いてやったんだ、感謝しろよな」
「ありがたくって涙が出るぜ――伝説の《
蛇が俺を見てせせら笑う。
「……そりゃあな。時間停止だぜ? どうやって戦えっつう話だよ。認識外からの長距離狙撃くらいしか対策が思いつかなかった。街中じゃそんなことできないし、スナイパーライフルだって簡単に手に入るものじゃない」
「――それで降伏にでも来たってわけか」
「――いや? どんなトリックでくだらねえ能力を時間停止だなんてフカシてんのか見破ってやろうと思ってな」
告げると、余裕ぶっていた蛇の表情が険しくなる。
「言っちゃ悪いが、てめえの名前なんか耳に掠ったこともないぞ? そんな大層な力を持ってたらこんな低レベルな組織の幹部に収まっちゃいないだろ。どんな手品を使ってるんだ?」
「――は、さすが《
「やれよ。坂場に聞いたぜ。てめえ坂場やそこのアバズレにも能力の詳細秘密にしてんだろ?」
「――あんたねぇ」
ルイがわなわなと震えて言う。
「誰がアバズレだ、私は求められて応えてるだけだし!」
「ああ、ごめん。させ子ちゃんか。黙っときゃ見れる顔してんだからその臭い口閉じとけ、な?」
「――ぶっ殺す!」
言ってルイが立ち上がり、テーブルに足を乗せる。
「怒るなよ。まあまあ美人だって褒めてるだろ。あとスカート短えよ、パンツ見えてる。何かのサービスなの? 頼んでないよ?」
「あんたモテそうだけどね、女の扱いなってないわ……よく見ときなよ、好きな年頃でしょ? あんたが見る最後の女の下着だよ」
「いや、パンツ見せながらそんな凄まれてもさ」
「いつまでそんなに余裕ぶってられるかな」
怒りを露わにしたルイが俺に襲いかかろうとするが、隣の蛇がそれを制する。
「――匂うな」
「あぁ? 元はと言えばテメエのモノのせいだし!」
「そうじゃねえよ、落ち着け。明らかにお前を挑発してる。《
怪訝そうに言う蛇。頭が空っぽというわけじゃないらしい。
「正解。あんたそっちの女よりは冷静だな。その通り――時間稼ぎだよ」
告げると、蛇とルイは拍子抜けしたように呆然とする。
同時にフロアに突如現れる二人。
一人は勿論カズマくんだ。そしてもう一人は――
「アタルさん――彼の異能は視線を媒介にした麻痺効果です! 二、三秒目を合わせることで相手の全身を麻痺させます。効果は数十秒――麻痺中に上書きすることで効果時間を延長できるみたいです、目を合わせないでください!」
「ありがとう、栞ちゃん。助かったぜ」
叫ぶ少女に礼を告げる。
蛇の秘密を暴いてくれたのは、カズマくんにまるで荷物のように担がれた少女――我らが友人にして
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます