第13話、情報一つの見落としは、結構バカに出来なかったりする。
前書きーーーーーーーーーーーーー
私はクリスティアを本当に救いようがない設定した、これでいくら抑止力が現れようと救いは不可能。
勝った!! 私の勝利だ!! 救えるものなら救ってみろよ、絶対に無理だからな。
……私、下劣な戦法を取る敵キャラみたいなこと言ってるな。
本文ーーーーーーーーーーーーーー
◆◇◆
「うん、やっぱり見えてるみたいだね~」
男は軽く笑いながら指を鳴らした。突然の行動にクリスティアは困惑する――――刹那に。
「うおおおお今度こ…………」
「黒色の塔限定! 黒色ま…………」
「(´・ω…………」
周囲の人々は、意識をなくした。
厳密には一時的に催眠術に掛けられた、と言う方が近いだろう。その光景にクリスティアは息を呑む。
「(音を媒体に干渉系魔法の発動……言霊の上位互換、でしょうか)」
軽いノリで行った動作の難しさを即座に看破して、男への謎がさらに深まる。だが。
「やあ、こんにちは」
「あ、こんにちは」
挨拶され、反射的に挨拶を返す。
男は丁寧にお辞儀までしたクリスティアに好感を持ったのだろう。声色がいくらか優しくなる。
「いきなりこんな真似してごめんね。
単純に君と話をしてみたくなってね~」
男はまず詫びて、次に己の【目的】を明かした。
それはクリスティアへの警戒心を少しでも弱めようとする配慮なのだろう。クリスティアはそれをある程度感じる。
「(配慮されたら、こちらもそれ相応の礼儀で返すべきですね)」
とりあえずの方針を定めてクリスティアは男へ向き直った。
「はい、解かりました。加え自己紹介が遅れました。
クリスティア・アルトマーレです」
「短い間だけどよろしくね。クリスティアさん。
僕はレオン・リザリットだよ~」
男、レオンは笑顔で会話する。短い間の雑談であるため必要な情報は名前だけで良いと判断したのだろう。
【目的】何かの情報を引き抜くこと
【手段】雑談/人払い
「(特に困るような情報は持って無いし、警戒は必要ないかな)」
クリスティアは知り得た情報を第二視点で軽くまとめる。しかし警戒する必要はない、と判断し肩の力を抜く。
「で、僕が君に話しかけた経緯なんだけど。
僕が展開してた魔法を君は無効にしてたから気になったってだけなんだよね」
「(展開していた魔法……認識されなくなる魔法のことでしょうか?)」
クリスティアは脳裏に【状況】の枠を創る。
【状況】魔法を無効化された
【目的】何かの情報を引き抜くこと→変化可能
【手段】雑談/人払い
「ああ……魔法を無効化できた理由が知りたいのですか」
「うん、そういうことになるかな~。
と、言っても多分、固有魔法じゃないかな? 僕の魔法を無効化できて、尚且つ加護持ちじゃない、となるとさ」
「……凄いですね、固有魔法のことを見抜かれたの初めてですよ」
クリスティアは自分の持つ秘密を暴かれ困惑する。
そう、彼女は固有魔法、というものを所持している。ステータス欄に【■■■】と表示されているものである。
【状況】魔法を無効化された
【目的】魔法を無効化された理由を知ること
【手段】雑談/人払い
「はい、ご明察の通り、私は固有魔法を持ってますよ」
クリスティアは知られても困るわけではないので、と内心で呟いた。
「その固有魔法って、あって良かったかい?」
次いで投げられた答えにクリスティアは少しだけ考え込む。彼女の持つ固有魔法は強力だ。
それこそ固有魔法一つで英雄の座に上り詰めたといっても過言ではないほど役に立つ――――しかし。
「……答えは、まだ見付けていません」
役に立っている、嗚呼、その通りだ。
しかし『これがあって良かった』とだけは、何故か言い切れなかったのだ。
そんなクリスティアを見て、レオンは顎に手を添えて。
「うん、じゃあ一つ、太源としてアドバイスをするね~」
風が吹き、クリスティアの髪を靡かせる。
「――――君は自分を壊れていると自覚しなさい」
◆◇◆
三時間後、宿屋にて。クリスはネグリジェと羽織りを纏ってベットに横になる。
「(……壊れてる、ですか)」
昼間、レオンに言われた言葉を思い出す。
〝君は壊れている〟という言葉は一般的には悪口に思えるだろう。
実際に言っている場面にいなければ悪口だと思うはずだ。しかし。
「(でも……あの人は親切で言っていました……)」
レオンの表情と声色を思い出す。
皮肉、と呼ぶには表情が柔らかすぎた。
事実を事実のまま伝えただけ、というには声が優しかった。
「(十六歳の娘さんがいるとも言っていましたし、その子と重ねてたのかな……?)」
断定するには些か情報が足りないが、現状で一番可能性が高いのが親切心なのだ。
「(……考えても分かりませんし、明日の予定を確認しましょう)」
胸元から手帳を取り出し、今後の予定を確認する。指輪から地図を取り出し、ペンで印をつける。
「(……目的地の村がここなので、今はちょうど中間あたりですね)」
距離から何日で着くかの換算を始める――――刹那に。
「おおーーい! てーへんだーてーへんだー! 明日、この街に英雄様が来るらしいぞー!」
「えぇ!? 英雄アーノルド様が!?」
「ああ、何でも365人目の妻を探しているらしい……! 英雄様の妻になり得る女性を見付けたら、一生分の金貨が出されるんだってよ!!
何でも十四歳ぐらいの女の子が好ましいらしい!」
――――条件①:十四歳。
「(ふむふむ、今アーノルドは十四歳の女の子を探しているのですか……私は一応二十八歳ですので、目を付けられるなどはなさそうです)」
「清楚な子であると尚良いらしい! あと優しくて聖女のような子がいいらしい!」
「ほー。なんか、心当たりがあるぜ!」
――――条件②:清楚。聖女だと良い。
「(ふむふむ、清楚で聖女のような子……そのような子がいるのなら私も一度会ってみたいです……その子なら、この傷も無償で治してくれるのでしょうか……)」
「で、守りたくなるような子だと良いんだってよ!」
「典型的なお姫様属性か! なんか知ってるぜ!」
――――条件③:守りたくなる。
「(随分、理想が高いですね……そんな子いれば、既に魅力的な男性と結婚しているとは思いますが……あ、包帯を替え忘れていました。相変わらず治りませんね)」
クリスティアはベットの上で太腿に巻かれている包帯を変え始めた。
◆◇◆
英雄アーノルドは世界各地を巡って褐色美少女から乳幼児まで、幅広い女を手にしてきた。
それでも尚、揺るがぬ色欲に我々取材班は驚きの念を隠せない。
「えー、アーノルドさん。今回、365人目の妻を求めて……と聞きましたが、どのような女性を求めているか、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「そうだな……今回は清楚で未成熟な果実、なんかがいいかな。
何せ記念すべき365人目、だからね。ふふ、あと性格は可愛くて、聖女みたいで、あと守ってあげたくなったり~」
正統派ヒロインがいいかな、と語るアーノルド氏。
彼の性欲に、果てはない――――
「な、なるほd」
「俺様が喋ってんだろ!!」「ひぃ!!」「あ、落ちた。おい!! 何落ちてんだようんこ!!」
取材班の一人が脱落しましたので、代わりに文章を担当することになりました。イアル・ドレッドです。現在、全部担当してます。
写真、文章、責任者、接遇、クレーム対応、あとその他諸々。
「それでな? 笑顔が可愛くて~でも礼儀正しくて~
「ハイ」
あと怪我とかしてて守りたくなるような子で~庇護欲が掻き立てられて~
「ハイ」
どんなプレイも受け入れてくれて~もう聖女みたいな性格の良さで~
「ハイ」」
最近、声に感情が乗らなくなりました。編集長は……あ、週刊タリーゼの編集長が昨日、焼肉連れてってくれました。 味はよく分からないですが、美味しかったです。
「なあ、聞いてんの?」
「ハイ、パンツ美味シイ デスヨネ。ウメエ、ウメエ」
「お、おう……き、きいてるなら、いいわ」
仕事は楽しい。楽し過ぎてアへ顔をして編集する毎日です。
「……………………美少女の短パンニーソがみたい」
視界の隅に天使みたいな子がいた、幻覚まで始まったか。
天使みたいな子は木に隠れて、必死に息を殺してるみたいだー。まるで実写。
「どうかしたか?」
「天使 ガ 見エタ ダケデス」
「…………そうか」
◆◇◆
「(……何とか、やり過ごせたようですね)」
クリスティアは馬車が通り過ぎてから姿を現した。馬車とはアーノルドとイアルが乗っていた馬車である。
詳細は省くが現在、彼女は辺境の街、ナニータへと向かっていた。
「それでルバートさん。事情を説明してもらっても良いですか」
「…………」
傍らにいる男へ声を掛ける。
一時間前、彼女の宿にルバートが訪れた。そこでルバートは特に詳しい説明もないままに着いてきてほしい、と告げたのだ。
「君とアーノルドを合わせたくなかった」
「????????????????????」
クリスティアは更なる困惑を示す。当然だろう、何故ならその言葉は……。
「(もしかして、私の正体がバレている……!?)」
何をやっても最後にはボコられる少女クリスティア。彼女は思考がマイナスになっていた。
「(クリスティアとしての私とアーノルドを合わせたくない理由は現状無い……ですがクリストフとしての私とアーノルドならば、いくらか理由は思い付く……)」
具体的な理由は分からないモノのクリスティアは確信していた。彼は自分の正体に気付いている、と。
「……実は俺には婚約者がいたんだ」
「はい」
突然に始まる過去。だがクリスティアは静聴をした。それはクリスティアの聞いた『事情』に関することなのだろう、と思ったゆえだ。
「その婚約者は……一年以上前に、死んでしまってね……」
ルバートは森を歩き始める。クリスティアは半歩ほど後ろを歩く。
クリスティアからは、彼の顔が見えなかった。
「アーノルド・フォン・サージェントに……殺されたんだ」
少しだけ歩が早まる。クリスティアの歩幅で着いていくが少しだけ辛くなる。
「死因は腹上死だとさ。『なんか首絞めて使ってたら動かんくなったわww』とか言われたよ」
ルバートの肩が僅かに震える。クリスティアは目を伏せた。
「事情、というのはなんてことない。
アーノルド・フォン・サージェントに嫌がらせをしたくなったというだけだよ」
「??????????」
クリスティアは思考停止する。それは現状と全く結びつかないと考えたゆえだろう。
「……どうかしたかい?」
「何故、私をナニータに連れていくことが嫌がらせになるのですか?」
「…………えっ」
「えっ?」
ルバートは立ち止まり、クリスティアへ怪訝な視線を向ける。
「……アーノルドから離れされることになるから、だが」
「????????」
ここで突然だが真相を語ろう。
クリスティアは戦場で育ち、火傷だらけの兵士などがいるのが日常茶判事だった。その結果、彼女は人の顔の良しあしが分からなくなっている。
それはつまり、逆も然りということであり……
「(何故、私がアーノルドから離れることが嫌がらせに……?)」
【現状】アーノルドは嫁探しをしている。
【目的】アーノルドへの嫌がらせ
【手段】私がアーノルドから離れること
――――意味がわからない。
「……………………」
「……? どうかしましたか?」
「……いや、なんでもない」
こうして一週間の旅の末、クリスティアとルバートはナニータへと辿り着いた。
――――五月十七日。ナニータ着。
◆◇◆
辺境の街、ナニータ、商店街にて。
「あれ……? あの子、クリスティアちゃんじゃねえか……?」
「へ!? まじか!?」
商店街の住人は戸惑う。街の外から歩いてくる少女の存在に気付いたゆえだ。
彼らの街には一ヶ月ほど前、一人の少女がいた。
僅かな期間ながらもその美貌が強く印象に残っているのだ。
名をクリスティア・アルトマーレ。礼儀正しく、お淑やかで、恐ろしいほどの美しさを持つ少女。
「……なあ、あれ」
「…………ああ」
彼女に好意を抱く者は少なくない。ゆえに注目し、気付いてしまった。
彼女の身体の状態に……。
「「「(なんでまた満身創痍になってるんだ……。)」」」
ジークとか言う奴に負わされた傷がまだ癒えていないのだ。
もう運命なのではないかと錯覚するほど、ボコられるクリスティアに街の住人は優しくしようと決意した。
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