女体化した英雄の受難 クリス『あの、え…? ちょっ、まっ、ひぎぃっ! がぁ゛ッ、も゛、殴らぇ゛ゅの゛っ、やだよぉ…っ』
第11話、常識人とは馬鹿にとっての馬鹿である。みたいな言葉がパンセにあったはず。
第11話、常識人とは馬鹿にとっての馬鹿である。みたいな言葉がパンセにあったはず。
本文ーーーーーーーーーーーー
◆◇◆
ポーーーン(月刊バトルアーツ読者様ノ脳内で音が響く。セルフサービスです)
【バトフェッショナル 戦士の流儀 英雄SP】
王都レイジアの中心部、閑静な王城内に英雄・アーノルド・フォン・レイジア氏の姿があった。
ワインに割と出てる腹。アーノルドに気付く人はいない(いる)
この日、十三時から王との謁見が控えていた。
――ワインが好きなんですか?
「まあな……女の方が好きだぜ……英雄色を好む、だぜ」
――あなたにとって英雄とは?
「英雄……か。そうだな、俺様にとって英雄とは……英雄、だな。それ以上でもそれ以下でもない、さっ」(エコー)
アーノルドは謁見が行われる玉座の間まで、五十メートルの道のりをいつも性〇しながら向かう。周りの景色は一切目に入らない。王様の目の前で王妃を抱く。
コーネリア姫と結婚して間もない頃も、メイドを妊娠させ続けてきたアーノルド。いまは敢えて中古の王妃を使っているのだと言う。
玉座の間に入るのは、いつも約束から30分遅れ。
♪(月刊バトルアーツ読者様の脳内で音楽が流れだす、セルフサービスです)
アーノルドは王妃の胸を揉みながら玉座の間へ向かう。
英雄・アーノルド、24歳。
いま英雄として、新たな性癖を切り開こうとしている。
◆◇◆
――数日前、エンリール社にて。
「え゛月刊バトルアーツにですか?」
無精ひげの男性は己の上司の言葉を疑った。
男性の名はイアル・ドレッド、34歳バツイチである。彼は今、危機に立たされていた。
「ああ、インタビューに行った奴が貴族の不評を買っちまってな……それのせいで他にやりたがる奴がいねーんだわ」
「あの~お話は嬉しいのですが、私はこれから週刊タリーゼの……」
「俺がやっとくから安心しろ」
「おっふ……」
月刊バトルアーツ。高名な戦闘者からインタビューを行い、それを発信する月刊誌である――――表の顔は。
月刊バトルアーツには二つのコーナーがある。
一つは高名な戦闘者へのインタビュー。そしてもう一つは高名な騎士金持ちの貴族への取材である。
「(はぁ……貴族からの支援でこの会社動いてんだもんなぁ……)」
イアルは高名な騎士金持ちの貴族からの依頼を断れない理由を簡潔に復習する。この会社とてジャーナリズムが無いわけではない。
その証拠に月刊バトルアーツの本命では、力を入れており読者からの指示も厚い――――だがそれだけでは会社が成り立たないのも事実なのだ。
「……分かりました、受けますよ。大株主・・・は大切にしないといけませんし……」
もしそれを断ればエンリール社の大株主貴族様は続々と融資を取りやめになるだろう。
融資額が莫大であるゆえに断ることが出来ないのだ。
「おお、ありがとう! 時給アップしてやるよ! ……酒、奢るわ」
「酒より週刊タリーゼに戻してくれた方が嬉しいです」
「無理」
「ぐへぇ」
イアルは上司から書類を受け取る。そして――――。
「ええと……英雄アーノルド!? 超大物じゃないですか……!」
初めの仕事を確認した。
◆◇◆
――――独占インタビューから一時間経過。
「(流石は英雄だ……! いうこと成すことが輝いて見える)」
イアルはアーノルドへのインタビューに、思わず感激してしまった。
理由は本人にも分からない、けれど何故か・・・凄いと思ってしまったのだ。
「…………」
だが同時に、彼は強い不安を覚えていた。
「(素晴らしい、素晴らしい……はず、なのに。
なんでこんなに俺を納得できてないんだ……?)」
イアルはインタビューの内容に目を通す。
玉座の間で性■謁見。全裸で廊下を歩きメイドを捕まえる。王妃を兵士に貸してやる……
「(……駄目だ。分からん。
こんなにも素晴らしい行動・・・・・・・をしているのに、なんで俺の誇りは納得できてないんだ……)」
アーノルドはこの後、城下町を歩いて気に入った女性に栄誉・・を掛けて回るつもりだ。
その後の夜会で貴族の人妻に夜枷を命じたり、王妃に■裸で給仕をさせたり……というようなスケジュールが描かれている。
「(この後のスケジュールも、別に変じゃないよな……)」
イアル・ドレッド。仕事以外にやることがない男。
妻の不倫で離婚して、現十四歳の娘は妻に連れてかれた悲しい男。
――彼のジャーナリズム魂は本物である。
「(何つーんだろうな……俺の、ジャーナリストとしての魂? がなんか、なぁ……)」
「お待たせしました。イアルさん? ですね」
「いえいえとんでもございやせん。本日はお時間取って頂きありがとうございます(っと、今は仕事だな)」
イアル・ドレッドは意識を仕事へ向け始める。
そうだ、彼は根っからの仕事人間。ゆえに意識の切り替えは並みの熟練度ではないのだ。
◆◇◆
~街の住人Aさん~
――――英雄アーノルドの武勇伝を聞かせてくれますか?
「英雄さん? ああ、知ってる知ってる~
あれでしょ? ああ、うん、あれよね? おばちゃん知ってるから、うん、ほんとほんと……その…あれ、だよね?」
――――武勇伝が多過ぎて答えられないそうです。
~とある貴族の庶子Lさん~
――――英雄アーノルドの武勇伝を聞かせてくれますか?
「え? 英雄……? ああ、知っていますよ。私は先の大戦に参加していましたからね。えーっと……?
あれ……? 英、雄……? 確か、うん、あれ……? 思い出せない……」
――――度忘れってよくありますよね。
~街の住人さん~
――――英雄アーノルド……知ってる?
「ちょwwこれ雑誌の取材ってま? うけるー、ちょーかわいーじゃんww」
――――はっ倒すぞメスガキ。
雑誌の取材を終えて、イアルは広場でベンチに腰掛けた。
「(はぁ……ダメだ、全然情報が集まらない)」
彼は今まで王都に住む貴族から、英雄に救われた村を探しては取材をしていた。
けれど誰に話を聞いても英雄の話を〝具体的に〟聞こうとすると途端に同じ反応をするのだ。
「…………はぁぁ」
ベンチに腰掛けて身体を崩す。既に五月に入ろうとしているのか温かい風が頬を撫でる。
「…………英雄、か」
徐に煙草を取り出して口に咥える。ポケットに手を差し込んだ。ライターを取り出すためである。
「まてまてー」
「あはは、ここまでおいでーうぇええええええええええええええええええええい!!」
「なんだコイツうるさっ、てかキモっ。近寄らんとこ」
「遺書、世界に希望を見いだせなくなりました。さようなら」
広場の噴水、その周りで騒ぐ子供たち。
その無邪気な姿がイアルの視界に入る。
「…………」
しばしの沈黙の末、空を見上げる。青く澄み切った空だ。
「戦争……終わったんだな……」
小さく呟き、自嘲するようにふっと笑う。
「もうひと頑張り、しますかね」
ポケットから手を出して煙草を仕舞う。
そして広場の近くにある小さな菓子屋に寄ってこう告げた。
「おばちゃん、飴ちゃんあっか?」
――――禁煙でも始めよう。
◆◇◆
王城。アーノルドの部屋。
「ぐへえ、うっぷ……食い過ぎたわぁ」
アーノルドは満足そうに自分の膨らんだ腹を撫でる。そしてその脂ぎった指で自分の顎を撫でるとその日のことを思い浮かべる。
「月刊バトルアーツの一面……ふっ、くはは! 俺様が、バトルアーツの一面、く、くくく……!」
彼の人生は今、最高に輝いていた。それを再確認するように傍らに置いてある石を見た。
――――賢者の石。魔王の心臓部に値する超密度の魔力が結晶化した存在。
その場にあるだけで無尽蔵に魔力を練るという魔法のランプ。
「(精神干渉系魔法ってすげぇわww 何やっても〝さす英〟で返されるんだもんなぁwwwやべ、面白過ぎて股間がバーストストリーム。姫〇器呼ぶか)」
最低。
「おーい、〇器二号」
アーノルドは二年前、魔王城にて賢者の石を手に入れた。
そして大陸全土に及ぶ精神干渉系の魔法――――催眠術を使用したのだ。
今現在に至るまで賢者の石は一切衰えない。ゆえにこれから先、彼の催眠術が解除されることは無いのだろう。彼が死にでもしない限り、この異常な世界は治ろうとしないのだろう……。
「メイドさーん、このロイヤルティッシュ、片付けといて~」
メイドが隣国の姫を片付る。流石はアーノルドである、ティッシュすらロイヤル。
「ぐほーん。とな」
ベットに寝転がり、賢者の石に目を向ける。
「ん?」
ロイヤルティッシュは笑顔で運ばれて行きました。
「……今、賢者の石が何か……」
メイドは部屋の扉を閉めて、ロイヤルティッシュを風呂場に連れていきました。
「……気のせい、か」
ロイヤルティッシュは綺麗な身体になりましたとさ。めでたしめでたし。
「…………まさかな」
ロイヤルティッシュ氏が正気に戻るまで、あと100日
後書きーーーーーーーーーーーーーーーー
・イアル・ドレッド(34歳)
クリスティア(現14歳)が乙女ゲー主人公なら、攻略対象である。
彼のルートを進んだら
新郎:34歳
新婦:14歳
義理の娘:14歳
とかいう複雑な家庭が生まれることでしょう。ただ、このままいったら抑止力どもに幸せにされる可能性が高い……アイツら、マジでどうすっかな。
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