第10話、本当にダメな奴、というのは一定数存在する。
前書きーーーーーーーーーーーーーーーー
本当に最初期のプロットにはセクハラ冒険者が助けに来るとか、そんな展開、存在していないはずなのに。どうして、どうしてお前はそこにいる。
ふざけるな、あり得んだろう。私の作品ならば私に従えよ。
本文ーーーーーーーーーーーーーーーーー
◆◇◆
里に住む男、ジーク。彼は少し前まで腕が無かった。
それは戦士としては致命的なことであり、余程の事情があったのだろう――――と通常ならば想像するところだ。
『(頼む……! こい、こい!!)』
『ストレートフラッシュ』
『ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!』
人間の運営するカジノ。彼はそこの常連だった。常連の――――鴨だった。
『頼む、頼むよぉ……今月の(嫁が稼いだ)給料、が残ってねえと娘を食べさせることすら出来ねえんだ……』
『……ならなんでカジノ来るんだよ』
正論である。かなりの正論を十代ほどの青年にぶつけられるジーク(妻子持ち)……かなりの酷い絵面である。
『娘に旨いもの食わせるためだよ! 勝てば毎日ステーキ食えたはずなんだ……! そう、これは家族のためだ。俺は家族のために戦ってるんだぁああああああああ!!』
『……(家族が憐れすぎる……でもコイツ、かなりの依存症やし指一本ぐらいじゃ止まらねえよな……)』
その証拠にジークは指を二本失っている。嗜虐趣味の変態が『指一本落とせたら金貨十枚なw』と言われたら簡単に落としたのだ。
――――つまりジークがもう嫌だ、と思うほどの代償を払わせる必要がある。
『……金が欲しいなら、お前の右腕をだせ。それが嫌ならこの金を持って娘さんのとこに帰れ、そして働け……でなきゃお前の娘を誘拐するぞ、俺は』
青年、かなり優しかった。ジークがその日、失った分の二倍を目の前に置いた――――だが。
『……は?』
『これで・・・……これで・・・、金をくれるんだよな……? お、おい……寄越せよ』
――――狂っていた。青年は露骨に不快な表情を浮かべて男の給料の五倍を投げ渡して去った。
『うへ、うへへへ、やた……これで、また、できる……いひ』
右腕はない。だが幸せそうだった。
その数日後。ジークはまた金を失った。
『誰か、金を、俺に金をおおおおおおおお!! ジャラジャラが、ジャラジャラがしたいんだおぉおおおおお!!』
かなり優しい青年も、これには付き合いきれなかった。周囲も青年との会話を見ていたため、理解していた。〝この男はダメだ〟と。
『君君ぃ~お金が欲しいのかい?』
『ほ、ほじぃいいいい。なんでもする、だから、だから俺に』
『――――なら、君の娘くれん?』
ゆえに彼が目を付けた。優生学の権威、かなり邪悪な糞爺。クリスティアにTS薬を渡した神。
『僕はオーヴィス。オーヴィス・ブレンナー。君の娘を買い取ろう。言い値で』
言い値で。それは悪魔の言葉であった。ジーク氏、涎垂らしながら飛びついた。
娘、オーヴィスが連れていきました。後に青年と出会い幸せにされました。
★☆☆
「許せねえ……許せねえよな。俺の唯一の家族を、ブレンナーの野郎は奪っていったんだ……!」
ギュッ(右手首を掴む音)
その後、また金を失って本当に誰もいなくなってから彼は気付いたのだ。
娘の大切さ。若く聡明で器量も良い娘、その大切さに気付いたのだ。
「俺の娘の本当の価値を、ブレンナーの奴は気付いてやがったんだ……!」
ギュッ、ギュゥゥゥ~♡(右手首を強く締め壊される音)
それは彼にとってかけがえのないもの。それは――――。
「――――娘を貴族に差し出せば、もっとたくさんの金が手に入るはずだったんだッ!!」
――――ぽきっ♡
「んぎ……ィ! ァ、あ゛ぁ゛……ぇ゛ッ!!」
当時、獣人を娶る貴族は珍しかったがいなかったわけではない。
実際に獣人を娶った貴族の話を聞いた時、ジークは気が付いたのだ。
――――娘が貴族に嫁げば、継続的に金が入っていたんじゃないか?
「許せねえ、許せねえよな……アイツは、ブレンナーの奴は俺の人生を狂わせたんだ。だからブレンナーの家紋を見たら暴走するぐらい、普通だと思うんだわ。俺は」
ジークはクリスティアの頬をペチペチと叩く。クリスティアの瞼がピクリと動く。
――――ミハルの里、空き家。天気は雨である。
「…………ぅ……ぅ……」
「つまり俺の行動は不可抗力だったということだ。勘違いしただけだから謝る必要もない。だろ? だって俺、悪くねえもん。な?」
ジークの問いにクリスティアは答えない。薬で眠らせたのはジークなのだから、当然だろう。――――腹部に蹴りを叩き込む。
「ぎぁ゛ッ!!!?」
「テメエは人の質問に答えることも出来ねえのかァァァァァァァッ!!!!!」
クリスティアは防御本能を働かせ、腕で頭を守ろうとする。それは二度のボコられ経験から学んだこと。否、本能に刻まれた機能である。
「は?」
――――ゆえにジークは気に食わない。ぶっ壊したくなる。
「何隠してんだテメエはぁああああああああああああッッ!!」
「ひぃ゛ッ!!? や゛がッ!! やべでッ!! ぐだざっぁ゛っ」
胸倉を掴んで引き寄せられる。思いっきりぶん殴られる。
何度も、何度も……何度も何度も理不尽な暴力が彼女に降りかかった。
ゴォ゛ッ♡ ゴリ゛ッ♡ ボゴォ゛ッ♡ ボゴォ゛ッ♡
鈍く、ひたすら痛々しい音が響く。
「ぁ゛…ぃ゛、…ぁぅ゛…………ひぐっ、ひぐっ……もう……やらぁ、もう、やべで、だじゃ……」
「俺に指図すんな雌ガキの分際でぁあああああああああああああああああああああ!!」
一度目の拳で右腕に大きな打撲傷ができる。
二度目の拳で赤黒い痣になり、三度目で更に黒が深まり……四度目、五度目、六度目……何度も、何度も振るわれる暴力。
死ね、死ねと怒り狂いながら殴られる。
「…………」(っ……っ……っ……)
しばらく殴られ続け、腕が紫色になったところでようやく暴力は鳴りやんだ。
腕の腫れはもう痣、なんていうレベルではなかった。
紫色に腫れた右腕は、変形していた。それは魔法や特殊能力ではない――――純粋な暴力でそこまで腫れあがっていたのだ。
っ………っ………っ………
クリスティアは顔を必死に隠して、身体を小刻みに……本当に小刻みに震わせる。
「あーあ、お前が騒ぐからこんなに腫れたじゃん……ねえ、反省してる? おーいー」
ひくっ………ひくっ………ひくっ………
一定の規則で身体がピクっと動く。その姿は必死に涙を押し殺しているようで……――――ジークの嗜虐趣味を高ぶらせた。
「ねえ、聞いてんの? お前が騒いだせいなんだぜ? 悪いことしたら謝んなきゃ駄目って大人に習わなかったのか? おーーい」
ひくっ………ひくっ………ひくっ………
「…………」
ひくっ………ひくっ………ひくっ………
「…………死ねや」
メリィっ♡(拳が減り込む音)
最早標準装備といっても過言ではない腹パン痣が刻まれる。
「ぁっ…………っ……ぅ…………」
漏れる嘆きは小さくて。それだけこの標準装備に慣れているということだろう。
「……はー、つまんな。もういいわ。
もうすぐ奴隷商人が来る時間だし、それまで鶏肉で遊ぶかね~」
そしてジークはクリスティアを放置してクローゼットを開ける。そこから酷い異臭が漂い、ジークは顔を顰める。
「おい鶏肉イリーナ、元気してっか~? ……あ?」
ジークはクローゼットに向かって唾を吐くと再び閉めた。
「そういや逆さ吊りの状態でもう二日放置してたわwwww
耳引き千切ってたから大丈夫だと思ってたんだがなぁ~」
屑ぅ。
「あとで小便でも掛けとくかww 俺の小便はファブ〇ーズだからなぁ!
と、いうわけで☆」
ジークズは再びクリスティアに近付く。
「おにいさんとあそぼ♪のコーナーがやってまいりました!! さぁさぁ今回のゲストはクリスティアちゃんですうぇえええええええええええい☆」
毎週日曜日、小学生必見のこの番組。
クリスティアはこの日、ゲストとして空き家スタジオにやってきていた。
「あれれー? クリスティアちゃんは照屋さんなのかな? じゃあみんなで呼んでみよー!!」
ジークはクリスティアを足で蹴り、仰向けにする。
【■■■】【諦める】
「……やっぱ可愛いよなぁ。この子」
じゅるるっ。ジークは舌なめずりをする。その瞳は欲情した雄のものだった。
【■■■】【諦める】
「……ちょっとだけ、たべちゃおっかな」
ジークはクリスティアの足を掴み、その肌白く綺麗な太腿を口に近付けて。
ハームっ――――口を付け。
プッツ――――歯を肌に突き立て。
プチリ――――貫き。
ギリ――――強く、
ギリ――――味わい。
ギチィッ! ――――深く、深く歯を突き立てる。
二ケ所、三ケ所、四ケ所と歯形を付けてから満足したのだろう――――ナイフを取り出した。
【■■■】【諦める】
「ちょっと失礼するよ~動くと刺しちゃうからねー♡」
ジークは手にナイフを持ち、クリスティアの服に添えた。
そして――――服を引き裂いた。
【■■■】【諦める】
「…………」(ひくっ……ひくっ……ひくっ……)
露わになる慎ましやかな乳房。絹のように綺麗な肌は小さくてもその繊細さをしっかりと主張させるものだ。
そして下腹部、そこを見てジークは顔を顰める。
【■■■】【諦める】
「――――おい、ふざけんなよ?」
「ぃ゛……っ……ぁぅぅ」
ジークはクリスティアに最大の怒気をぶつけて――――腹部の痣にナイフを突き刺した。
そして流れれるように首を絞めて怒声を飛ばす。
「何痣とか付けてんだよッ!! 萎えるだろうがふざけんじゃねえぞぉおおおおおおおおおッッ!!! 聞いてんのかァ!? おおおおおおおおおおおいッ!!」
「ヒィッ、ごめ゛んな゛ざい゛ごめ゛ん゛なざっ、う゛ぇ゛がっ……――」
「ごめんなさいで済んだら自警団いらねえええだろうがぁああああああああああああああああああああああああああッッ!!」
いったい誰が痣を付けたんだ……! と、ジークは怒りに震える。お前だぞ。
【■■■】【諦める】――――【■■■】 ノ 選択 ヲ 確認。
「………………」(ひぐっ……ひぐっ……ひぐっ……)
それは極限状態での覚醒がもたらした奇跡。ほぼ無意識化に行った選択である。
【エル ノ 十八番 ニ 接続アクセス】
「…………」(ひくっ……ひくっ……ひくっ……)
「聞いてんのかァァァァァァッ!!」
【月ノ光ニ 優シイ リュバン ハ】
「…………」(ひくっ……ひくっ………ひくっ…………)
「はぁーつまんねえぇなオイ!! 誰のせいで白けてるか分かってるぅぅぅぅ??」
【隣 ノ 扉 ヲ 叩キマシタ】
「…………」(っ……っ……っ……)
「……なるほどオ〇ホ志願だったか」
【茶髪 ノ 少女 ハ 問イカケル――――】
「…………」
「……? もう奴隷商が来たのか?」
次の瞬間、空き家の入り口から物音が響いた。
ジークは奴隷商人が来たのだと察し扉を開けた――――刹那に。
「ぐべっ!」
「クリスティアさん! いますか!?」
「(´・ω・`)……フスーッ、フスーッ」
現れたのは奴隷商人、などではない――――助けマリンである。
扉をぶち破った衝撃でジークが吹っ飛ぶ。ゆえにマリンの視界に広がった光景は一つ。
「(´・ω・`)…………フム
…………(殺´・ω・`)」
視界に広がったのはクリスティアの腕……変形するほどの壊された腕である。
加え大きな痣、切り裂かれた服、今にも泣き出しそうになっているクリスティア――――殺意を抱くには十分すぎた。
「…………お前かジーク」
「ひぃぃっ!」
「(絶´・ω・`殺)」天道流抜刀術奥義……
猫耳バントを付けたオッサンがクリスティアの傍に駆け寄る。
胸ポケットから謎の液体が入った瓶を取り出して患部に掛けた。
「くぅ……っ……」
「(´・ω・`)……オウキュウ、ショチ」
「……」(……コクン)
囁かれる言葉を理解するのに数秒。
クリスティアはそこでようやく助けが来たと理解した……。
◆◇◆
「……右腕骨折、肋骨骨折、幻覚、五感麻痺。右手首骨折、後は腹部に刺さったナイフ……」
加え、身体中に刻まれた打撲傷と歯形。
とある冒険者と協力し最低限の治療が済み、マリンは安堵の息を吐いた。
「(……流石、幸運が限界突破してるだけある……ナイフが小腸を一切傷つけずに刺さってるなんて)」
クリスティアのステータスを以前、見たマリンはそれが本物であると改めて実感する。
と、言うのもクリスティアの傷の状態が奇跡的に致命傷だけは外れているのだ。
腹部にナイフが刺さっていた――――にも拘らず、臓器を一切傷つけていない。
その理由があるとするならばクリスティアのステータスに他はない。そう、クリスティアのステータス、その運の欄は999(測定不可)と表示されているのだ。
それが真価を発揮したのである。
――――不幸中の幸いという形で。
後書きーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【IF 諦める を選んだ場合】
→右腕が二度と動かなくなる→安めの性■隷として売られる。
→元勇者に買われる→一週間ほど同棲
→まともに家事ができる程度に回復
→料理の味付けで正体がバレる→元勇者『実は男でも襲ってた』
→性奴■としての初仕事。
→デート→デート中、攫われる
→レ〇プされ、絶望で自害しようとする。
→勇者、助けにきて止める(連れ帰ってベッ■の上で交渉)
→勇者『(自主規制)』(クリスから口付け)
→クリスが妊娠する。クリスが育児本を十冊ぐらいをせっせと読んでいる。その姿にほのぼのして終わり。
→幸せ性奴隷END② 【あなたの隣にいたいから】
END①との最大の違いは寿命です。
END①のクリスティアは寿命がほとんど残っていません。しょうがないよね、身体の内側もボロボロだし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます