第4話

解散したあと、俺はボスに呼ばれているためバイト先へと向かっていた、多分だが俺が先日に無断でポーションをあげたため怒られるのだと思う


そうして俺は若干憂鬱になりながら重い足取りでダンジョンの隣にある建物に入った


ここはダンジョン本部のビルでその中に俺のバイト先であるダンジョンサポートセンターがある



そこの入り口に着き扉を開いたら


「こんばんはー」


「おそいっ!」


目の前にはボスが仁王立ちでいらっしゃった


ちなみにボスは女性で本名は栗林 理沙という


「行く時間は伝えていたと思うのですが...」


「2分も遅れている!」


「遅れてすみませんでした」


いつも通り時間に厳しいボスである


「許そう、ついてこい」


そうして俺はボスの執務室に通された


「失礼します!」


「とりあえず座って話そう」


そうして俺とボスは向き合う形で座った、とてもこちらを見ていらっしゃる、多分俺はこれから怒られるんだろうなぁ、嫌だなぁ


「フッ、そう硬くなるな、別に今日は叱るために呼んだわけじゃない」


「え、そうなんですか?てっきり先日のポーションのことで怒られるんだと思ってました」


なぜそれで怒られると思ったかと言うと、まず回復ポーションは支給されたものでこのポーションは突き指や捻挫まで治せるもので1つ5万もするのだ、なのでそう簡単に使っていいものではなく万が一何かあった時に限り使っていいことになっている


ただ、前にバイトの人が油断して怪我をした時に使用したことでボスが「ポーションがあるから大丈夫と思って戦闘するな!」と怒り泣かされているとこを見て、これは絶対に使っちゃいけないと思ったからだ



「まぁ、それに関しては逆にお前はよくやったと褒めるべきだ」


「え、ありがとうございます」


「それでな、今日呼んだ理由は相談なんだ」


「俺に相談ですか?」


「あぁ、お前はこれまで10階層までやってもらっていただろ、階層を増やしてもらいたいんだ」


「え、なんでですか?」


急にそんなことを言われてしまった、俺は10階層までしか攻略をしていない、だからもっと攻略し

て欲しいと言っているのだ


「とりあえず聞いて欲しい、まず私はお前に最初に10階層までを攻略させた、お前の過去をある程度知っているしお前の気持ちもわかっている上でお前の実力なら10階層までなんて散歩程度だと思ったのでやらせた」


「はい、けどそれだって結局は苦戦してかなりの時間を使ってしまいました」


そう、俺はバイトを始めるにあたってボスからお前の実力ならまず10階層まで行けと言われたのだ

だが当然、おれ一人でダンジョンに入ってしまうと足がすくみそれ以上進めず過去の記憶が頭によぎり行けなかった


そこで手伝ってくれたのが先輩だった、その時、先輩はレベル2になったばかりでとても気分が良かったのか「俺はレベル2なんだぜ、俺がいればこんなとこ楽勝だ!なんも心配せず着いてこいよ!アッハッハ!」と言って笑いながら俺を引っ張りだしたのだ、そんなこともあって俺は少しずつダンジョンに入るという恐怖心が収まっていった、そして2週間が経ちようやく俺は10階層までクリアできたのだ


「けど最終的にはお前はダンジョンに対する恐怖心は薄れた、そして何もお前に冒険をさせたい訳じゃない、まず20階層までならお前にとっては冒険ではないんじゃないか?」


「そんなの分かりませんよ」


「そうか?先日、お前は特殊のオークを倒した、あれは20階層より上のレベルの相手だ、それを倒せたのに攻略できないわけが無い、だろ?」


「あれは先輩もいたからです!」


「あいつとお前の2人で倒せたのだ、それはお前に実力があったからだ、それにお前ひとりで攻略してこいと言ってる訳じゃない、だからとパーティーを組むんだり、それこそあいつに頼めばいいじゃないか」


「先輩にですか?」


「そうだ、適任だとは思うがな」


「ですが俺はバイトで攻略している時間なんてありませんよ」


「それもそうだな、ならお前がダンジョンを攻略してくれるならバイトを休みとしその代わりにダンジョンにいる時間分のバイト代をそのまま払おう、悪い話しじゃないだろ?」


「そこまで俺にさせたいと...わかりました」


「すまんな、考えておいてくれ」


「はい.....では失礼します」


バタンっ


「お前には酷いことをしているのかもしれないな、けどお前をそのままにしておきたくないんだ、私のわがままを許してくれ、照一...」


照一が出ていった扉を見て呟くのであった



「はぁー、いつかは言われると思ってたんだけどもうかぁ」


俺はビルから出るとそうため息をついた


ピロンッ


誰かからメールが来た


「たすけて!」


それは葵さんからだった



♢♢♢

私、本田 葵は照一くん達と別れたあと武器屋にいた、昨日使っていた剣が壊れてしまったために買いに来たのだ


武器の値段は安いと1万前後からで高いと1000万以上するやつもあるほどだ、なんでも1本1本を丁寧に何ヶ月も使って作成するようで当然その性能はすごいらしい


私は3万くらいの手頃な値段の武器を捜すことにした、少しお金に余裕があっても高いのは買えない


それに、あまり上層でそんなに高い武器や防具をしている人はあまりいい顔をされない、なぜならこちらは命懸けで稼いだ金でようやっと買えるのにそいつはなんの苦もなく買っているクソ野郎だと思われるからだ


そうして私は武器を買い、ほくほく顔で出ると


「ねぇ、君が本田 葵ちゃんだよね?」


急に知らない人から声をかけられた


「そうですけど、誰ですか?」


「ちょっと君に用があってさ、着いてきてくれないかな?」


「ごめんなさい、もう帰るとこなので失礼します」


「そういうなって、少しだけだからさ」


どうやら1人じゃないらしく後ろに4人いた


「ほんとに帰るんで!」


「まぁ、待てって」


そう言ってこの場を離れようとした私に男の人は肩を掴んできた


「離してください!」


私は男の人の手を払い駆け出した


「あっ、おい!まて!...チッ、お前ら追うぞ!」


男は後ろの4人に命令し追うのだった




「はぁっ、はぁっ......ここまで来れば大丈夫じゃないかな、さすがに巻いたでしょ」


私は怖くなって無我夢中で走った、そして気づけば後ろに彼らはいなかったため見失ったのだと思った


「み〜つけた!」


「っ、なんで?」


なんと道の角から先程声をかけてきたリーダーらしき人が現れたのだ


「俺さぁ、実は冒険者なんだよねー、それで称号『追跡者』って言うの持っててさ、スキル〈足跡〉で君の居場所なんてバレバレなわけよ」


「そんなっ!」


「逃げても無駄だよ〜」


私はさらに走っていた


なんで私が追われるの?なんかした?意味わかんないよぉ、こわい、誰か助けてよ!


そう思ったら私はある1人が思い浮かんだ


そして気づくと私はスマホを開いて「たすけて!」と送っていた


「ハハ、ほんとに来てくれるかな?そうだ!〈片思い〉、ヨシっ、これで私の居場所も伝えられたよね」


私は自分の行動に驚いていた、まだ出会って数日の彼にスキルまで使い助けてを求めているのだ、どうやらこれほどまでに彼を信用していたらしい


「えっ、うそっ!行き止まり!」


私はここまで無我夢中で走っていたためこの辺の土地勘がなく行き止まりまで逃げてしまっていた


そして


「あらら〜、逃げ場がなくなっちゃったね〜」


彼らは追いつき私はほんとに逃げ場がなくなってしまった


どうしよう、私もなにかスキルを使って......

だめだ!何もないよぉ〜、ここで終わりなの!?

お願い!助けにきて!


その時


スタッ


「はぁっ、はぁっ、ごめん、待った?」


「照一、くん?」


私はこの時の彼の後ろ姿を絶対に忘れないであろう



♢♢♢

ピロンッ


ん?誰かからメール?


「たすけて!」


なんと葵さんからのSOSだった


これはなんだ?冗談?


そう思っていると


うわっ、なんだこれ、どうなってる?


頭がチクッとなり、急に葵さんの位置がわかるようになった


これはほんとに助けてが必要なんじゃないか?


葵さんとの距離が少しずつ遠くなっている、走っている?なんでだ?


わからん、とりあえず追いかけよう!


タッタッタッ


「クソっ、最短距離ならこの建物を通り抜けないといけない!...あまり人前で使いたくないが仕方ない、〈空間移動(中)〉」


俺はスキルを使って建物の屋上まで行き、そこからビルとビルをスキルを使い飛び移って追うことにした


これ初めてやったんだけどめっちゃ怖いんだけど、下見たらちょー怖ーよ、やばい、チビりそう



そんなことを思いつつも


いたっ!


行き止まりになっている路地裏に葵さんを発見した


しかし、その横には5人の柄の悪そうな男らがいた


これはもしかしてやばいのでは?とにかく急がねーと!



スタッ


「はぁっ、はぁっ、ごめん、待った?」


俺はここまでスキルを連発したために息が上がりつつも葵さんに話しかけた


「照一、くん?」


「あぁ、呼ばれたから来たぞ!大丈夫か?」


「うん、いま大丈夫になった!来てくれてありがとう!」


そう言って汗をかいているからなのか赤面しつつ笑顔で答える葵さんを見るとドキッとしてしまった


これ見れただけでも今来て正解だったな


「おい!てめぇー、どこから来やがった!」


俺が葵さんにドキドキしているとリーダーらしき人が怒鳴ってきた


俺は今から葵さんをこの人たちから守らないといけないのか


こわい、でも頑張る!


「えっと、すみませんが彼女が怖がっているのでいなくなってくれませんかね?」


「はぁ?お前がどっか行きやがれ!今だったら見逃してもいいぜ?」


とてもニヤニヤしながらそう言ってきた


んー、行ってくれないかぁ、俺だって本当はこんなとこから逃げたいよ?でも葵さんを置いていけるわけないのよ、だからそれは無理だぁ


「なら、俺と彼女がこの場から離れるのでそれでいいですか?」


「言い訳ねぇーだろ、俺たちは彼女に用があるんだよ!」


まじかァ、これはナンパでもしたのか?


だけど葵さんがそれを断ったからそれに腹が立って追いかけてきたとか?


「えっと、ナンパなら他の子にしてくださいよ、彼女のことは諦めて欲しいです」


「ナンパじゃねーよ!彼女を連れて来いって命令されてるんだよ!まぁ、その後は可愛がってやるけどな!」


『ちげーねー、ゲハッハッハッハー』


そう言って男らは葵さんをいやらしい目で見ながら笑っていた


やめろ!そんな目で葵さんを見つめるな!


誰かに命令されて来ただと?なんで葵さんが?


よくわかんねーけど引いてくれないなら倒すしかないのか?


「引いてくれないなら力づくですよ!」


ほんとにどっか行ってくれない?戦うの怖いなぁ


「お前ほんとに言ってんのか?こっちは5人だぜ?どうせ雑魚なんだからやめとけって」


うわっ、今のはカチンときたわ、ちょっと不良で喧嘩できるからってあんまり調子乗ってんなよ!


モンスターじゃねーからそんなに怖くねーし!


少し痛い目見せてやらーーー


俺はまず1番右のやつに向かって走り出した


「この野郎、ほんとに来やがった、こいよ!俺の右腕が火を吹くぜ!オラッー...『ボキッ』、うわぁぁぁ」


まず一人目


「てめぇ、やりやがったな、俺の左足は電柱でも蹴り倒すぜ!ウリャー...『バキッ』、うわぁぁぁ」


そして二人目


「こいつ、つぇー、だが俺ら2人でならこんなやつコテンパンだ!」


「いくぞ!」「おう!」


「うりゃりゃりゃりゃ!...『ゴスッ』、ぐはっ ーーー」


「おりゃりゃりゃりゃ!...『ドゴッ』、うぐっーーー」


三人目、四人目


「お前らなにやられてんだよ!クソっ、情けねえ奴らだ、俺がやってやるよ!」


シュンっ


「カハッ!...いつの、まえに」


「誰に命令された?」


「教える、わけ、ねぇだろ...『ドガッ』、ぐはっ!」


「言え!」


「......わかった、言う、村田純だ」


なんであいつが?今日のことでか?


「なぜ彼女を連れて来いと?」


「それは、知らねぇ、ただ連れて来いと」


わからん、直接聞くべきだな


ガバっ


急に後ろから葵さんが俺を抱きしめてきた


「え、葵さん?!」


「ごめん、もう少しこのままで居させて」


どうやらさっきまで我慢していたのか後ろで震えているのがわかる


葵さんが泣いてる!どうしよう、


そうして落ち着くのまち


「落ち着いた?えっと、葵さん、怪我はない?」


「うん、助けてくれてありがとう!照一くんこそ怪我はない?」


「俺は大丈夫、それじゃあ行こっか」


俺たちは警察を呼び、何があったのかを説明し、その後彼らを引き取ってもらった



それから俺は葵さんを家まで送ることにした


「ここまで送ってくれてありがとうね、あとさっきは恥ずかしいとこ見られちゃったね」


どうやら泣いていたことが恥ずかしかったようだ


「別にいいよ、また何かあったら大変だしね」


「なんかまた助けて貰っちゃったね」


「そんなこと気にしなくていいって、それに可愛い子に頼られるのは嬉しいからさ」


「あはは、可愛いって言われちゃった、照れるなぁ、でもほんとにありがとう......、そうだ!うち来てご飯一緒に食べない?まだでしょ?」


「大丈夫、昨日の残り物もあるし!」


「そっか、じゃあ今度お弁当でもお昼に作ってきてあげる!」


「え?葵さんの手作り弁当?」


「うん!それならどうかな?」


またそうやって仕草があざといんですよー


「えっと、それは嬉しいけど」


「じゃあ決まりね!今度作ってきてあげる!」


「じゃあよろしくお願いします」


「うん、それじゃあバイバイ!」


「あっ、葵さん!」


「ん?なに?」


「あのさ、俺とパーティー組まないか?」


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