第2話

「先輩、今日は何階層ですか?」


「今日はなぁ、9階層だってよ」


今、俺はバイトへ向かうための準備をしてる


「こっちは準備終わりましたよー」


「お前はいいなぁ、腰に短剣を携えただけの軽装備でさ、俺なんて剣持って歩かなきゃ行けなんだぞ」


「仕方ないですって、先輩は称号『剣士』なんですから、剣持って行かないと困りますよ」


「はぁ、この格好じゃ終わってそのまま夜の街に繰り出せないだろ、あー邪魔だ」


「先輩は未成年なんですから飲酒はダメですよ?」


そんな会話をしながらも準備を終えバイト先へと向かった



え、なんのバイトかって?

それは〜、清掃だよ、ダンジョンのだけど...

でもね最初は知らんかったのよ、ただちょっと時給がよくてさぁ


学校が始まってすぐに俺はまずバイト探しを始めた、その時にとても時給のいい職場を見つけた、それがダンジョンの清掃だった

「なんだこれ、ダンジョンの清掃?ダンジョン周辺でも掃除するのか?まさかダンジョンの中を掃除するわけないよな、よし、これにしよう」

その時の俺は即決だった、だって時給いいんだもん


バイトの面接に行くとまずダンジョン経験はあるのかを聞かれた、そして何故か冒険者資格を取らされた、まだ俺16になってないんだよ?なんで取れちゃうわけ?そして何故かダンジョンに入れられて、清掃をさせられた、うん、スムーズすぎ!



え、ダンジョン嫌いじゃなかったのって?

まぁ、清掃と言ってもただのゴミ拾いだし、モンスターが出てくる辺りにはほとんどゴミは落ちてないから対して危ないこともないし、しかも俺も子供じゃないんだ、怖くないし!

うそです、最初はめっちゃビビってました、モンスターの声が聞こえる度に脚ガタガタ震えてました

でもね、お金のために頑張るって決めたんだ、今じゃ全然余裕だし!ほんとだよ?もう震えてないよ?ただちょっと怖いなぁくらいだよ?



「今日はあんまりゴミ落ちてないですね〜」


「まぁ今日は平日だしそんなもんじゃないか?」


俺たちの仕事は空き缶、空き瓶、ペットボトル、お菓子袋やイス、机、エロ本、武器やアイテムといった捨てられていったゴミを拾ったり落とした物を拾ったり言わば回収屋だろう、てかエロ本なんていつ使うんですかね、あれかな、モンスターに見せるのかな、トラップに使うのかな、まさかこんなとこで一般的な使用はしないだろうしなぁ。


「先輩、そういえばさっき武器を拾いましたよー」


「それなら俺だってさっきパンツを拾ったぞ!ブリーフだけど」


「え、それは大変ですって、早く届けてあげないとその人今頃ノーパンですよ?」


「そこじゃねぇだろ!なんで女性のパンツは落ちてないんだって話だろ!」


いや、そこでもないと思うけどね、先輩は少し変わった人なのだ


そんな会話をしながらもゴミ拾いをしていると


「うわっ、先輩、これって」


「ん?マジか、死体じゃねーか、くそっ、連絡するのめんどくせぇ」


ダンジョンには規則がある、そのひとつが死体を見つけたものはすぐに受付にそのことを知らせ、基本的に回収班が来るのをその場で待たなければ行けないということだ、なぜなら死体をそのまま放置するとモンスターが食べてしまい、成長させてしまう可能性があり、それをなるべく阻止するのと、遺体を家族の元へ送り届けるためである


「いや、それよりもこの死体おかしくないですか?」


「そうかぁ?首から上がないだけだろ」


「それがおかしいと思うんですよ、この階層というか、10階層まででこんなことの出来るモンスターなんていなくないですか?」


「そう言われてみれば変かもな、できるとしたら13階層から出るオークとかか?」


少し先輩の言葉に俺は嫌な予感がした


そして、


「キャーーーー!!!」


女性の叫び声が遠くの方から聞こえた


「先輩!」


「わかってる、連絡はした!」


俺たちは声の方へと走り出した


そして通路を曲がると女性がいた、いや女性と言うよりは女子だろう、その子は足を怪我してるのか何かに怯えながら後ずさり、その視線には...


「先輩、オークです!」


「まじでオークかよ、ほんとに今日はついてねぇな」


オークとはよくラノベなどで出てるくるお馴染みのきもちわるい歩く豚だ、その手には大きな棍棒を持ち振り回す高い攻撃力があるが遅い、慣れれば問題なく戦える相手だ


「俺はあの子を助けるので先輩は少し引き付けておいてください!」


そう言って俺はすかさず女の子の方へと駆け出した


「ほんとにやるのかよ、くそっ、おい!豚肉!こっち来やがれ!〈スラッシュ〉!」


そう言って先輩はスキル〈スラッシュ〉を使いオークの気を引いてくれた


「きみ、怪我は大丈夫?少し遠くに運ばせてもらうよ!よっと、」


「わわわ、あのちょっと自分で歩けるので大丈夫です〜、降ろしてもらえませんか?」


女の子が何か言っているが悠長なことを言ってられないので無視して俺はそのままお姫様抱っこの状態で少し遠くまで運んだ、その時に少しいい匂いがしたのは内緒だよ?


「よしっと、ちょっとここで待っててね、あ、あとこれ回復ポーション使って!」


「えっと、助けてくれてありがとうございます!けどポーションは受け取れませんって!」


「いいから、いいから」


そして俺はその場から離れて先輩の元へ向かう


「おい、照一!はやく手伝え!こいつ普通よりつえーぞ!流石にひとりじゃ無理だ!」


「すみません、引き付けてもらってありがとうございます!普通より強いってことは、特殊ですかね?」


「だろうな、こいつ少し速いんだよ、あとあの棍棒が普通よりでかくて間合いが取りにくいんだよ!」


ほんとだ、先輩に言われて観察してみると普通よりも速く、棍棒が一回り大きい、あれだと普通のオークとの戦いと同じように挑むと一瞬でやられてしまう


「俺が回り込んであいつの後ろを取るので先輩は隙を作るのお願いします!」


「またこき使いやがって、先輩をなんだと思ってんだ、お前はよー、後であの女の子に俺の事をしっかりと紹介しろよ?」


「わかりました!あといつも先輩が優しくてつい頼っちゃうんですよ!」


「調子いい奴だ、 まぁわかった、行くぞ!」


「はい!」


意気込んだものの正直言うと怖い、やっぱり逃げましょう先輩と言いたくなる、特殊なんて相手にしたくないに決まってる、だって危険だし、すごく逃げたい、足が震えてきた


でも、あの子がすごく見てる、なんかもう応援してるような熱い視線を感じるんだけど、しかもさっきちょっと待っててなんてカッコつけてきちゃったしさ、情けない姿なんて見せれないよなぁ、


はぁ、嫌だ、がんばれ俺!


「〈バーストラッシュ〉!はぁーーっ、せい!」


先輩はスキルを使い素早く相手の懐へ剣を叩き込んだ


「照一!」


「はい!」


先輩によって後方へと飛ばされたオークに向かい俺は駆け出し後ろに回り込む


よし、この位置なら先輩からもあの子からも見えないな


「〈空間移動(小)〉」


シュンッ、グサッ


「グモォーーーー!」


ドシンッ!


俺はスキルを使いオークの首元まで移動し、短剣を首の横から刺した、それによってオークは叫びそのまま倒れた、そしてそのまま蒸発したかのように消え、魔石とあの大きな棍棒だけが残った


「ふぅ、やっぱりこのスキルは疲れるなぁ」


「照一、おつかれさん、今ので無理だったら俺の方はもう魔力切れで戦えなかったなぁ、だからよかったよかった」


「先輩もお疲れ様です、ドロップアイテムどうします?先輩使いますか?」


「棍棒はいらねぇだろ、売ろうぜ、それなりにいい値が着くだろうし、7:3でいいぜ」


「いやいや、俺も頑張ったんですからそこは均等でしょう」


「わかったわかった、お前の頑張り込みで6:4でいいぜ」


「はぁ、それでいいですよ、先輩が居て助かったのは事実ですしね」


「んじゃ決まりだな、さっさと今日は終わろうぜ」


「そうですね、そうしましょう」


「あの!2人とも凄かったです!ほんとに助けていただいてありがとうございます!」


と、女の子が駆け寄って感謝を述べてくれた、ちゃんとポーションので足治してくれたんだな



それから回収班が来るのを待ちそのあと3人でダンジョンを出て受付に今回の報告を行い、特殊を倒したことによる報酬を受け取った

これは嬉しいなぁ、今回の魔石とアイテムも合わせて40万も貰えたぜ、ウハウハだぜ!



そして3人それぞれ解散になった時


「あの!お名前を聞いてもいいですか?あ、私の名前は本田 葵です!」


「俺の名前は宮田 照一だよ、よろしくね!」


「はい!よろしくお願いします!えっと、それじゃあ私はこっちなので今度会ったら必ずお礼します!」


そう言って彼女は帰っていた

「あれ、あの子、俺の名前は聞かないで言っちゃったよ、なんで照一だけなんだよぉ、俺が助ける側やればよかったなぁ」

「そういえば先輩、さっきあの子にポーションあげちゃったんですがボスに言った方がいいですよね?」


ボスとはバイト先の雇用主のことでみんなボスと呼んでいるから俺もそう呼んでいる


「当たり前だろ、ちゃんとボスに伝えとけよ」


そう言って先輩は少し落ち込み気味で帰っていった、今日はほんとにお疲れ様です、先輩


「はぁ、疲れた、やっぱりダンジョンは嫌いだ」


俺はそんなことを呟きながら帰るのである

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