第5話 先生

 急にどうしたんだよ、会いたい、だなんて。まるで恋人みたいなメッセージだな。確かについさっき終業時刻は過ぎたが、それで俺が一般人になれるわけじゃあないんだから少しは気を遣ってくれよ。


 どういう意味って?


 教師ってだけで生きづらいってこと。特に今のご時世はな。


 だから君ともこうしてヒソヒソと会ってるんじゃないか。今どき男同士だなんて関係ないからな。生徒と教師である以上、学校外で会ったり連絡を取ったりすることはタブーなんだぜ?


 え?じゃあまきはどうなるんだって?またその話か。君にまきとの秘密を知られた以上俺は金にでも足にでもなってやるけど、別にそれはやましいからじゃない。


 俺たちはちゃんと真剣交際なんだ。


 だからやめてくれよ、変なBARに俺を行かせるのは。え?まさか忘れたんじゃないだろうな。二ヶ月くらい前から毎週金曜日はBARに行けって言ったのは君だろ。くそ、俺は真面目に通ってたのによ。そういえばあの日もだよ、まきが事件に遭った日。ちょうどその日も金曜で、俺はあのBARにいたんだ。


 あのBAR、昼は感じの良い喫茶店なのに、夜になると途端にいやらしいBARになるんだよ。……って未成年が分かるわけないか。


 え?いや、別に……。え?あーはいはい、言うよ、言えば良いんだろ…。


 あそこは間違いなくゲイバーだ。


 …はぁ、俺生徒に何言ってんだろう。クビになったりしないよな…。


 とにかく、これ以上あそこに通うのはやめるからな。


 …え!?もう一回行ってほしい!?勘弁してくれよ…。なんかあのオーナー、俺を変な目で見てくるんだよ。いくら君からの要求でも、これは断っても許されるだろ?


 それにあそこに行ったって別に何かあるわけじゃないんだろ?俺はいい加減、まきのお見舞いに行きたいんだ。毎晩毎晩拘束しないでくれ。


 何?まきに関係がある?


 なるほど、もしかしたら犯人の情報を握ってるかもしれないということだな。確かにあの店は事件現場の近くだったな。


 そういうことなら、もう一度行ってみる価値はあるかもしれないな。


 え?もう帰るって?ふぅ…分かったよ、車出してくるから少し待ってて。

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