第3話 医者

 おはようございます。医療ミス防止のために名前をフルネームでお願いします。


 はい、ありがとう。


 さて、最近どう?あんまり顔色が良くないみたいだけど…うまく眠れてる?


 ……やっぱり。少し胸の音聞かせてね。


 はい、次背中ね。


 うん、大丈夫そうだね。


 そんなに周りを気にしなくても大丈夫さ。君みたいな若い子がここに来るのは珍しくないよ。


 それに、うちは総合病院みたいに患者がすごく多いわけでもないから…。


 え?悩み事?もちろんいいよ。うちのコンセプトは『患者に親身に寄り添える医療現場』なんだから。


 ……なるほど、例の事件のことが気になるんだね。


 もしかして以前よりも眠れなくなってしまったのは、この事件で不安が大きくなっているせいかな?


 え?薬?うーん、確かに今より強い薬は出せるんだけど…。あんまり若いうちから睡眠薬に頼りすぎてはいけないんだよ。


 今回だって、定期検診より前に受診しているじゃない。薬のことだよ。あれは1ヶ月分なんだから、きちんと容量を守らなきゃダメじゃないか。


 守ってる?じゃあどうして今日はここに来たんだい?


 いや、説教をしたいわけじゃないんだ。ごめんね。ただ君のことを心配してるだけなんだ。


 物騒な事件が起きて怖いだろうけど、悩みすぎるのも体に毒だからね。


 試しに今より強い薬を3日分だけ出すからね。併用したり容量を守らなかったら副作用が起こる可能性が高まるから気をつけなさいよ。


 じゃあまた近いうちにおいで。

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