10話.[良かったと心から]

「千歩ちゃん、おめでとう」

「ありがとうございます」


 久しぶりに部室でふたりきりになった。

 ただ、今日は活動メインというかお喋りメインにするつもりでいる、この分は明日とかに頑張るから許してほしい。


「佐織先輩も佑樹と付き合い始めたんですよね? おめでとうございます」

「うん、ありがとう」


 その佑樹くんは今日、友達に誘われたとかでここには来ていないんだけどねと内で呟く。

 まあさすがに彼女であっても行動を縛るようなことはしたくないからそれでいい、友達と遊びたいなら遊んでくれれば構わなかった。


「で、佐織先輩はどこまでしました?」

「……実はキスしちゃったんだよね」

「おお! 大胆ですねっ」


 違う、付き合い始める前にあの子がさらっとやってしまったんだ、そのせいであの後はだいぶ恥ずかしくて仕方がなかったぐらい。


「佑樹は微妙なところがありますからね、ちゃんと見ておいた方がいいですよ?」

「うん、それはまあ程々にって感じだけど」


 縛りすぎてもそれはまた問題になるから難しい。

 とにかく私にできることは来てくれたときにちゃんと相手をすることだ、変なプライドを優先してしてほしいのにしてほしくないなんて言わないことだと思っている。


「でも、またこうして佐織先輩とゆっくり話せて嬉しいです」

「うん、今度は信じるよ」

「って、やっぱり信じてくれていなかったんですね……」


 で、でも、いまは違うから安心してほしい。

 千歩ちゃんと佑樹くん、ふたりと関わったことでいい方向へ変われたのだからひとりじゃなくて良かったと心から思えていたのだった。

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05作品目 Rinora @rianora_

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