第34話 ジタバタジタバタ
「あ、あはは。ご迷惑をお掛けしまして……」
「ああ、迷惑だなんてそんな」
気を失ってから10分くらいで目を覚ました咲良。その間にベッドに寝かせたり、濡らしたタオルを額に当てたりとちょっとバタバタしていた。
こんな日に限って春香さんは出掛けている。まあ、よかったと言えばよかった、のか?
咲良はおでこのタオルを取って、ゆっくりと起き上がる。
「えっと……ごめんなさい、雪和くん。その……」
「あ、ああ、さっきのことは気にしないでくれ。ホント、突然悪かったな」
「う、ううんっ! 雪和くんの気持ちが知れて、嬉しかった……!」
「そ、そうか……?」
「うん! ……何だかんだで、あの後からお互いに好きって言ってなかっなぁって……ふふ。私も大好きだよ、雪和くん」
ぅっ……嬉しすぎる……!
頬が妙に熱くなるのを自覚し、思わず顔を背けて頬を掻いた。
何だこれ、ニヤける……!
「そ、それでね?」
「は、はいっ……!」
「その……最後、雪和くん……」
最後? ……ぁ……ぁ、あぁ……! あ、あれ……!? 俺と触れ合いたいと思ってくれてるかとかそんなやつ!? ま、待て! 冷静に考えると俺凄い気持ち悪いやつだぞ!
「あ、あれはその……!」
まずいぞ、どう取り繕う……! いやもうどう取り繕うも何もないだろっ、言っちゃったんだから……!
あああ数分前の俺を殴りたい! 殴ってでも止めたい!
咲良の口がゆっくりと開かれる。ああああもうダメだあぁぁぁぁ……!
「えっと……最後、なんて言ったのかな?」
「……へ?」
…………。
「覚えてないの?」
「うん。雪和くんに好きっていっぱい言ってもらって……嬉しくてショートしちゃったみたいで……」
…………。
た、助かったああああああああぁぁぁ!
いや助かったって言っていいのか分からないけど、とにかく助かった! よかったぁあんな自意識過剰みたいなセリフ聞かれないで……!
「い、いや何でもないよ」
「そう?」
「ああ。じゃ、俺もう行くな。勉強の邪魔して悪かった」
「ううん。私も、もう少ししたら起きるね」
咲良の肩を押さえて再度横にさせると、手を振って見送ってくれる咲良に手を振り返し、部屋を出た。
ふぅ……咲良、俺が沢山好きって言っただけで倒れちゃったな……やっぱり、咲良は純情な子だ。スキンシップが増えただけでエッチなことがしたいってわけじゃないんだろう、きっと。
「……うし、頑張れ俺。気長だぞっ」
◆◆◆
「い、いや何でもないよ」
「そう?」
「ああ。じゃ、俺もう行くな。勉強の邪魔して悪かった」
「ううん。私も、もう少ししたら起きるね」
そうして出ていく雪和くんを、手を振って見送る。
完全に扉が閉まり、足音が遠ざかると……。
(はあああああああああああああああああああああああああああああんっ! やっちゃったぁ! やっちゃったよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!)
思い切り顔をペンちゃんに埋めました。
何ですか!? 何ですか私! 確かに恥ずかしくて頭がぼーっとしちゃってましたけど、「最後、なんて言ったのかな?」って! 何ですか難聴主人公ですか!?
バッチリ聞こえてたじゃないですか私のバカーーーーーーーー!!!!
これって、これって! 雪和くんは凄く私と触れ合いたいんだよね!? そうだよね!? と言うかそう言ってたし!
ああダメ! にやける! にやにやしちゃう! 布団被る!
「ぬへ……ぬへへへっ……! 触れ合い……ふひっ……」
あ、でも……私、恥ずかし過ぎて聞こえない振りしたんだった。
…………。
あああ数分前の私を殴りたい! 殴ってでも止めたい! そして素直になれってこんこんと説教したい!
うにゃああああああああああああああああああああああああっ(ジタバタジタバタ)!
「ということがあったんだよ紅葉えも〜ん!」
『お前らバカップルが想像を絶するバカップルだってのが分かった。寝させろバカ』
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