第32話 荒ぶる彼女
◆◆◆
夏休みに入って3日目。皆とげーせんで楽しく遊んだ私、時田咲良は。
「うううううぅぅぅぅ──ッッッ!!!!」
自室で今日取ったペンギンのペンちゃんを抱き締めて悶え苦しんでおりました。
うにゃーーーーーーー!!!!
理由はただ1つ! 真実はいつも1つ!
大胆にも! 私は! 彼の! 雪和くんの腕に抱きついてしまいましたーーー!!!!
思いの外逞しかった! 硬かった! 上腕筋も前腕筋も凄かった! あとなんかちょっとエッチだった!
自慢じゃないが、私はおっぱいが大きい。あ、いや、やっぱり自慢させて。とてもおっぱいが大きい。
そんなおっぱいを彼の腕に当てて意識させようとしたのに……むしろ、彼の硬さを私のおっぱいが意識してしまった。やばかった、とてもやばかった。
「はうぅ……しゅごかったなぁ……」
思い出しただけでも体が火照り、脳が溶ける。
あんなに近く雪和くんを感じたのは初めてだった。
脳を直接刺激するような男の人の匂い。思考がとろけ、感覚が麻痺する。とんでもない麻薬だ。いや、私専用媚薬だ。脳汁どばどばとろとろ。
「はふっ……」
……落ち着け、落ち着くのよ咲良。
クールになりなさい。隣の部屋には雪和くんがいる。こんな呻き声を出せば聞かれるかもしれない。
そう、隣にいる雪和くんに。
…………。
ゆきかじゅきゅんがとなりにいる!(思考放棄)
まずいっ!
ペンちゃん人形に顔を埋め。
「ンホオオオオォォォォッッッ!」
思いっきり声を出した。はー、危なかった。
あーやばいっ。やばさが天元突破し始めた。どうしよう、心拍数が高すぎる。熱が上がる。痣でちゃう。今なら何か呼吸が使えちゃうまである。
ペンちゃんギューッ! 脚バタバタ! からの海老反り! にきゃーーーー!
「〜〜〜〜ッッッ! ぷは……ちょっと落ち着いた……」
思えば、こんなに雪和くんが好きなのに、今までスキンシップらしいスキンシップをしてこなかった。出来たスキンシップと言えば、勉強途中に休憩で手を触るくらい。
理由は1つ。彼に嫌われるのが怖いからだ。
彼がグイグイ来る女の子が好きなのか、はたまたお淑やかにそばにいる女の子が好きなのか……私の中で判断出来ていない。
そんな状態でもし判断を誤ったらと思うと……途端に、体が動かなくなる。
でも今日は動けた。
動けてしまった。
今日が今年最高気温だと言うこともあり、思考が定まらなかった。
水着を買ったとき、雪和くんがカッコイイことを言ってくれてときめいた。
初めてのげーせんでぬいぐるみをとったとき、凄く嬉しかった。
ぷりくらで色々と恥ずかしいポーズをし、あわあわとしていた。
その時に来た、『好きなポーズで♪』という音声。
あの言葉が私をつき動かした。
あの言葉が私に勇気をくれた。
そして思わず、咄嗟に……私は好きな人に抱きついた。
「……喜んでくれたかな……?」
今になって怖くなる。今、彼がどう思っているのか。
それでも……あの時の彼の顔を見て、1つ確信したことがある。
多分雪和くんも、私と触れ合いたいんだ。
喜んでいるような。
嬉しそうな。
恥ずかしそうな。
困ったような。
でも、愛してくれているような。
そんな、雪和くんの驚いたような顔。
「……エモい……尊い……尊死しゅる……」
ああお義父さん、そして今は亡き雪和くんのお母さん。この世界に、彼のような男の子を産み落としてくださりありがとうございます。
「……明日から、もっと触れ合いに行っても大丈夫……かな……?」
大丈夫だよね。
大丈夫だといいな。
絶対大丈夫だよ。
私はふと雪和くんの部屋の方の壁を見る。
この壁の向こうに、私の世界一愛している彼がいる。
今何してるのかな。もう寝てるかな。
彼が今どんなことをしているのか。それを妄想するだけでも色々と捗る。
あぁ、私って……本当に彼のことが好きだなぁ……。
……ぁ……何だか切なくなってきた……。
ペンちゃんを太ももに挟み、ちょっとだけモゾモゾ。
「雪和くん……愛してるよ」
◆◆◆
その頃の雪和。
昼の感触を思い出し、色々と捗っていた。
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