第26話 彼氏彼女の心情

 というわけで、『夏休みやりたいことリスト』(咲良命名)に書いたものは以下の通りだ。


 ・夏祭り(花火大会!)(むふふイベ?←やめい!)

 ・海?プール?(スイカ割り?←じゃあ海!)

 ・旅行(候補 沖縄、長崎、愛知、茨城)

 ・一日中映画見る!

 ・部屋の掃除

 ・勉強会!

 ・皆でゲーム大会(エロゲ消化←だからやめい!)


 などなど、とにかく出るわ出るわ。主に咲良と羽瀬さんと峰さんだけど。


「皆、これでいいかな?」

「オケオケ!」

「楽しみー!」

「僕も大丈夫だよ。ユキカズは?」

「……ああ、いいと思う」


 日付はあとでおいおい決めるとして。

 中学の頃は、別に部活も何もやってこなかったから、夏休みでもただのんべんだらりとした生活を送っていた。

 そんな俺がどうだ。今や美男美女に囲まれて夏休みの予定なんか立ててる。当時の俺が見たら目を丸くすること必須。驚きすぎて顎が外れるレベル。


 これからのことを楽しそうに話している皆を見て、再度『夏休みやりたいことリスト』に目を落とす。

 夏休みの期間は45日。長いようで短い、高校の夏休み。

 あと1週間で始まる。


 今後の人生で、絶対に忘れることはない──夏休みが、始まる。


   ◆◆◆


「じゃ、時田っち、数寄屋っち。また明日ー」

「咲良ちんはこのまま女子会強制参加なので! また明日ねー!」


 と、雪和くんと数寄屋くんと別れて直ぐ。

 私達3人は再び喫茶店に入り、恒例の女子会を行っていた。


 お題は勿論、『私と雪和くんの仲を進展しよう』!


「というわけで咲良っち! どこまで行った!?」

「どこまでヤった!?」

「うぐっ……じ、実は……あれ以来、まだ手しか握ってません……!」

「「んなっ……!?」」


 そう。雪和くんと心を通わせたあの日の公開告白。そのお陰で私への告白は無くなり、何もない日々を送っていた。

 そして家で2人っきりのときは、もう照れることなく手は握れる。握れます。にぎにぎ、雪和くんの手は大きい。


 だ、け、ど!!!!


 それ止まりなんだよぉ〜おろろーん!


「くっ! まさか時田ちん、ここまで奥手だったとは……!」

「咲良っち、家ではどんな風に過ごしてるん?」

「え? えっと……帰ったら一緒に宿題やって、終わったら次の日の予習……その後お風呂に入って、夕飯の用意して、一緒にテレビ見て……」

「それだけ? 誘惑は? エッチしよう的な空気にならないの? うら若き付き合ってる男女が同じ部屋にいてなーーーんにも起きないの? 本当に?」


 ぐ、ぐいぐいくるね、夏海ちゃん……!

 でも……そんなこと言われても、雪和くんと一緒にいるだけで安心するというか、あー幸せ〜って感じになっちゃうんだよね……。


「はぁ……テストなら簡単なのになぁ……」

「いや、恋愛はテストじゃないから」


 むぅ、分かってるよぅ。


「……付き合ってる義兄お兄ちゃんといつエッチしていいか教えない日本の教育って、破綻してるよね……」

「いや、規模がでかい規模がでかい」

「まさかの教育にケチをつけるなんて……咲良ちんって、時田ちんのことになると一周まわっておバカになるよね」

「いやぁ、それほどでもぉ」

「「褒めてない褒めてない」」


 なんだぁ。

 でも……はぁ、どうしたらこれ以上先に進めるんだろう。一緒の家に住んでるのに、モヤモヤする。ついでにムラムラする。女子高生でも性欲はあるのです、好きな人限定で。


「よし……ならこれから、時田っち誘惑作戦を考えようじゃないか」

「さーいえっさー!」

「は、はいっ!」


 夏休みまではあと1週間。

 1週間後の夏休み……必ず一線を越えてみせる!


   ◆◆◆


「ぶえっくしょい!」

「あれ、風邪?」

「いや……近い将来、身の危険を感じる」

「……本当、ユキカズってたまーにエスパー的なこと言うよね」


 うっせーわい。感じるもんは感じるんだからしょうがないでしょ。

 女子ーズと別れてから、俺と数寄屋も別の喫茶店で男子会をしていた。


 議題は勿論、『咲良との仲を進展しよう』!


「それで、ユキカズはサクラさんとどこまで行ったの? あれから3週間も経つんだし、セックスはまだにしてもハグくらいは……」

「ギクッ」

「……まさかユキカズ……?」

「ち、違う。違うんだ。タイミングがズレてるというか、測れてないというか」


 だからそんな珍獣を見るような目でみないでくれ。俺の精神衛生上よろしくない。


「全く……あんなに堂々とした公開告白をしたのに、まーだサクラさんとその先に行ってないなんて……サクラさんきっと待ってるよ」

「そんな馬鹿な。咲良はそんなエッチな子じゃない」


 全く、失礼なやつだ。清廉潔白な咲良が、思春期男子高校生(俺)みたいに普段からエッチなこと考えてるはずないだろ。


「だとしても、君が何かしら行動しないと、彼女不安になるよ」

「うぐっ……」


 そ、それはまあ……思わないこともない。

 俺だって咲良とイチャイチャしたいし、出来ることならハグとかキスとか……それ以上やりたい気持ちもある。


「はぁ……付き合ってる義妹いもうとのおっぱいをいつ揉んでいいのか教えない日本の教育って、どうかしてるよな……」

「どうかしてるのは君の発言だと思うけど」

「それくらい俺も悩んでるってこと」


 くそぅ、イケメンはこういうことに悩まなくてよさげで羨ましい限りだぜ。


「まあまあ。夏休みになれば毎日朝から晩まで一緒なんだし、それまでに色々と考えていこうよ。僕も手伝うからさ」

「……助かる。俺だけだと暴走するかもしれないし」


 夏休みまであと1週間。

 なんとか夏休みで、咲良との仲を進展させたい……!

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