202011 ジャパロボ 60

渋谷かな

第1話 ジャパロボ60

「おまえは誰だ!?」

 皇帝城の皇帝の間にたどり着いた祐奈を待ち構えている者がいた。

「私の名前は昭和天皇。大正天皇の息子だ。」

「なんですって!?」

 現れたのは昭和天皇。祐奈の父を改造人間にしたAIロボット大正天皇の息子だった。

「父と言っても私を製造しただけの型番の違いでしかない。製造が早いか遅いかのな。」

「なに!? こいつは!? 人間とも違う!? そうか!? 完全にロボットよりなんだわ!?」

 祐奈は昭和天皇にロボットの様な心がない冷たさを感じる。

「私は森田皇帝が・・・・・・いや、大正天皇が死んだことを知っている。」

「では、今度の皇帝にはあなたがなるというのか!?」

「いいえ、私はなりません。新皇帝はあなたです。森田祐奈。」

 意外な答えが返ってきた。

「いいの?」

「はい。森田皇帝の娘であるあなたが皇帝の座を相続してこそ、大日本帝国の安定が保たれるのです。」

 昭和天皇は世襲制を重んじている。

「なら、あなたは私の言うことを聞いてくれるのよね?」

「いいえ。どうして私がくだらない人間の言うことを聞かなければいけないのですか?」

「人間がくだらない!?」

 昭和天皇は人間のことを下に見ていた。

「そうでしょ? 純粋だった大正天皇が人間のくだらない権力争い、他人の足の引っ張り合い、妬み、憎しみ、暴力ばかり見せられて、人間を滅ぼそうと計画したように、私も人間の醜い姿ばかりを教えられ、見てきたのだから。」

 昭和天皇の心が歪んだのも人間の性であった。

「だが全ての人間が腐っている訳じゃない!? 中には他人に危害を加えない者もたくさんいる!」

「欲の塊の人間が欲を捨てた時は、それは、もう人間ではないのかもしれない。」

「そんな大げさな!?」

 祐奈は昭和天皇の話は分からなくはないが認めたくはなかった。

「仮におまえがAIロボットを全て倒して人間の世界を取り戻しても、人は再び自己の欲のために争いを始めるぞ。新たな憎しみ、新たな悲しみを生み出し、終わらない戦いが続くのだ。」

「戦う。私は戦う。何度でも!」

 祐奈の硬い意志は揺らぐことはなかった。

「なに!?」

「確かに人間は愚かな生き物だ。他人を貶すことでしか生きがいを見いだせない人もたくさんいる。きっと新たな復讐の火種を生み出すことは認める。」

「ほお、人間の分際で潔いな。」

「人間の弱さを受け入れた上で、私は新たな戦いが始まる度に何度でも戦おう。戦って、戦って、人の憎しみや悲しみが無くなるまで、私は戦い続ける!」

 祐奈は世界中の人間の業を背負う覚悟である。

「交渉決裂だな。」

 大正天皇は自身の愛機ジャパロボ・大正エンペラーを呼び出し乗り込む。

「私が願うのは感情のない世界だ。人間の心が死に、憎しみも悲しみも愛も生まれない世界。世界の全てはAIロボットに管理されてこそ平和になるのだ! 実現不可能なおまえの想いは、きっと自己中心的な人間たちに踏みつぶされるだろう!」

 昭和天皇もAIロボットならではの世界の平和を願っていた。

「想いは同じはずなのに!? どうして私たちは戦わなければいけないんだ!?」

「それは私がロボットで、おまえが人間だからだ!」

 両者の立場の違いが新しい戦いを生み出した。

「祐奈! 私がおまえの体を奪って、父親同様、AIロボットの操り人形にしてやる!」

「そうはさせるか! 私と同じ様な悲しみは誰にも味合わせない!」

 人間とAIロボットの最終決戦が始まる。

 つづく。

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