第22話 魔王VS突貫勇者

 魔王と騎士王が討論をしていると、新たなパーティーが街に足を踏み入れる。


「ようやく着いたな。お前ら、徹底気に調べる……って、魔王!」


 キョウを指さしたのは腰に剣をさした赤髪の男プレイヤー。


「げっ、「突貫勇者」」


「「勇者の集い」も行動が早いね。しかし先行部隊が「突貫勇者」とはね」


「んだよ、騎士王。何か文句あるのか!」


 魔王と騎士王、SWO内でもトッププレイヤーの二人にも強気な彼は、「突貫勇者」。プレイヤー名はエン。

 エンは「勇者の集い」という「魔王軍」「聖騎士団ホーリーナイツ」と並び立つSWO最強ギルドの一つだ。

「魔王軍」は個で最強、「聖騎士団」は集で最強、それらに対する「勇者の集い」は二つのギルドはその中間。


 勇者の集いの特徴は、所属するプレイヤーが上位レベルなこと。

 人数、能力ともに上位のいわゆるトップギルド。だが最大の特徴は別にある。

 それは、ギルドメンバーが大なり小なり「魔王」に対して敵対心を持っていること。


 魔王軍は良くも悪くも注目を集めている。だからこそ敵対する者や手合わせを望む者が多くおり、魔王軍はそのことごとくを倒してきた。


 勇者の集いという名前の由来は、魔王を討伐するための勇者の集まり。

 魔王に雪辱を果たすために集まった勇者たち。それこそが勇者の集いだ。


 そんな勇者の集いの中でも、特に魔王に対して対抗心が大きい四人の勇者がいる。

「突貫勇者」と呼ばれるエンはそのうちの一人。

 エンはこれまで何度もキョウに挑んでは敗北を重ねてきた。しかも彼の戦い方は真正面からの力押し、魔王に対して無謀な戦いをする姿から「突貫勇者」と呼ばれている。


「よりもよって突貫勇者とはな。……めんどくせぇ」


「何だと!?魔王、俺と戦え!今日こそ俺が勝つ!」


「そういうところが、めんどくさいんだよ」


「うるせぇ。勝負しやがれ!」


 エンは決闘申請を送る。


「ったくめんどいな。一回勝負だぞ」


 街中では戦うことは出来ない。唯一の方法は決闘。お互いのHPが無くなるまで戦うシステム。決闘による死は本来起こるデスペナが発生しない。


 キョウは申請を了承し、上空にカウントダウンが表示される。


「いつの間にか面白いことになってる」


「突貫勇者。相変わらず先輩に突っかかって来てますね。ジェイさん何で止めなかったんですか?」


「仕方ないだろ。キョウだって乗り気だったんだから。それに面白そうだ」


「大丈夫ですよ。我が魔王は最強ですから」


「二人とも相変わらずですね。キラさまどういたしますか?」


「見ていくしかないだろ。どうせすぐ終わるけどね」


 一同が見守る中、カウントダウンが0になり決闘が始まる。


「こい『朱雀すざく』」


 エンは剣を抜き、上空に向ける。すると剣が燃え出し、巨大な炎の鳥が現れる。


「出たな『朱雀』」


 エンの持つ剣は超難易度クエストの報酬、『聖剣朱雀せいけんすざく』。

 聖剣はSWO内でも数少ないモンスターを出現させることが出来る武器だ。


「纏え、『朱雀』」


 エンは朱雀を体に宿す。本来であれば出したまま、朱雀と共に攻撃する方が良いだろうが、朱雀を出したままにすると聖剣の攻撃力が落ちる。故に朱雀を体に宿し自身の能力を上げることは最善手ではある。

 だが突貫勇者はそんなことを考えていない、純粋に自分の手で魔王を倒したいだけだ。


「行くぞ魔王!」


 エンは聖剣を突き出し、キョウに向かって走る。

 対するキョウは『血濡れの黒剣』を構えたままエンを睨む。


「【生命変換攻撃ブラッドブースト】」


 HPを消費して攻撃力を上昇させる。


「おらぁぁぁ!!!!」


「相変わらずバカだな。【カウンター】」


 真っすぐ突っ込んでくるエンを、キョウは【カウンター】のスキルで反撃する。

【カウンター】は相手の攻撃に合わせて発動させるスキル。成功すれば攻撃力の二倍の攻撃を叩き込むことが出来る。

 しかしその判定はかなりシビアで成功する確率はかなり低い。だが真正面から突っ込んでくる相手にならかなりの確率で成功させることが出来る。

 つまり、


「ぐほっ!?」


 突貫勇者は、【生命変換攻撃】、【カウンター】により攻撃力が超上昇したキョウの一撃をくらい、一瞬でHPが0になった。

 そしてWINの表示が出される。


「終わりだな。満足しただろ、しばらく突っかかってくるなよ」


「ちっ。分かったよ。けど、次は負けねぇからな!行くぞ!」


 エンはパーティーメンバーを連れて街の中の探索に向かった。


「おつかれさん」


「お疲れ様です我が魔王」


「お疲れ様です先輩」


「キョウ、お疲れ」


「あぁ。まぁ疲れては無いけどな。あいつあれだったし」


 キョウの言葉に一同は「確かに」と頷く。


「戦い足りなければ僕が戦おうか?」


「冗談だろ。お前と戦うのはしんどい」


「ひどい言いようだね」


「事実だからな」


「まぁ魔王にそこまで言ってもらえるなら、逆に光栄だね。じゃあ僕らはこの辺りで一度戻るよ。メイ」


「はい。それではみなさま、失礼いたします」


 キラとメイは「聖騎士団」のギルドハウスがある街に転移した。


「じゃあ俺たちはここの探索をするか」


「「おー!」」


 魔王軍は、探索に向かった。

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現実では目つきの悪い高校生、ゲームでは最強の魔王 影束ライト @rait0

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