第19話 火山のボス戦
SWOでのアップデートが行われ、ゲーム内に新たなエリアが追加された。
SWOは横に広がるタイプのオープンワールドゲーム。アップデートによりこれまでで先に進むことのできなかった新たな場所に行けるようになった。
ギルドハウスで準備を整え、魔王軍七名は新たなエリアに向かう。
魔王軍は新しいエリアから一番近い街に転移した。
「新しいエリア。楽しみですね」
「ん。何か情報はあるの?」
ソラは魔王軍の頭脳であるジェイを見る。
ジェイはいくつもの攻略サイトを開くが、首を横に振る。
「無いですね。まぁSWOは基本的にそういう情報を出しませんから。あくまで自分たちの足で調べろってことでしょ」
「新しいエリアは火山のエリアの先でしたよね」
火山エリアは北方向にある、炎属性の魔物が出現するエリア。魔王軍は火山エリアの前にある街に転移したので、新しいエリアに行くには火山エリアを抜けなければならない。
「火山エリアってキョウさんが部活対抗戦で使っていた『獄炎の大剣』を入手した場所ですよね」
「そうだったな。その時に使ったマップもあるし、火山はすぐに抜けられるだろ」
「そうだね。……ただ私は戦えないからちゃんと守ってよ?」
マリは回復ポーションをすぐ使えるようにインベントリから取り出し、ポーチに詰める。
非戦闘職であるマリがわざわざついてきているのは、新しいエリアは自分で転移先まで行かなければ転移先指定が出来ないから。
「分かってるよ。そろそろ火山に入るな」
魔王軍は火山エリアに入った。
_________
「【一閃】」
「【アクアカッター】」
マリを守りながら、魔王軍は順調に火山の中を進む。
「順調だね~。危なげ無し、問題無し、さすがみんな」
「マリはのんきですね。……なんだか場所の雰囲気が変わりましたね」
ミサの言葉に反応し、ジェイがマップを開く。
「ミサさんは鋭いな。マップ的にそろそろ……」
ジェイが言い終わる前に、魔王軍の足が止まる。
一同の目の前には、大きな扉が立っている。
「マップに無い扉。新しいエリアに繋がる扉だな」
「ってことはボス戦だな。……準備は良いか?」
「よし、行くぞ!」
キョウは扉を開き、中に進む。
______
扉の中は巨大な洞窟、そしてその中心に巨大なモンスターが存在する。
「グルゥゥゥ!!!」
中に入った瞬間、HPバーが三本出現し炎を纏った熊が叫びを上げる。
「……フレアブラックベアー。見た感じ問題はなさそうだし、誰がやる?」
ジェイの言葉に、ミサとマリ以外が手を上げる。
「だよな。じゃあいつも通り、……最初はグー!」
「「「じゃんけん、ポン!」」」
キョウ、ケン、ヒメはパー。ジェイとソラがチョキを出す。
「よしっ!」
「勝利」
ジェイは拳を握り、ソラはブイサインを出す。
「負けたか、しかたない。三本なら二人で分けていいぞ」
「そうですね。しかし五人でやって一回で決まるなんて」
「まぁ我らは新しいエリアで戦うことにしましょう」
三人は一歩下がり、ジェイとソラは一歩前に出る。
「ソラさんどうしますか?」
「ジェイからでいい。半分切ったら交代」
「了解です。じゃあ先に行かせてもらいます!」
ジェイはフレアブラックベアーに向かって走り出す。フレアブラックベアーは待っていましたと向かってくるジェイに向けて炎を吐き出す。
「随分と元気だな」
ジェイは炎を避けながら近づき、『死神の
「グルル!!」
「薙ぎ払い、炎のブレス、突撃。パターンは分かったし、後はヌルゲーだな」
フレアブラックベアーは様々な攻撃を繰り出すが、ジェイは全ての攻撃を見極め、避ける。そしてHPゲージを一本削り切る。
「よし、一本潰した!」
「グッ、ゥゥ!!」
ゲージを削ったことでフレアブラックベアーがうなり出し、ジェイは距離を取る。
「パターン変わってくるよな」
「グゥゥ!!」
フレアブラックベアーはジェイに向かって突撃する。
ジェイは突撃をギリギリで横に避ける。そしてすれ違いざまに鎌を振るが、フレアブラックベアーは鎌が振るわれた瞬間に跳躍する。
「っ、嘘だろ!?」
「グォォ!」
跳んだフレアブラックベアーは下に向かって広範囲の炎を吹く。上空から襲ってくる広範囲の炎はさすがに避けられない。普通なら。
「グォ!?」
「まさか使わされるとは思わなかったな」
驚くフレアブラックベアーの目に映っているのは、先ほど居た場所とは全く違う場所に立っているジェイ。
そんな手品の種はジェイの持つスキル【転移】。その距離はかなり短いが、範囲攻撃の範囲外に一瞬で移動できる。
「連発出来ないから使いたくなかったが、仕方ない。ちょっと警戒心を上げないとな」
ジェイは先ほどよりも警戒心を上げ、ヒット&アウェイを心がけて確実にHPを削っていく。
「【ソウルスティール】」
「グウゥッ!!」
フレアブラックベアーのHPが二本目のゲージの半分を切り、ソラの元まで下がる。
「すいませんちょっと削り過ぎました」
「問題ない。ここからはわたしのターン」
ジェイとソラはすれ違いざまにハイタッチをし、交代する。
「グルルル!!!」
「うるさい。【
ソラは白く綺麗な天使の翼を背中に生やして飛ぶ。
「グッ!?グルル!!」
フレアブラックベアーはソラに驚きつつも、炎を吐き出す。
だが空中を自由に飛ぶソラにそう簡単には当たらない。
「【スターアロー】」
【スターアロー】は攻撃力、速度共に最高クラスの弓攻撃スキル。
上空から放たれた【スターアロー】は容赦なくフレアブラックベアーを射抜く。
「まだまだ【スターアロー】」
連続して放たれた【スターアロー】により、程なくして二本目のゲージを削り切る。
「グゥゥゥ!!!」
残り一本となったHPゲージにより、フレアブラックベアーが纏っている炎が燃え上がる。
「ちょっと変わった?でも関係ない【スターアロー】」
【スターアロー】がフレアブラックベアーを射抜く。だがフレアブラックベアーに当たり判定が出ず、矢はすり抜ける。
「どういうこと?もう一回【スターアロー】」
再びフレアブラックベアーに向かって攻撃をするが、先ほどと同じようにすり抜ける。
「無敵モード?でもなんか違う気がする……【ホークアイ】」
【ホークアイ】相手の状態を確認できるスキル。
ソラの目が青く光、フレアブラックベアーを見る。
「なるほど。特殊なスキル持ってるんだ」
ソラの目に映ったのはスキル【陽炎】。その力は自分の位置を錯覚させる。
「種が分かれば倒せる。無駄撃ちさせれてちょっとイラっとしてるし、一気に決める。【スターアロー・マルチショット】」
放たれた複数の【スターアロー】がフレアブラックベアーを射抜く。【ホークアイ】には相手の弱点を見抜く力がある。【陽炎】を使うフレアブラックベアーにとっては最悪。
「グゥゥ……!!」
フレアブラックベアーのHPは残り一割。ここに来て新たな動きが起こる。纏う炎がさらに燃え上がり、フレアブラックベアーが二体、三体と増えていく。
「これも【陽炎】の力?最後にこれは面倒」
ソラの【ホークアイ】の効果が切れる。フレアブラックベアーの集団は一斉にソラに向かって炎を吐き出す。
「【セイクリッドバリア】」
だがその炎はソラを囲うように展開された障壁により防がれる。
「お姉ちゃん」
「さすがに危なかったですから、ちょっと手を出させてもらいましたよ」
ソラを囲った障壁はミサが張った物。ソラのターンとはいえ、妹の心配を案じた姉心から手が出たのだろう。
「ありがとお姉ちゃん。終わらせる【スターアロー・レイン】」
空中から広範囲に渡り、【スターアロー】の雨が降り、フレアブラックベアーが作り出した分身が消える。
「グゥゥ!!」
「本物見つけた。【スターアロー】」
「ウ、ゥゥゥ……」
最後の攻撃で、フレアブラックベアーのHPを削り切った。
「これでおしまい」
Vサインを向けるソラの元へ歩き、魔王軍たちは新たなエリアに向かった。
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