第10話 ゲーム部との交渉

 良たちは職員室をあとにし、早速ゲーム部の部室に向かっていた。


「なぁ、快。華黒先生は内容はゲーム部と話をして決めろと言っていたよな?」


「そうだな。そう言ってたな」


「つまりお前が話すんだよな。快?」


「まぁ、そうなるだろうな」


「え?何でですか?」


 良と快が、茶番のような話をしていると姫が話に割り込む。


「普通なら部長の先輩が話し合いますよね?」


「残念だが、こいつは普通じゃない」


 快がキッパリと言い、他のみんなも「たしかに」と言った風に、頷く。


「まぁ、行けば理由は分かるだろ。それより良」


「なんだよ快」


「ちょ〜っとだけ。ゲーム部と交渉してもいいか?」


 快は良にだけ聞こえるような声で話す。


「交渉ね。分かった。お前が必要と感じるなら好きなだけやってくれ」


「よし。じゃあ交渉おはなし、開始だな」




 ―――――――――――


「失礼します」


 良たちはゲーム部部室へと入る。


「あ、いらっしゃ…いっ!?」


 メガネをかけた部員が返答をするが、良の顔を見た瞬間ビビった声をだす。


「えっと、俺はVRゲーム部部長の鏡良。で、試合内容の話し合いに来たんだけど。部長居る?」


「は、はい!ちょっとまってください!」


 メガネの部員は駆け足で部室の奥へ向かっていく。


「先輩、先輩」


 姫は良の肩を叩く。


「姫どうした?」


 良は、姫の口元に耳を寄せる。


「いや、先輩めっちゃビビられてません?」


「……それは俺の目つきのせいだろ。と言うかお前、入学初日に俺を使って人避けしただろ」


「あ、そうでしたね。……なるほど。相手が先輩にビビって話し合いにならないから、快先輩に話し合いをさせるんですね」


 良と姫がそんなことを話していると、奥からメガネの部員ともう一人メガネの生徒が近づいてくる。


「ど、どうも。はじめまして。僕が三年のゲーム部部長です」


 部長は良を見て、ビビりながらも挨拶をする。


「どうも~。VRゲーム部福部長の九条快です。こっちが部長の鏡良。今回は試合内容を話し合いにきました」


「あ、なるほど。それでなんのゲームにしようか?」


「それなんですけど。SWOという、VRゲームをご存知ですか?」


 快が聞くと、メガネ部長は嬉々として話し始める。


「ああ、もちろん知っているよ。ゲーム部でギルドを作っているしね。実は前にギルドランキング戦で三桁に入ったこともあるんだ」


 何故こんなにも自慢げに話しているかというと、ギルドランキング戦、その名とおりギルド単位で戦い合うSWOの人気コンテンツの一つだ。


 そしてこのゲームのギルドの数は一万を超えてている。故にメガネ部長はこんなにも自慢げに話しているのである。


「おおー。それは凄いですね。それでなんですけど、そのSWOで試合をやりたいんですけど」


「ああ。別にいいよ。けど……」


 メガネ部長は良たちを見回した後に、後ろでゲームをしている複数の部員を見る。


「人数はどうするんだい?」 


 この人数差でやりつもりかと快に尋ねる。


「それについてなんですが、人数は好きにしてください。俺たちは五人でやるので」


 快がそう言うとメガネ部長は驚いた顔をする。


「……その代わりと言っては何ですが。俺たちが、勝ったら、ゲーム部に余っているVRゲーム機、譲ってもらえませんか?」


「え!?いや、流石にそれは……」


 メガネ部長が渋ると、快はニヤリと笑い


「もちろん、他にも特典はつけます。そうですね……そちらが勝ったら、こちらに居る美少女部員二名がそちらの部活に入ります」


 その言葉に、その場にいる快と良以外の全員が驚く。


「本当か?」


「ええ、もちろん。そちらが勝ったらですが」


 快とメガネ部長が話している間にも奥の方からは、


「女子が俺たちの部活に!?」 


「あの二人めっちゃかわいいじゃん」


「……コスプレとかしてくれるかな?」


 など、ゲーム部部員の話し声が聞こえる。


「わ、分かった。その条件でやろう」


 メガネ部長が言うと、周りの部員たちが騒ぎ出す。


「それじゃあ、本番で。条件守ってくださいね〜」


 そうして交渉は終わり、良たちは部室の外へと出る。




 ――――――――――


「先輩!快先輩のあれ本気なんですか!?」


 姫が叫ぶ。何故、快で無く良に聞くのかと言うと、快がスマホをいじっているからだ。


「ああ、VRゲーム機貰えるって言う話な。ありがたいよな」


「そうじゃなくて!いや、それもですけど。負けたら私たちがあの気持ち悪い人たちの部活に入らないといけないということです」


 姫は良に迫る。


「要するに勝てばいいんだろ?俺たちが負けるわけ無い」


「いや、そうですけど!そうなんですけど!」


 姫は地団駄をふむ。


「キョウは私たちが賞品に、あの気持ち悪い人たちの物になってもいいの?」


 空はジーと良を見つめる。


「いや、だから勝てば良いわけだし―」


「ジーーー」


 空は良を見つめる。


「はぁ~。お前らは俺のものだ。他の奴にやるわけが無いだろ」 


「えっ!?」


「キョウ、それって……」


 姫と空は赤面し、ケンは何故か「流石は我が魔王」と尊敬の眼差しを送り、快は愉快に笑う。


「ク、クク。さ、流石だな、良。そんな言葉を恥ずかしげもなく」


「……そう言われると、俺かなり痛いこと言ったな。で、快はさっきから何してるんだ?」


 快はスマホの操作を一度止める。


「いや、あの部長の言ってたことは本当なのかと、思ってな」


「ギルドランキング戦で3桁に入ったと言う話ですね。それが本当であれば、中々の実力者ですが」


「それなんだけどな、嘘では無いんだが、それ結構前のことなんだよ」


 快はスマホを見せる。


「本当だな、しかも963位。微妙な数値だな」


「快。よく過去のランキングなんて調べた」


 空は、スマホを見ながら呟く。


「これでも魔王軍の情報担当ですからね。それで、相手がこのくらいの実力ならできると思うんだが……」


 快は、ある作戦?を話す。


「快、お前本気か?」


 良は、まじでやるのかと快を見る。


「なるほど。いいと思います!」


「ん、面白そう」


「良い案ですね。我が魔王の強さを示すことができる」


 姫、空、剣人からは賛同の声が上がる。


「ほら、みんな言ってるし。お前の実力ならできるだろ?魔王キョウ」


 良は、全員から目を向けられる。

 そんな良は火が付いたのかニヤリと笑う。


「ったく、仕方ねぇな。分かったよ。それじゃあさっさと帰ってSWOだ。対人戦の練習付き合えよ」


 こうして、打倒ゲーム部を目指した特訓が行われる事になった。


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