第7話 魔王軍の放課後

 放課後


 良と快は、校門前にて姫と剣人を待っていた。


「二人共遅いな。まさか道に迷ったりはしてないよな?」


 良はそう言いながら、さっき自動販売機で買った水を開ける。


「良は心配性だな大丈夫だろ。あ、それ一口くれ」


「ん?別にいい……お、あれじゃないか?」


 良と快の目の先には一組の男女がいる。

 あちらも気づいたらしく、手を振り走ってくる。

 全速力で。


「あ、せんぱーい。って、剣人くん、速!」


 剣人は姫を置き去りにし、姫は必死で追いかける。


「お待たせしてしまい申し訳ありません。我が魔王」


 剣人はいち早く、良の元へと駆け寄った。


「いいよ、気にするな。剣人、リアルでは久しぶりだな」


「はいお久しぶりです。…申し訳ありません我が魔王。本来であれば朝もご挨拶に向かいたかったのですが」 


「別にいいよ、これからは毎日のように会うんだしな」


「寛大なお言葉、感謝します」


 剣人は丁寧にお辞儀をする。


「ぜぇ、ぜぇ。……せーんぱ、ゴボッ。い」


「おお、姫。取り敢えず息整えろ。水飲むか?」


「ぜぇ、ぜぇ。い、いただきます」


 姫は良から水を受け取り一気に飲み干す。


「はあ、はーあ。先輩水ありがとうございました。……ちなみに、これ先輩の飲みかけだったりしましたか?」


「いや、安心しろ。まだ飲んでなかった」


「ちっ、……そうですか。じゃあこれ要りませんね」


 そう言うと姫はゴミ箱にペットボトルを捨てようと手を離す。


「でも、良。飲んではなくても口は付けてたよな」


 その言葉を聞き、姫が手を離したペットボトルを再び掴む。


「おい、快」


「先輩、快さんの言ったこと本当ですか?」


「いや、それは……」


「本当、で・す・か・?」


 姫の目には本当のことを言わないと、どうなるか分かるよな?的な思いが込められている。


「はぁ〜。……本当だ」


「そうですか。…じゃあこれは回収ですね」


「え?」 


「なんでもありません。早くお昼食べに行きましょう」


 良たちは、昼飯のため歩きだした。










 ______________________


「なかなかいい雰囲気の、お店ですね」


 良たちは、有名なファミレスではなく、隠れた名店のような喫茶店に来ていた。


「だろ?俺たちがこの辺りを探しまくってようやく見つけた店だからな」


 良たちは一通りの物を注文する。


「さて良。どうする?」

 

「どうすればいいと思う?快」


 二人のやり取りを見て、姫と剣人は不思議そうに二人を見る。


「あの、何の話ですか先輩?」


「何のって。今日新理事長が言ってた原則部活動に打ち込め。ってやつだよ」


 姫と剣人はなるほど、といった様子。


「姫と剣人はどうするつもりだ?剣人はやっぱり剣道部か?」


「いえ、剣道は自分の家の道場でやればいいので。我が魔王の意思に従います」


「そうか。姫は?」


「私はやりたい事無いですし。……剣人君と同じく先輩と同じ部活にしようと思います」


「そっか。……快は?」 


「俺は、面白おかしいければいいからな。つまり良と同じ部活だな」


「お前らな……」


「まあそれは一旦置いといて、これ見てみろよ」


 快がタブレットを見せる。


「これは?」


「学校の電子掲示板。今は新理事長のせいでかなり荒れてるな」 



 学校掲示板


 ・サッカー部部員募集


 ・新しくボードゲーム部作ろう思います。部員募集


 ・ゲーム部員部員募集


 ・新設立、将棋崩し部部員募集


 ・お前らの魂を解き放て、異次元サッカー部部員募集



「まぁ、こんな感じだ」


「なんというか、凄いな」


 掲示板はどこを見ても既存の部員募集と、新部部活設立のための部員募集。


「あの、結構新しく部活作ろうて言ってますけど、そんな簡単に作れるんですか、部活?」


 姫の問に快が答える。


「そうだな。部員5名以上と顧問の教師1名で申請が通れば、めでたく部活設立だ」


「なら、私たちで作りませんか?部活」


 姫の言葉に快はなるほど、と反応する。


「確かに、他の部活に入るより自分達で作ったほうが楽しくできるしな」


「簡単に言うが快、宛はあるのか?」


 良が聞くと快は、問題ないといった様子。


「部員5名ならここにいる4人と空さんで5人だろ」


「そういえば、空は?」


 良が聞くと姫がスマホを取り出す。


「昨日まで春休みだったから寝坊した、らしいです」


「なるほど、空らしいな。まぁ空には後で連絡するとして、顧問は?」


「心配するな宛はある」


 良は快が言うならば問題ないだろうと判断する。

 

「じゃあ、作るか新部活」


「おう!」


「はい♪」


「我が魔王の御心のままに」


 こうして魔王軍は新部活設立に動き出した。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る