5.袖口

 日常的に触れていた違和感は、いずれかの原因解明のタイミングとともに不快感へと化ける。僕は最近、その不快感を実感したのだ。

 ここで男性諸君、学校や職場でワイシャツを着る機会が多々あると思うのだが、いずれもインナーはどんなモノにしているだろうか。Tシャツの方もいるだろうし、タンクトップの方もいるだろう。第一、ワイシャツ自体が本来下着の役割をしているらしく、諸外国ではインナーを着ないとのこと。

 僕は、その着なくても良かったような文化を生み出した日本の習慣に悩まされた。

 僕は普段インナーとしてコットン100%のTシャツを着ているのだが、これの袖の部分が着用して少し動くだけで肩の方へと丸まっていくのだ。つまりは、一日学校で生活していると、肩の辺りに『ミスタードーナツ』のポンデリング、もしくはフレンチクルーラーが完成するのである。

 当初、この自動巻き取り現象は、僕の二の腕に違和感をもたらしていた。「なぜこんなんになってるんだ?」という疑問からくる違和感だ。そんな違和感を背負った日々を二週間くらい過ごした。

 そして、気づくのである。Tシャツのサイズが適切でない、というためだけに引き起こされている事が判明したのだ。別に物理的に解明したとかではなく、感覚的に日常の所作で突っ張られたシャツの方々の力が最終的に袖口に集約してしまっていたのだ。これ以来、自動巻き取り現象は不快感の他の何者でもないものとなった。

 この問題を解決しようと、ネットで調べてみたのだが、どうにも検索結果はヒットしない。もっとも、

「Tシャツ 肩 丸まる なぜ」

 なんて検索する人間は、風呂場でゴーヤチャンプルーを食べる人間ほどに稀であるだろうが。

 そんなこんなで、タンクトップというまだ見ぬ世界に踏み入れる勇気がなく、どうしたもんかなぁ、と、袖を丸まらせて困惑しているのである。

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