【極感謝】★1700記念SS ⑩

 その以降、リクと海斗はメッセージアプリでやり取りするようになった。

(海斗がアプリをようやくインストールしたのだ)


 そして・・・


 ついに、その日がやって来た。



 

 秋の冷たい雨が朝から降り続く日であった。

 海斗はバイトを終え、スーパーで買い物してからマンションに向かっている。

 傘をさしていても足元は濡れてしまうほど雨脚が強かった。


 すでに夕方遅く、あたりは暗くなっている。


 すると、マンションの前の電柱の下に誰かが立っているのが見えた。

 時季外れの白いワンピース姿の若い女性。

 傘もささずにずぶ濡れ。暗がりで、うつむいている上に顔に長い髪が張り付いていて表情をうかがい知ることはできない。


 だが、海斗にはそれが誰かがすぐわかった。

 そこに立っているのは海斗の幼馴染。山中奏良であった。


 海斗は小さくため息をつく。

 ポケットからスマホを取り出して短いメッセージを送る。傘をさしている上にエコバッグを持っているのでからスマホの操作がしにくい。

 それでも、慣れない手つきでメッセージを送ったのちに海斗はマンションに向かって歩いて行った。


 そして、マンション・・・奏良のところまで5メートルくらいまで近づくと、奏良も海斗に気が付いたようだ。

 顔を上げる。

 だが、まだ表情は見ることができない。


「・・・海斗・・・」


 海斗は立ち止まった。


「奏良。こんなところで何をしてるの?」


 奏良が海斗に近づこうとしていしたが、その動きが止まった。

 海斗の声、そして口調は冷たいものであった。

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