「たとえば、すごく高い年収の人がいたして。でもその仕事がすごくブラックだとしたら勝ち組と言えるかな？」

「う・・・うーん。それは違うと思う」

「逆にすごくホワイトな職場でやりがいのある仕事をしている人で、年収はそれほどではない場合は勝ち組かな？」

「それは・・・勝ち組なのか・・・な？なんか違うかな」

「世の中は、勝ちとか負けとかそんな単純な基準ではないということだよ」

「じゃあ、何を基準にすればいいんだよ」

「簡単だよ」

　柔らかな笑みを浮かべる海斗。

「自分が幸せかどうかでいいんじゃないかな」

「自分が・・・」

「あとは自分がどうしたいかが重要だと思うよ」

「・・・」

「ねえ。リクはどうしたいと思っているの？」

　長い沈黙の後。リクが口から発したのは。

「俺は…」

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