【極感謝】★1700記念SS ⑥
「おれは・・・てっきり、奏良がフリーになったら海斗はよりを戻すんじゃないかと思っていたんだ・・・少なくとも、悩むものだと思っていた。違うのか?」
「僕はね、今まで奏良のことを恋愛対象としてみたことは一度もないよ」
冷静に言葉を返す海斗。表情は口元に微笑みさえ浮かんでいる。
嘘を言っているようにも強がっているようにも見えない。
「どうしてだ?あんなにいつも一緒にいたから少なくとも意識していると思っていたが・・・」
話すと長くなるけどね」
海斗が奏良と初めて会ったのは、幼稚園の頃。
父親と一緒に引っ越したアパートの隣の一戸建てに住んでいたのが奏良であった。
海斗は家庭の事情から人見知りが激しい少年であった。
一方の奏良は、一人っ子で甘やかされて育ったせいでわがままで気分屋の少女。
同じ幼稚園に通う、同い年の少年少女。自然と一緒に行動する時間が多くなった。
一緒に行動する・・・というよりは、奏良が一方的に海斗を連れまわしたり奏良の遊びに突き合わせる日々。
海斗は、奏良以外の誰とも交流がなかった。
奏良に嫌われたら、誰からも相手にされなくなる。
その不安から、海斗は奏良のわがままに付き合い奏良のいうことは何でも聞くようになっていった。
それは、小学校でも一緒。
奏良はさらにわがままになっていき、海斗以外のクラスメートは奏良を避けるようになっていく。
そんな状況にも、奏良は自分わ悪くない、悪いのはクラスメートの方・・・ということを海斗に言う。海斗は、肯定するしかなかった。
そんなんことを繰り返し、奏良は承認欲求の塊のようになっていった。
中学生・高校生になっても同じ。
いや、むしろエスカレートしていく。
「今となってはね、奏良は間違っているって言えばよかったと思うよ。でも、その頃の僕にはその考えにも至らなかった。内心では、奏良の振る舞いは良くないと思いながらもね」
「それは、奏良のことが好きだったからじゃないのか?」
「そうではなかったんだ、だから奏良とリクが付き合うって聞いてホッとした思いもあったんだ」
リクは愕然とした。
リクは、海斗から奏良を奪ったつもりであった。そのことでマウントを取ったつもりでいたのだ。
「でも、リクと付き合うようになっても僕のことを一緒に連れまわしたことは想定外だったけどね」
リクはうつむいたまま海斗の言葉を聞いた。
海斗の声には嘘を言っているようには聞こえない。
リクは、しばらく無言だったが・・・ようやく言葉を発した。
「俺は・・・・俺はお前に・・・勝ちたかったんだ」
「勝つ?」
「そうだ、だから奏良と付き合ったんだ・・・」
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