【極感謝】★1700記念SS ⑤

「リクはウーロン茶でいい?」

「あ・・・うん」


 海斗がリクを連れてきたのは“いい天気“という店。

 カウンターが主体の小さな店だが、案内されたのは店の奥のテーブル。

 水曜の、夜9時過ぎのため客はカウンターに3人程度いるくらいですいていた。


 まだ19歳のリクにとって、飲み屋に来る経験はまだあまりない。

 居心地悪そうに店内を観察する。


「注文いいですか?」


 慣れた感じで海斗は店員を呼ぶ。


「は~い。海斗クン、20歳前だけの来店はほんとに困るんだけどねえ~」

「ごめんなさい、お酒は飲まないから・・・・20になったらその分のみに来るから」

「はいはい、注文は~?」

「ウーロン茶二つとフィッシュアンドチップスとピザをお願いします」

「ありがとうございま~す」


 明らかに、この店の常連らしい海斗。自分と比べて大人びて見える。

 

 やがて注文したウーロン茶と料理が運ばれてきた。


「個々の料理美味しいよ。食べてみて」


 落ち着いた声で話す海斗。

 ポテトを口に運んで見せる。


 料理をおなかに入れることで、少し落ち着いてきた。


「それで、奏良と何があったの?」

「どうもこうもない。奏良は俺が気に食わないって。海斗と一緒の方が楽しかったって言ってどっかに行った」


 それを聞いた海斗。少し困った顔をして眉を顰める。


「あぁ・・・奏良がそう言ったんだ。・・・やっぱり・・・」


 それを聞いてリクはまた怒りがこみあげていた。


「やっぱりって、知っていたのか!?奏良がお前のことを好きだったって」

「それはちょっと違うんだ」

「違うって、なにが!」


 海斗は手のひらを見せ、落ち着かせるような手ぶりをする。


「ほら、他のお客さんもいるからもう少し声を抑えて」

「くっ・・・」


 ほかの客が、こちらを見てくるので口を閉じたが怒りを抑えることができない。

 小さな声・・だが怒りを隠さないで話す。


「違うって何が・・・」

「奏良はね、僕に求めているのは恋愛とかではないよ」

「じゃあ・・」

「奏良が求めているのは、何でも言うことを聞く相手が欲しいだけだよ」


 苦笑を顔に浮かべながら話す海斗。


「奏良があんなになってしまったのは、僕にも責任があると思う。それは謝るよ」

「・・・どういうことだ?」


 海斗はウーロン茶を一口飲んでから話す。


「奏良が高校の時に、クラスでも浮いていたことに気が付いていた?」

「え・・・?」


 高校の時、リクと海斗と奏良でいつも一緒にいた。

 だからリクは奏良がクラスで浮いていたなんて全く気が付いていなかった。


「奏良はね、自分のことにしか興味がないよ。僕は子供の時から奏良のわがままに振り回されっぱなしだったんだよ」


 何を言っているか理解できずに海斗を見るリク。


「まぁ、奏良は僕のことを下僕としか思っていないと思うよ」


 笑みを浮かべながら話す海斗。だが、口から出るのは衝撃的な内容であった。

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